わかりきったことだけを、
3.「彼氏の特権ってやつ」
「志葉くんと浅岡さんが付き合ってるって本当?」
「すごいお似合いだよね。美男美女」
「でもなんか複雑じゃない?」
「わかる。ミステリアスな志葉くんと無駄美人の浅岡さんって」
「けど様になりすぎて何も言えないよね」
志葉と私の関係に名前が付いてから3日。
「この状況どう思う?」
「嫌いじゃない。敵が減るしむしろ有難い」
「私は無駄美人だからそもそも志葉以外に好意を向けられたことは無いよ」
「口にしないだけでお前のこと好きな物好きなんて軽くあと10人はいるよ。敵が多いんだよ俺には」
「ほほお、直球でいいね」
学年に限らず学校中で、'無駄美人の浅岡さん'と'ミステリアスな志葉くん'が付き合っているという話があちこちで飛び交っている。
とはいえ、私と志葉を取り巻く環境が騒がしいのは元からで、何ら支障があるわけでない。
志葉は別に周りの声を不快だとは思っていないらしい。
私も別に視線を向けられることには慣れている。
「今日も無駄に可愛いね、浅岡」
「志葉もかっこいいと思う、客観的に」
「浅岡的には?」
「まあ、悪くない」
「泣いた」
「お菓子あげようか」
「要らねーよ」
'私に恋をしている'志葉智咲は、今日も直球で面白い。