わかりきったことだけを、
赤い顔を隠すように両腕に顔を埋めた志葉に手を伸ばし、やわらかい髪の毛にそっと触れる。やさしく撫でると、志葉は伏せたまま「、ばぁか」と小さく呟いた。
「いまのままの志葉でいいよ、そのままでいてよ」
ばあか、なのはどっちかな志葉くん。
「志葉は志葉じゃん。それのなにがだめ?」
「…だめとかじゃないけど、」
「私が好きなのは志葉じゃんか。私の気持ち足りてない?だったら死ぬ気で精進する」
「…、」
「ね。志葉、好きだよ」
好きだよ、ほんとうに。
私の恋は、相手が志葉じゃないと意味がない。
「…浅岡、」
むくり。身体を起こした志葉が、隣に座る私の身体と向き合うように椅子を動かした。
「志葉、復活した?」
「…まだ」
「えー」
「……まだ、浅岡からチューしてもらってない」
がたり、志葉が席をたった───後、すぐのことだった。
「…復活した。ありがとゆらのちゃん」