わかりきったことだけを、





「…、じゃあ、勝手に帰らないでね」

「ん。浅岡こそ」

「当たり前だよ」




そんな会話をして私は席に戻る。


「ら、ラブラブなんだね、浅岡さん」

後ろの席の女の子がそう言ってきたので「全然だよ、」と思ったままに返すと、彼女は少しだけ表情を曇らせた。

彼女は志葉のことが好きなんだと思う。

私たちが付き合っているという噂を知った上でわざわざ確認して、自分で自分を傷付けてるように見えた。



「……浅岡さんは美人でいいなぁ…、」

「…そーかな」

「志葉くんと…ホント……お似合い…」




顔だけ良くたって良いことないよ、と思ったけれど、彼女にとってはきっと言われたくない返しだと思ったので「うん」とだけ返して彼女との会話は終了した。



お似合い、かぁ。



昨日のポニーテールの女の子と志葉も'お似合い'だったけど。

きっと私じゃなくたって志葉に「可愛い」と言われる人はいるだろうし、志葉にキスして貰えるような人もいる。多分、気づかれてないだけだ。



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