わかりきったことだけを、

「…俺の好意をネタにすんの辞めてってば」

「違う、本気だよ」

「……、浅岡が何考えてるか全然わかんないよ俺」



私の声に反応した志葉がむくりと身体を起こした。まだほんのり赤い顔。熱を持った彼の瞳と目が合った。




「志葉くん、愛は形も大切だって知ってる？」

「知らない。どうせ浅岡の持論だろ」

「うん。じゃあさ、恋人同士はいくらでも触れ合っていいって知ってる？」

「知ってる」

「ねえ志葉」

「…なに？」



私の考えてることなんて分からなくて良い。
ここに好奇心以外の感情が混ざっていたなんて、私はまだ気付きたくない。



「志葉に触れる理由が欲しいと思ってる私って変だよねぇ」



もう少しだけ、勝手に貼られた'顔だけが無駄に良い変人'ってレッテルに隠れていてもいいよね、多分。



「…すげー変、知ってたけど」

「言われ慣れたよ」

「時に浅岡さん」

「なんだい志葉くん」

「……質疑応答の時間を頂けますか」

「仕方ないなぁ。いいよ」




志葉が困った顔をしている。
頑張って私の言葉を理解しようとしている。


'私に恋をしている'志葉智咲の行動は、読めそうで読めないから面白い。