わかりきったことだけを、



「むかつく、志葉のくせに」

「はは。でも来たじゃん」

「それは、」

「うん、可愛いねホント」



広げた腕の中に飛び込む。背中に回った大きな手に トントン…と優しく叩かれた。

志葉にされるそれが私は好きだ。安心する。

好きなんだ、本当に、​───志葉のことしか考えたくないくらいには。




1度強くぎゅっと抱きしめた後、身体を離して頬に軽くキスをする。


これは志葉の癖。いつもそうだから分かる。
そしてその後、優しく私の唇を塞ぐ。


段々と深くなるそれは、あっという間に私の思考をジャックする。



「…ん…っ」

「…あさおか」

「、は、」

「…かわい、ホント…しんどい」



志葉がそう言ったら終わり。
離れていく唇が名残惜しくて志葉のワイシャツを掴むけど、「もうだめ」と言われるだけだ。


かわいい、しんどい。

最近、志葉は このふたつをセットで使うことが増えた。その先にいけないのは、志葉がまだ迷ってるからなんだと思う。




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