わかりきったことだけを、





浅岡と“そういうこと”するのは初めてじゃない。


だけど、一回経験したからと言って迂闊に何度も手を出せるわけでもない。俺だって色々な理性とたたかって生きてるのに、こんなふうにド直球でくる浅岡が、俺は好きだけど嫌いだ。



セーヨク、あるに決まってる。



俺だって人並みに健全な男だ。


本当は毎日帰るときまだ帰らないでって思うし、ずっと腕の中に収めておきたいし、いつもちょっとわけわかんないことを言って照れ隠しするツンデレ具合も全部好きだしそそる、って思ってることなんて知らないんだ、浅岡は。




テスト前、俺の部屋、バカな彼女。

さて、この状況をどうしよう。



「志葉ぁ」

「、近い」

「近くしてる」

「っバカ、やめろ」

「ねー、このまま帰っちゃうよ?いいの?」



やだ、まだ帰んないで。いやいや違う。かえって勉強しないと補習行きだよ浅岡。

けど。あと少し。ちょっとだけ、…いや、テスト前だしだめだって…。



「志葉」

「…、なに?」

「今日はチューもしない?」




くいッと制服を引っ張られる。俺の顔を覗き込むようにして「しない?」ともう一度問いかけられる。

ああ、このタイミングでその上目遣いはだめだって。



「…もー、浅岡のせいにする」

「ふ、うん。いいよ」

「テスト、しらねーよ?」

「志葉がいるから大丈夫」

「…あ、そ」




俺のセーヨク、掻き立てたのは浅岡。

だからこれからすることはぜんぶ、浅岡のせいにする。
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