わかりきったことだけを、
◇
「ねえ志葉、知ってる?」
「知らねーよ。内容を先に言えって」
「今はまだ6月なんだよ。今更だけど、真夏デビュー早すぎたかもしんない」
「真夏デビューって」
「ポニーテールは真夏の特権なの」
「ふうん。ま、なんでもいんじゃない?可愛いし」
「言いますなぁ志葉少年」
「顔面だけはホント、ムカつくくらい可愛いよ浅岡は」
今年の夏は暑すぎる。
一般的に6月からが夏の部類に入るとは言え、6月中旬でこの暑さは酷い。毎日30℃前後を行き来する気温にはうんざりだった。
青い空、眩しい太陽、光る汗。
梅雨をすっ飛ばして真夏になった、そんな感じ。
試験があるのは6月の後半。
呑気にそんな会話をしている間にも、着実に試験までの時間は削られているのだ。
「しーばー」
「なに?口じゃなくて手動かせってお前」
「もう数学やだ、つかれた」
「やだじゃない。解けてるから諦めんなよ」
解けてるのは志葉が教えてくれたからだ。
分かってるんだそれは。志葉のおかげで元々レベル1だった私の頭脳はレベル5くらいまで成長してるんだ。