わかりきったことだけを、




さっきの2人の姿を思い出しただけで、考えただけで涙がこぼれて止まらない。



志葉の温度も、言葉も、優しさも、全部この涙と一緒に流してしまいたかった。

教えてもらった数学の知識だけはどうか明日までは私の中に残っていて欲しいんだけど。これは真面目な本音。




「けど、ゆらのとお母さんの違うところ一つだけあるみたい」

「違うところ…?」

「私は噂も憶測も信じない。もしお父さんが仕事の人と浮気してるとかそんな噂をきいたとしても、お母さんはお父さんの口から聞いたことだけを信じるって決めてる。だってお父さんは、私が私の意思で選んだ人だもの」



お母さんはお父さんを信じている。だから時々しか会えなくたって、少し寂しいくらいで平気よ、と笑った。



「モヤモヤするなら確かめればいいだけよ。ゆらのの話を聞く限り、お母さん、'志葉くん'結構好きだなぁ」

「それはお母さんの好みの問題じゃんかぁ…」

「あら、直感って大事よ?」





.

< 54 / 220 >

この作品をシェア

pagetop