わかりきったことだけを、





佐藤の声が届く範囲にいた生徒の数名がチラチラとこちらを見ている。




「バッカお前声でけーよ」

「花畑たちが答えないからァ……」

「ちげーわ、お前のせいだろ」




花畑は 姫宮と付き合ってから随分と本性が出るようになったな、と思う。



前はあんなに誰に対してもヘラヘラしてたのに、最近は花畑のことをいじるのは姫宮と浅岡くらいだ。

これを少し前に本人に伝えたら「元々俺のこといじってんのは浅岡ちゃんだけだわ」と言われた。言われてみればそうだったような気もする。





「二択の答え教えてくれるだけでいいからまじでお願い。モテる男の趣味が知りたいの俺は」



佐藤が何を言っているかは最初からずっと分からないままだけど、この廊下に来てからというもの、佐藤と高野はずっとそんな話ばかり持ちかけてくるのだ。



何組の誰ちゃんが可愛い、誰と誰がじつはできてるらしい、誰さんの体型が好み、とかとか。

俺は浅岡が居るし浅岡以外に興味が無いし浅岡のことしか考えていたくないので、まったくその話に乗り気にはなれなかったわけなんだけど。



「ね!これだけ、ほんとにこれだけ。浅岡ちゃんの乳とケツだったらどっちが好き?」



健全な男子高校生がみんなこの手の会話を楽しむなら、俺は不健全でいたいとすら思う。


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