わかりきったことだけを、
私たちの距離は変わらない。
志葉と私はクラスメイトで、勉強を教えてもらうだけの関係。最近志葉は、補習にならないようにと、毎週出される数学の課題を教えてくれるようになった。
「1人じゃ解けないなら俺が教えてやるから」
そう言ったのは、'成績優秀者'である志葉智咲。
「本当は浅岡といる時間が欲しいだけ」
そう付け加えたのは、'私に恋をしている'志葉智咲。
「ねぇ志葉」
「ん」
「私と付き合う?」
彼は私が好き。
私は彼との出会いを運命(仮)と呼んでいる。
もっと知りたいと思う相手に変化を求めるのはいけないことかな。
まだ好きじゃないくせに、触れるための理由をこじつけるのはずるいかな。
───ねえ、志葉はどう思う?