わかりきったことだけを、
私と志葉の距離、今何センチあるだろう。
視界の下の方で志葉のネクタイが揺れている。
距離を取ろうと両手で志葉の肩を押しても、彼はビクともしなかった。
私の手首を掴んだ志葉が、ふっ、と笑った。
「よえーよ」
「志葉、っ」
「そんな力じゃ俺に勝てない」
志葉に掴まれた腕が熱い。
ビクともしない肩に手を置いたままの私に、ムカつくほどに綺麗な顔面が近づいてくる。
「浅岡」
「っ、」
ああ、分かってしまった。
多分、私と志葉の距離は──…
「早く俺のこと好きになってよ」
───ゼロ、だ。