わかりきったことだけを、
「人と話す時は目見て話さないとダメだよ浅岡」
「……」
「ゆらのちゃん」
知らない知らない。話したくない。
志葉の口から姫宮さんの名前なんて聞きたくないの。
私の事だけ考えてればいいじゃん。
私にだけ照れてればいいじゃんか。
志葉の彼女は私なのに────
「……っ、!」
ビクリ、反射的に身体が震えた。
「っ、ひっ」
「へえ、背中弱いんだ」
「っなに、してんのっ」
「こっち見てくれないから悪戯してる」
「っわ、わかったってば、志葉、っ」
「んー」
「、最低っ」
「ごめんって。怒んないでよ」
背中を行き来する志葉の指。くすぐったくて思わず声が出た。ゾクゾクして耐えられなくて、ある意味強制的に身体を反転させられる。
満足そうに笑う志葉と目が合った。
「おはよ、浅岡」
何がおはようだ。もうお昼だし、今更だし。
プイッと目を逸らすも、伸びてきた志葉の手がムニュ、と私の頬を挟んだ。