わかりきったことだけを、
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「あ、たこ焼き」
「おー」
「あ、まってりんご飴もいいなぁ」
「んー」
会場となる大きな公園に着くと、ずらりとたくさんの屋台が並んでいた。志葉の手を引き あれも食べたいこれも食べたいと食べ物ばかりを欲しがる私に、彼は「一気に食えねーだろ」と呆れたようにため息をつくのだった。
「これ付けときな」
屋台を巡っている途中、そう言って小学生くらいの子供に人気があるクマのキャラクターのお面を渡されたものの、
「せっかく'志葉のために'可愛くした髪の毛崩れちゃう」
と少しだけ得意の上目遣いをすれば、志葉はすぐに折れてくれた。
はい、また私の勝ち。
ずるくてごめんね、と心の中で謝る。
クマのお面は可愛いし志葉が周りの目を心配してくれているのも嬉しいけれど、私は志葉の前では' 最上級に可愛い浅岡ゆらの 'でいたいんだ。
「花火もうすぐかなー…」
右手に志葉が買ってくれたりんご飴、左手は志葉の温度に包まれたまま、カランカランと2人分の下駄の音を響かせながら歩く。
ぼんやりと呟くと、スマホで時間を確認した志葉が「あと2分」と教えてくれた。
「あ」
「ん?」
「あっちの方が良く見えるっぽい。場所取りとかしてる人いる」