わかりきったことだけを、




心の声がバレた。

「顔に書いてる」ってよく言われるけれど、志葉の読み取り能力がありすぎて 私もう話さなくても会話が成り立つんじゃないかとすら思えてくる。



志葉が頬からパッと手を離す。
ようやく口元が自由になった。



「前の匂いも好きだった」

「…ふーん」

「けど、今のシャンプーの香り、俺のと似てる」




ギク。


思わず肩を揺らすと 志葉が小さく笑った。
…もしかしなくても、全部バレバレかもしれない。



「似てる」

「…気のせいだよ」

「そうかねぇ」

「……うるさい志葉」

「なんも言ってないじゃん」

「顔がうるさい!寝ろ!」

「出たぁ ツンデレ」




こっちの方が、志葉からいつも香る匂いに近いと思っただけ。


同じやつじゃない。

どのメーカーか知らなかったから、記憶にある志葉の香りを辿って、志葉が好きそうな香りのシャンプーにしただけ。



そう、別に、それだけだよ。


< 187 / 220 >

この作品をシェア

pagetop