わかりきったことだけを、





私と志葉の距離、今何センチあるだろう。


視界の下の方で志葉のネクタイが揺れている。
距離を取ろうと両手で志葉の肩を押しても、彼はビクともしなかった。

私の手首を掴んだ志葉が、ふっ、と笑った。




「よえーよ」

「志葉、っ」

「そんな力じゃ俺に勝てない」




志葉に掴まれた腕が熱い。
ビクともしない肩に手を置いたままの私に、ムカつくほどに綺麗な顔面が近づいてくる。



「浅岡」

「っ、」




ああ、分かってしまった。

多分、私と志葉の距離は​──…





「​早く俺のこと好きになってよ」





​───ゼロ、だ。



< 37 / 220 >

この作品をシェア

pagetop