わかりきったことだけを、






「俺でもっといっぱいになればいいよ。俺のことで悩んで、泣いて、浅岡が俺なしじゃ生きてけないくらいぐちゃぐちゃに壊れればいいのに」



あれ、ほんと。全然予想が当たらなかった。




「…、セクハラ」

「彼氏の特権だろ。これからもっと過激になる」

「そ、…ういう発言は良くないよ志葉くん」

「早く浅岡が俺に落ちてくれればいいだけだよ」

「…、どうでしょーか」



「ムカつく」と口癖のようにまた呟いた志葉が、ぽん…と私の頭に手を置いて優しく撫でる。


言葉と行動が連なってないよ志葉。
彼氏の特権って、そんなのずるいじゃんか。




「ほら浅岡、時間ないよ。勉強しないと」

「主に志葉のせいなのでは」

「は?夏休み返上するか?」

「しない。頑張る」



身体中に残っていた志葉の熱が徐々に消えていく。
それがどうしてか少しだけ名残惜しかった。



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