わかりきったことだけを、
番外編
(1).「はあ、もうどーしよ?」
─side 姫宮─
「ちがうって浅岡。そこはこっちの公式使う」
「ええ、嫌だ」
「嫌とかじゃねーだろ。これじゃないと解けねーの。わかった?」
「分かりたくありません」
「はぁ?」
「やっぱりさ、足し引き掛け割り算が出来れば世の中渡っていけると思うんだよね」
「黙ってやれ」
「あい…すびばぜん……」
とある日曜日。
志葉くんの部屋に集まったゆらのちゃんとあたしと洸太は、テスト前恒例の勉強会を開いていた。
1年生の時 無事留年を免れたゆらのちゃんは、2年生になっても成績はギリギリでやっているらしい。
志葉くんが居なかったら、きっとゆらのちゃんの高校生活は補習まみれだ。
「次これな。さっきと同じ解き方」
「うー…お腹すいたよぉ、アイス食べたいよぉ」
「気のせいだろ」
「そんなことある?」
「ある。浅岡はバカだから」
「流石に空腹が思い込みだった過去はないよ」
「いいからやれ」
「スパルタぁ」
志葉くんはテスト前になると厳しくなるからなぁ…。
まあ、ゆらのちゃんが出来なさすぎてるのも原因だと思うけど。
ゆらのちゃん今年も留年騒動になりそうだなー…と、目の前でやり取りをする2人を眺めながらそんなことを思う。