わかりきったことだけを、






屋台が並ぶ一本道を抜けた先に見える開けた場所。遠目からでもそこに人が集まっていて、さらにはそれがカップルであることは何となく分かった。

どうやらそこが花火が綺麗に見えるスポットらしい。


……花火が綺麗、かぁ。


あんなに人がたくさんいるけど、花火は空に上がるものだから関係ないのもしれない。


手を繋いで、同じ景色を見て、「来年も一緒に見ようね」っていう展開。うん、アリ。花火大会でなら許されるリアルだ。


ーーけれど、欲張りな私は、2人きりが良いと思ってしまったわけである。




「志葉」

「ん」

「あっちに、」



ーードォー……ン……





「あ」

「…始まっちゃった」



眩い光が空一面に広がった。大きく開き、後にパラパラと散っていく花火。



ああ、夏だ。


< 81 / 220 >

この作品をシェア

pagetop