ベランダに21時、君に会いたい。
「美紅(みく)もう諦めろ……こいつ、美紅のことも女子だと思ってないらしいから」
「え……っ」
「こいつ20年以上片想いしてんだよ」
「そんなにいい子なの……?」
いい子とは違う……だけど、何もかもが可愛い。
「……全てが可愛い。可愛いって言葉はあいつのためにあるんじゃないかな」
「何言ってんの、告白すらできてないのに……というか、なんで幼なじみ辞めるってなった訳?」
「それは─︎─︎俺のせいで、いじめられてたから」
そう、暖はいじめられていたらしい。卒業して、高校の1回目の同窓会に行って初めて知った。卒業式の日、話そうって思ったのに女子に囲まれて身動き取れなくて、暖のこと後回しにした。隣だから夜話そうって思って……今度こそ、告ろうって思ったのに。
『あ……礼央くん。ごめんねもう暖、いないのよ……早く一人暮らししたいって』
『……大学はどこなんですか』
『ごめんなさい、暖に口止めされてて……』
*
『あの、暖は帰ってこないんですか。大学卒業したんですよね?』
『ああ……礼央くん。あっちに住みたいらしくて就職もあっちでね……』
『暖は……俺と会いたくないんですかね、避けてますよね』
『そうかもしれないね……礼央くんあんな逃げてばっかりの暖よりももっといい子と付き合うべきよ礼央くんなら選び放題でしょ』
おばさんにも言われて結局は諦められなくて……。