わかりきったことだけを、




「人と話す時は目見て話さないとダメだよ浅岡」

「……」

「ゆらのちゃん」




知らない知らない。話したくない。
志葉の口から姫宮さんの名前なんて聞きたくないの。

私の事だけ考えてればいいじゃん。
私にだけ照れてればいいじゃんか。

志葉の彼女は私なのに​────




「……っ、!」



ビクリ、反射的に身体が震えた。




「っ、ひっ」

「へえ、背中弱いんだ」

「っなに、してんのっ」

「こっち見てくれないから悪戯してる」

「っわ、わかったってば、志葉、っ」

「んー」

「、最低っ」

「ごめんって。怒んないでよ」



背中を行き来する志葉の指。くすぐったくて思わず声が出た。ゾクゾクして耐えられなくて、ある意味強制的に身体を反転させられる。

満足そうに笑う志葉と目が合った。




「おはよ、浅岡」




何がおはようだ。もうお昼だし、今更だし。
プイッと目を逸らすも、伸びてきた志葉の手がムニュ、と私の頬を挟んだ。


< 94 / 220 >

この作品をシェア

pagetop