わかりきったことだけを、





「​───は?良いに決まってんじゃん」




志葉の答えは簡単だった。




「浅岡、嫉妬してたの?」

「違うよ」

「じゃあヤキモチ?」

「っ違うって。てか嫉妬もヤキモチも同じじゃんか」

「俺から離れてくつもりだった?」

「彼女に悪いと思ったから…」

「浅岡、少し目腫れてるけど」

「……、別に普通」

「俺のことで悩んで泣いた?」

「…違うけど」

「ふ。浅岡さ、俺のことすげー好きなんじゃない?」




放課後、帰り道、2人きり。


志葉の言葉を「ちがうよ、」と否定しても、きっと何の説得力もないだろう。


「不謹慎かもだけど、すげー嬉しい」


昨日お母さんに相談していた内容と、考えていた嫌な予想全てを包み隠さず話し、「まだそばにいてよ」とそこまで正直に伝えた私に、志葉は少しだけ顔を赤らめてそう言った。




「浅岡が見てたなんて気づかなかった」

「いつも曲がり終えるまで見てるもん」

「なにそれ、まじで俺のこと好きじゃん」

「……、違いますが?」



完全にネタにされている。
志葉が優位だ。ムカつく。



ーー何でこんな会話をしているのかについては、数分前に遡って確かめてみよう。



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