わかりきったことだけを、
放課後、2人きりの教室、夏。
夏の三要素は、気付いたら私と志葉の関係性を深めるための三要素と化していた。
モワモワと暑さが充満する教室は、窓を全開にしても風は全然入って来ない。太陽がうるさくて仕方なかった。
「そういえば浅岡、松川先生が『このままテストで赤点さえ取らなければ夏休みの補習は無くても良さそう』って言ってたよ」
「え、まじで」
「ん、まじで。俺に感謝して」
「ホントありがとう志葉」
去年の夏休みは地獄だった。
数学の課題を出さない上に試験で赤点をとった私は、風力の弱い扇風機に吹かれ、蝉に煽られながら、分かりもしない数式と2時間もにらめっこ。
しかもそれを3日間。
'補習に参加した'と言うことにそもそも意味があるらしく、おかげで留年は免れたけれど、それにしても過酷な3日間だった。
あれが今年は無いとなるとそれはもうハッピーサマーバケーションなわけで、毎週放課後を共にしてくれた志葉には感謝しかない。
絶対赤点なんか取らない。
志葉がいるのは凄く心強かった。