わかりきったことだけを、
(4).「なけなしの理性がウワワワ」
「なぁ志葉、浅岡ちゃんと喧嘩したってマジ?」
昼休み。学食のカツ丼を頬張ったタイミングで花畑が言った。
ごふっ、と思わずむせてしまい、口から米がとび出そうになる。
「………してない」
「いやいやいや。弥生から聞いたんだけど、浅岡ちゃん相当怒ってるらしいよ」
「喧嘩じゃない」
「喧嘩じゃなかったらなんなの」
「…………将来をわかつ為の試練」
「喧嘩な」
意地でも喧嘩だと認めない俺に、花畑は淡々と現実を突きつけてくる。やめろ、これは喧嘩じゃない。将来をわかつ為の試練だ……ってことにしてるんだから。
「何が原因?」
「……わかんないから困ってる」
「はあぁ?怒ってる原因わかんないのは彼氏としてやばくない?」
……うるさいな、分かってるよそんなことは。
てか喧嘩じゃないって。そういえば、「はいはい将来をわかつ為の試練な」と半笑いで言われる。
おい花畑、おまえのラーメンの中なカツ丼の衣だけぶち込むぞ?
「浅岡ちゃんと志葉って 言葉なくても通じあってるものかと思ってた」
「うるさいな……」
花畑は呑気にズズズ……とラーメンを啜っている。
俺、今日カツ丼を頼むのは間違えたかもしんない。喧嘩……じゃなかった、将来をわk(以下略)が訪れたことで、俺の頭の中は浅岡のことでいっぱいだ。