わかりきったことだけを、




頬杖を着いて教室内を見渡す。志葉の姿は直ぐに見つけた。



「ああ、志葉の隣なら姫宮(ひめみや)だよ」

「姫宮さんって…誰だっけ」

「ホント、もう少しクラスメイトに興味持った方いいよ浅岡さん」




志葉の隣に座って、なにか彼に話しかけている女の子。

大きな猫目に色付きの良い唇。髪の毛はふわふわのウェーブにしていて、地毛にしては少し色素が薄いなぁと思った。




「気を付けた方いいかもね」

「気をつける?」

「あいつは平気で人の男を取るよ。あ、もちろん俺はそんなことしないよ?フリーな女の子だけを狙ってるから。まあ、浅岡さんが志葉と別れたらその時は狙、」

「お花畑くん」

「ハハ、うん何?」

「志葉は、あの子に奪われちゃうと思う?」




姫宮 弥生(ひめみや やよい)。

名前も可愛い。顔も可愛い。
そんな彼女は、どうも危険性が高めらしい。



「ウケるねその質問。浅岡さんが変人ってさ、すげーわかるよ」

「よく言われる。それで、どう思う?」




お花畑くんに聞くことではないことは分かっている。
「奪われちゃうと思う?」とか、そんなことを聞く彼女なんて早々居ないだろう。それももちろん分かっている。


志葉はそんな簡単な男じゃない。

姫宮 弥生 がすごい性悪で略奪女だったとしても、志葉は私のことが好きだから、きっと絶対揺らがない。


そんな自信がどこかにあったのかもしれないし、気の所為だったのかもしれない。それら分からないけど、だからお花畑くんにそんな質問ができたのかもしれない。


< 87 / 220 >

この作品をシェア

pagetop