わかりきったことだけを、
(3).「二択はえらべない」
「志葉と花畑は?」
「え」
「え」
俺と花畑の声が重なった。隣にいる花畑と目を合わせて、2回瞬きをして、それからどちらともなく目を逸らした。
「別にどっちとかないよな」
「花畑に同じく」
「ずるー」
「そーだそーだ!もっとかませよ」
「ずるくねーよ何も。かますこともねーし。な、志葉」
「うん。掃除しよ」
「真面目かよ」
「学生の義務ですう〜」
クラスメイトの佐藤と高野が口をとがらせてぶーぶー言っている。「なんで答えないの」とか「もったいぶんなよ」とか。
別にもったいぶっているわけじゃない。
この手の話が少しだけ苦手なだけだ。
そして多分、それは花畑もしかりである。
「胸がケツかの二択じゃあん!」
佐藤の声が廊下中に響いた。
今は掃除の時間。
俺と花畑、佐藤、高野の4人は体育館前の廊下を掃除する当番になっていて、この会話はあくまでもその最中でのことだった。