わかりきったことだけを、
「涼しくなってきた?」
「うん。丁度いい」
「じゃー早速始めよ。浅岡には時間が無い」
「スパルタぁ」
「当たり前。数学は学校でやったから…英語先やるかぁ」
鞄から教科書やらノートやらを出しテーブルに広げ、すぐに勉強会がスタートした。
.
.
「うん、合ってる」
「頭良くなったかもしれない」
「はいじゃあ次これね。俺違うのやってるけど、分かんなかったらすぐ言って」
「せんせーわかりましたー」
「真面目にやれよ」
「やるってば」
四角いテーブルを囲み、私と斜めになるように志葉が座っている。学校で教えてもらう時よりずっと近い距離。
左利きの志葉の姿がよく見える。
斜めから見たって、志葉の顔はかっこいい。
スラスラと数式を解く彼を見て、(数学は安牌なんだしやらなくてもいいじゃん…)なんて思ったりもする。
「……なに、浅岡」
「う?」
「さっきからすげー視線を感じるんだけど」
ピタリ、解いていた手を止めた志葉が目を合わせた。
あれ、私、そんなに見てたっけ。
一瞬だけ見てたつもりだったけれど、まさか視線に気付かれるほどだったなんて恥ずかしい。
「ちゃんと解いてんの?」
「…解いてますけど?」
「のわりには俺がさっき見た時から1問しか進んでない」
「見てたの?セクハラじゃん」
「なんでだよ」