わかりきったことだけを、





赤い顔を隠すように両腕に顔を埋めた志葉に手を伸ばし、やわらかい髪の毛にそっと触れる。やさしく撫でると、志葉は伏せたまま「、ばぁか」と小さく呟いた。




「いまのままの志葉でいいよ、そのままでいてよ」



ばあか、なのはどっちかな志葉くん。



「志葉は志葉じゃん。それのなにがだめ?」

「…だめとかじゃないけど、」

「私が好きなのは志葉じゃんか。私の気持ち足りてない?だったら死ぬ気で精進する」

「…、」

「ね。志葉、好きだよ」




好きだよ、ほんとうに。
私の恋は、相手が志葉じゃないと意味がない。



「…浅岡、」



むくり。身体を起こした志葉が、隣に座る私の身体と向き合うように椅子を動かした。



「志葉、復活した?」

「…まだ」

「えー」

「……まだ、浅岡からチューしてもらってない」





がたり、志葉が席をたった───後、すぐのことだった。





「…復活した。ありがとゆらのちゃん」




< 182 / 220 >

この作品をシェア

pagetop