わかりきったことだけを、
「体調平気?」
「志葉が来たから平気じゃない」
「あ、平気そうだね。よかった」
「……もー帰ってよ」
「ごめんって。反省してる、ホント」
部屋に戻り再びベッドに入る。志葉はベッドが背もたれになるようにして座った。
「なぁ」と、志葉が静かに口を開く。
姫宮さんこことでまだモヤモヤが残っている私は、拗ねた顔が見られないようにと彼に背を向けるようにして布団を被っていた。
耳を澄まし、志葉の言葉を待つ。
「浅岡」
「……、」
「ゆらのちゃん」
「…やめてよ」
「……ゆらのサマ」
……別に敬意を払えなんて言ってないんだけど。
バカにしてる?いつもみたいに私がのってくると思ってる?だとしたら、生憎、今日はそういう気分じゃない。
体調は悪いし、なによりずっと志葉にムカついているのだ私は。
「こっち見て、浅岡」
つん、と背中をつつかれる。
意地でも見てあげない。そう決めてぎゅっと布団を握りしめ、まるで寝たかのように動かないでいると、「……頑固ー、」とつぶやく声が聞こえた。