わかりきったことだけを、







「お前な、いい加減課題出せよ」

「白紙は0点なんだってば。いい加減分かってよ志葉」

「じゃあお前は俺の手を煩わせてることを分かれ」

「はいはい。いつもありがとう志葉くん」

「心が籠ってないからやり直し」




'数学成績優秀者'の志葉 智咲(しば ちさき)という男は、口が時々悪くなるもののなんだかんだ優しい一面を持つクラスメイトだった。


彼と話すようになったのは2年生になってから。
松川先生が私の補習への助っ人として彼を指名したのが始まりだった。



かれこれ志葉と放課後を共にするのは2年生の夏の時点で4回目。常連にも程がある。


だけど正直な話、先生の授業を受けるより、志葉から教わる方がよっぽど分かりやすいのだ。


多分、松川先生もそれを分かりつつあるのだと思う。



提出する補習課題はいつも完璧に解いている。だから毎回志葉を助っ人にしているんだ、きっと。



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