わかりきったことだけを、








志葉くんの家から歩いて5分の所にあるコンビニに向かっていると、



「弥生ー」



ふと洸太に名前を呼ばれた。

「なに?」と返せば、「別に」と言った洸太に手を繋がれた。



恋人繋ぎじゃない方のやつ。

洸太はいつもそれだ。恋人繋ぎだと指の骨が当たって痛いって前に言っていた。力込めすぎなんだよって言ったら、「ちゃんと繋いどかないと離れてくだろ弥生は」って言われたんだっけ。


離れるわけないのに。むしろ洸太の方が、繋いでおかないと離れて行っちゃいそうで怖いんだ。


あたしの為だったとは言え、洸太は誰にでもへらへら笑ってるの全然似合わなかった。

あたしにちゃんと笑ってくれていればそれでいいの。




あたしだけ。

ーーあたしだけが、洸太の全部知っていたい。



だから​───…




「…離さないでね、」

「あー?」

「ぜったい あたしのこと、…」

「バカなの?」


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