わかりきったことだけを、






​───そのまさかが本当に起きるなんて、思いもしなかったわけで。




「…え、志葉、まじで?」

「大マジ」

「なんでこのタイミング?」

「今日こそ言うって決めてたから」

「…のわりに'多分'って、曖昧すぎじゃん」

「じゃあ変える。マジで俺、浅岡のこと好きになった」




解き終えたプリント2枚と筆記用具が広がる机。頬杖を付く私。
照れくさそうにする志葉。



最後を除いては、告白するシチュエーションの要素としては少し弱いような気がする。




「…数学できないとことか、理解力ないとことか、頭悪いところとか、全部含めて良いと思った」

「めちゃくちゃ貶してるじゃんか」

「なんつーの、俺には無いものを持ってるだろ浅岡って」

「頭の悪さね。はいはい、成績優秀者だもんね志葉は」

「……難しいんだよ言葉にするのは」




なんだ、この男。

言葉に出来ないとは言え、思いつく'私の好きなところ'が偏差値が低いところだなんて。




「志葉くん、君は女の子のロマンを知らないのかな」

「んなもん求められても困る」

「硬いねホント。そんなんなのになんでモテるんだろうね志葉って」



私も一応女なわけで、憧れる告白シチュエーションなんてものはいくらでもあるのだ。

人生で初めての告白がこんなよく分からない曖昧なものなんて、あまりにも夢が無さすぎる。




「知るか。…つか、好きなやつ以外にモテたところで何も嬉しくないだろ」



……まあ、その台詞だけは評価してやってもいいけど。

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