わかりきったことだけを、





夏、2人きり、​───…重なった影。



志葉と私は今、'付き合っている男女'だ。
触れ合った温度が、志葉と私の距離をお知らせしている。


目を瞑る暇も無かった。

そっと唇を離した志葉と目が合う。伏し目がちのとろけた目が、胸の高鳴りを加速させた。



「…浅岡、顔赤いよ」

「……志葉もだよ」

「…そりゃ好きな女とキスしたからだろ」

「っなんでそういうこと平気で…」

「浅岡」

「…なに、」

「​​───…もっかいする?」




答えを聞く前に再び塞がれた唇は、さっきより少しだけ深く重なり合った。志葉の体重がかけられ、背もたれにしているベッドにぐっと押し付けられた。


逃げ場なんてどこにもない。


手首を掴まれていたはずが、気付いたら互いに手を絡ませあっていた。触れる温度が熱い。

初めて知る志葉に混乱と動揺が隠せなかった。



「……っは、」



私の意識全部が、この瞬間だけは志葉のものになる。




「…あー……、しんど」



手を離し、距離をとり、ようやく解放してくれた志葉がそう声をこぼす。

乱れた呼吸を整えながら彼を小さく睨むと、「かわいくねー、」と一言で返されてしまった。


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