わかりきったことだけを、






「ねえ志葉、知ってる?」

「知らねーよ。内容を先に言えって」

「今はまだ6月なんだよ。今更だけど、真夏デビュー早すぎたかもしんない」

「真夏デビューって」

「ポニーテールは真夏の特権なの」

「ふうん。ま、なんでもいんじゃない?可愛いし」

「言いますなぁ志葉少年」

「顔面だけはホント、ムカつくくらい可愛いよ浅岡は」




今年の夏は暑すぎる。

一般的に6月からが夏の部類に入るとは言え、6月中旬でこの暑さは酷い。毎日30℃前後を行き来する気温にはうんざりだった。

青い空、眩しい太陽、光る汗。

梅雨をすっ飛ばして真夏になった、そんな感じ。



試験があるのは6月の後半。

呑気にそんな会話をしている間にも、着実に試験までの時間は削られているのだ。




「しーばー」

「なに?口じゃなくて手動かせってお前」

「もう数学やだ、つかれた」

「やだじゃない。解けてるから諦めんなよ」



解けてるのは志葉が教えてくれたからだ。

分かってるんだそれは。志葉のおかげで元々レベル1だった私の頭脳はレベル5くらいまで成長してるんだ。



< 28 / 220 >

この作品をシェア

pagetop