わかりきったことだけを、



「ん、こっち」


入ったばかりのリビングを出た、短い廊下にあるもうひとつの扉。どうやらそこが志葉の部屋に繋がっているらしい。

がちゃり、志葉がドアを開けた。



「とりあえずクーラー入れるわ。適当にそこら辺に座って」

「あ、うん…」


部屋に入って早々、志葉は真ん中にあった小さなテーブルに置かれたリモコンを取り、ピ、とクーラーの電源を入れた。



「飲み物持ってくる」

「ありがと」

「浅岡」

「ん?」

「そんなじろじろ見ても、俺の部屋なんて面白いことなんもないよ」

「……見てませんが?」

「そ?」




鞄を適当に床に置いた志葉が フッと笑みを零して部屋を出ていく。
適当に座っててと言われたので、ベッドが背もたれになるようにしてテーブルを囲むようにそこに腰を下ろす。



志葉の部屋。

紺色のカーテンには小さな星柄が描かれている。星空をモチーフにしたものなのだろう。志葉が選んだのか、志葉のお母さんが選んだのか、どちらにせよセンスがあるなー…と思った。


白が基盤となった部屋には、学習机、ベッド、テレビ、テーブル…と、イメージ通りの家具が置かれてある。

シンプルな造り。カーテンの色は違ったけれど、一般的な男の子の部屋を感じるには充分だった。



志葉が生活してる部屋。
志葉の匂いがする部屋。





「浅岡ごめん、麦茶しか無かった」

「ん、いいよ」



​───そんな部屋に、付き合ってる男女が、2人きり。


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