わかりきったことだけを、





彼の手をわずらわせていることは自覚している。
いつもありがとう、と本気で心から思ってる。




「浅岡、時々心配になる」

「足し引きかけ割り算ができれば生きていけるんだよ志葉くん。微分も積分も社会的には必要ないとおもう、私は」

「数学嫌いな奴が口を揃えて言うやつね。いいからやれよ早く」

「優しくしてよ志葉ぁ」





志葉も志葉で、断ればいいものを毎度中途半端な善意で引き受けているからいけないんじゃないか。

嫌なら適当に理由をつけて断ればいいのに。



実は私と一緒にいる理由が欲しいから、とかいう裏事情が隠されてたら面白いな、なんて思うこともしばしばあった。


まあ、志葉に限ってそんなことは無いと思うけど。

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