わかりきったことだけを、
(2).「セーヨク、ある?」
「時に志葉くん。ひとつ質問があるんだけど」
「なに?」
「志葉ってセーヨク、ある?」
「浅岡?気を確かに?」
浅岡の悪いところは、時々突拍子もなく“そういう話”を持ち掛けてくるところ。
「気は確かだよ」
「俺にはそうは思えない」
「ねー志葉。なにビビってるの」
「は?ビビってねーよふざけんな」
「怒らないで。怖くないよ」
にやにやしないでほしい。
この手の話になると浅岡が何故か上手だから嫌だ。全然、浅岡だって俺しか経験してないくせに。
なんで俺だけこんなに焦って動揺しているんだろう。
「志葉、私はいつでも準備満タンだよ」
「しれっとそういうこというのやめてくれる?」
「えー、だって」
「だってじゃねーの」
ずっとにやにやしている浅岡にムカついて頬を伸ばせば、「ぬぁ」とわけわからない声をあげる。
よく伸びるほっぺ。
くそー、かわいい。ムカつく。