わかりきったことだけを、






「夜更かしすんなよ。早く寝ないと覚えたこと忘れるよ」

「わかってるよー」

「じゃあまた明日」

「ん。ありがとね志葉」



あっという間に家の近くの公園についた。


近くの、と言っても私の家は公園の目の前にあって、送ってもらった時は公園で手を振って別れるのがいつものことだった。


帰り道、手を繋いだりはしない。

キスをするくせにその前のスキンシップをひとつもしたことがないなんておかしな話だと思うけど、最初から私と志葉の関係なんて可笑しさで溢れていて、今更そんなこと気に止めるようなことでも無かった。


私の家は住宅街にあるので、公園も当然のごとく家に囲まれている。


昼間は散歩をする人や遊び回る子供たちがちらほら見られるけれど、すっかり日も落ちたこの時間帯は、それぞれの家に明かりが灯る代わりに外を歩く人はほとんど居ない。



​──だから、私たち以外の誰かの存在には気付きやすいのだ。



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