わかりきったことだけを、
だけど、こんな蒸し暑い教室で ほとんど風が届かない扇風機の音を聞きながら数学を延々とやるのは疲れるわけで。
クーラーが欲しい。冷えた部屋でアイス食べたい。
こんなに頑張って勉強してるんだからそのくらいの贅沢したっていいと思うんだよ私は。
「暑くて死んじゃいそう」
「死なねーよ」
「クーラー効いてるとこでやりたい。ね、図書館とか行こうよ。私ホント暑くてもうだめになる」
「我儘言うな」
仮にも付き合ってるってのに。
彼女には優しくしないとダメじゃん。
彼女のワガママを笑いながら受け入れてくれるくらいじゃないとモテないよ志葉。モテてるけど。
「志葉ぁ……」
「うるせー、」
はぁ…とため息をついた志葉。
なんで志葉はそんなに清々しい顔でいられるんだ。暑さ耐久強すぎだよ絶対。
なんでそんな爽やかな顔してられるの、ホント。
「……あ、」
「うー…暑い」
「浅岡」
「…なんですか志葉くん」
思い出したように声を洩らした志葉が言った。
「そんなに学校嫌なら俺ん家でやる?」