イケメン従者とおぶた姫。
その日、お婆は意を決してリュウキへ電話をしていた。
「大事な話がありましゅ!」
『…お婆の大事な話は本当に大事な話だからな。実際に会って話したい所だが、今はそれが叶いそうにない。電話で申し訳ないが、話してくれ。』
と、言うリュウキは、多忙な様であちこちからリュウキに意見や命令、承諾待ちやらの声、一刻も早く出してほしい書類の話。明日からのスケジュールを読み上げる声も聞こえる。
一人でこなすには、とてもじゃないが無理がある。体が二つ、三つあっても足りないだろうと電話越しにでもリュウキの大変さが伝わってくる。
そんな中でも、僅かな合間を割いてお婆の話を聞いてくれようとしている。申し訳ない気持ちと感謝の気持ち、何よりあまり無理しないでほしいとリュウキの体と心を心配するお婆だ。
「手短に言いましゅね。ナナシ様の件でしゅ!」
と、言うお婆の言葉にリュウキはドキリとした。リュウキは、少しだがナナシと話し様子を窺って、このままショウの世話をさせるか迷っていた。
何故なら
「ナナシ様は、それはとてもとーーーーーっても∞性格に難があると感じましゅた。
おしょらく、このまま育てばとんでもない事になるでしょう。話せば長くなってしまいましゅので、色々と割愛しましゅが危険でしゅ。
なので、ナナシ様の教育を私にさせてくれましぇぬか?地位もナナシ様と同格として。
おしょらく、私めがナナシ様より上の地位だと気に入らないと癇癪を起こし何をしでかすか分からない。かと、言って下の地位では見下し言う事を一切聞かないでしょう。」
…さすが、お婆だ。僅かの間にナナシの本質の一部を見抜いたのか
と、お婆の観察眼に恐れ入るリュウキだ。
「にゃので、ナナシ様の指導係にして下しゃれ!ナナシ様はこのまま育てば、末恐ろしい未来しか見えましぇぬ。
でしゅが、ナナシ様の本質は純真無垢。それでいて、心があまりに敏感で脆い。
そして、あまりにも高すぎるプライドと自分だけは特別中の大特別だという俺様気質。周りに流されやしゅい。それが、大問題なのでしゅ!!」
お婆の人を見極める力は半端じゃない事をよく知っているリュウキだから、この話は本当に聞き流してはいけない気がした。
「私が見る限り、ナナシ様は自分をよく見せたいプライドの塊。このままでは、自分の気持ちより先に周りの評価ばかり気にする様になってくるように思いましゅ。
しょうなってくれば、己の美貌と能力の高さに徐々に自惚れ始めるはず。まさに、王様気取りの傲慢極まりない手のつけれられにゃい悪魔になってしまいましゅ。
…厄介なのは実際、ナナシには皆が羨むものの殆どが備わってしまっている事。劣等感とは無縁に育ってしまうでしょう。
そうなれば、近い将来ショウ様もその犠牲になる可能性が大いにあるのでしゅ。」
いつも思うが、将来まで見据えた話をよくしてくるが最初こそ、まさかと疑っていたが実際にその通りになっていく様々な人達を見て知っているからこそ…お婆の今の話は本当に怖いとリュウキはナナシを早くショウから引き離した方がいいと考え始めていた。
お婆とは違う視点、着眼点ではあるが、王として人なりを見た時、かなりの危うさを感じたのも確か。それこそ、自分とショウ以外の命を命とも思ってない様な残虐非道性を感じたのだ。
初めて言葉を交わした時、一瞬ではあったがショウ以外、皆殺しにしようとしている殺気を感じた。
「例えばの話でしゅが。周りの大人達が
“何故、あんな平凡な子に、あんなに素晴らしい従者がついているのか。”
そんな風な評価、噂が聞こえれば、素直なナナシ様は
“そうかもしれない”
と、思い、何故自分は
“こんな普通の子を世話してるのか”
と、疑問を抱き考えるうちに
“ハイスペックなオレ様に、コイツは相応しくない”
と、ショウ様に嫌悪するようになり蔑ろにして深く傷付けてしまう恐れがあるのでしゅ。そんな事は絶対にあってはなりましぇぬ!
できるのなら一刻も早くそれを阻止し、そうなる恐ろしい芽を摘んでしまわなければなりましぇん!
でしゅので、少々荒治療になるかとは思いましゅが、上手くいけばただ性格が少々悪いだけの良い子になる筈でしゅ!」
と、力説するお婆の言葉に
…ハハ…
それでも、性格は悪いのか
リュウキはから笑いするしかなかった。
だが、極悪非道の恐ろしい化け物になる未来しか見えないナナシが“良心ある、ただ性格が悪いだけ”の人間に育つなら、それはかなり喜ばしい事だ。
「…ただ、どういった心理なのかわかりましぇぬが、今のナナシ様はショウ様だけには聖母の様に慈悲深く温かい。とてもとても、優しく思いやりのある良い子なんでしゅよ。
しかも、敏感過ぎる事がたまに傷でしゅが、気遣いのできる、要領もよい素晴らしい子でもある事は確か。
…ただ、本当に心が脆く周りに流されやすい。調子に乗りやすいという欠点をどう克服できるか。ちょっとやそっとでは壊れない、流されない強靭な心をもつ事ができたのならば!
それ次第で、全く違った希望ある道がいくつも見えるんでしゅよ。
根が純粋無垢で透明な為に、色んな色に染まりやすい。その色を決めるのは、流されやすい本人には不可!他ならぬ我ら周りの人間。」
…さすが、教育論、育成論、心理学の研究を重ね世界的に評価された事だけある。そして、若かりし頃に看護師として様々な国の戦場に赴き数々の勲章の候補に選べれた事だけある。
もったいない事に、その名誉ある名や勲章を辞退してるが。本当に、素晴らしい人材だ。
「私は、性格のいい人間など存在してないと思っておりましゅ。みな、至って普通。
ただ、それは自分の中の悪い欲を周りに迷惑をかけず上手く自分と付き合っていく事ができるか、無いに等しくする為自分で何とかできる糸口を見つけるか。
欲を抑えきれず、自分の為だけに恐ろしい犠牲を出し続けるか。上部だけいい人を装い、隠れて恐ろしい本性を出し酷い事をし続けるか。
…他にも色々ありましゅが
これらの違いは、人を思いやれる気持ちがあるかどうか。
相手の気持ちになって考える事ができるか。
つまり、人道たる者か、人道から外れた人間の皮を被った愚かな悪魔か。
そして、同時に人間はみんな良い心も持っていると思いましゅ。良い心と悪い心の両方が備わってるのが人間。その比率は人によって様々。その良し悪しの判断も人によって様々。
人の性格をとやかく言う程、私もできた人間ではありましぇん。でしゅが、子どもを守るべき大人の私が、絶望的な将来しか見えないナナシ様を見捨てるなどできましぇん!」
お婆の言いたい事は分かった。だが、俺から見たナナシは、心の中に人の心を持たぬ悪魔を飼っている。そんなナナシをそこまで改善させるのは至難の業。
しかし、荷が重過ぎる役目だとは重々承知だが
『…ああ、頼む。これは、他の誰でもないお婆にしかできない事だと思う。お婆に無理だったら、ナナシはそれだけの奴だって事だ。
…お婆には、いつもかなりの負担を掛けるな。すまない。そして、心より感謝してる。』
と、お婆に、今後に関わるとても重要な役目ナナシの育成を託した。ナナシの将来はお婆の腕に掛かってると言っても過言ではないだろう。
そして、各国の戦場でここでは言えない様な残虐無比、残酷非道な中、人間が人間扱いされない壮絶な状況。奴隷扱いされ…とてもじゃないが話せない…!!を見て手当しお婆は思ったのだ。
…同じ人間なのに、何故…!
同じ人として見てもらえない人間はもちろん、人を人として見れなくなった人間も…
お婆のエゴだろうが、偽善者だとお前に何が分かる!最後までつきっきりで俺たちの面倒を見てくれる覚悟も無しに、一時の可哀想って感情だけで関わってくるな!と、罵られようが、お婆が腰と脚を負傷し現役を引退するその時まで
“エゴが強くて何が悪い!偽善者だっていいじゃないか!
救える命や心が、そこにあるんだ。みんな、お互いを思いやって、支え合って生きてほしい!平和が一番!みんな、幸せになってほしい!!
そう願って何が悪いっっっ!!!
誰かが犠牲になるなんて絶対あってはならない!”
と、自分に強く言い聞かせながら無我夢中で全力で走りきった。
そんな、お婆だったからナナシの危うさに直ぐに気付けた。そして、とても良い子だって事も分かった。
ただ、本当に心が透明過ぎて、周りから影響を受けやすいだけなのだ。それが、大きな問題でもあるが。
「ありがとうございましゅ。そして、どうか、あまり無理なさらぬよう…お婆は、頑張り過ぎるリュウキ様がとても心配なのでしゅ。」
『…ああ。お婆の気持ち、有り難く受け取る。ありがとな、お婆。お婆は、俺にとって“お母さん”のように思っている。
いつか、親孝行できるように頑張るから心配するな。大丈夫だから、な?』
「…りゅ、リュウキしゃま…!」
と、お婆はリュウキの言葉に感極まり、リュウキもまた心が温かく少し元気になった気持ちになれた。
そして、手短に済ませる筈だったがお婆の力説により随分長くなってしまった二人の会話は終わると
お婆はナナシを良心あるただの性格の悪い子に育てるべく熱心に教育本を読み漁ったり、手のつけられない子供が預けられる施設へ赴きその子達と触れ合ったりと勉強に勉強を重ねた。
もちろん、自分の部屋などにはそういった類の本などは一切置かない。
これが少しでも、かなり敏感なナナシの目に止まればお婆の信用はゼロどころかマイナスになるだろうから。慎重に慎重を重ねなければならない。
頭の回転は早く洞察力も鋭い、何かともの凄く敏感なナナシとお婆の戦いの始まりである。
この屋敷には50才以上しか居ないという高齢者が多いが(一番若くて56才である)、ショウを育てる環境をより良くする為にどの人材も実績や人柄など重視して選び抜かれたエキスパート達ばかりだ。
なので、お婆はこの時ほど、この素晴らしい使用人やメイド達が居てくれた事に感謝した事はない。
メイド長のお婆は、二回に分け屋敷から遠く離れた別荘で緊急会議を開いた。もちろん、ナナシの事についてだ。
みんな、お婆の危惧している内容に驚きつつも、確かにあり得ない話ではないとそれを重く受け止めお婆のナナシに対する注意事項をしっかりと頭に叩き込み
屋敷で働く使用人やメイド達総出で【ナナシ、いい子計画】を決行したのだった。
まず、一番は“みんな、平等”だという認識を持ってもらう事。だから、決して特別扱いはしない。
つまり、自分だけの事だけが特別な訳ではない。みんな、自分と同じく生きている生き物である。
だから、自分がされたら嫌な事は絶対にしない。相手の気持ちを考え、思いやりをもって接してあげられる心を持ってほしいのだ。
その為に、いい事をしたら全力で褒める。
悪い事をしそうになったり、していたらキツく注意する。
だが、ただ叱るだけでは相手には分からないし、ちっとも心に響かない。
だから、同じ過ちを繰り返すか、ずる賢いと怒られるのは嫌だしムカつく、苛つくだけなので、同じ悪さを隠れてするケースも多い。
そうならない為に、何がいけないのか把握するよう自分も子供の目線になり一緒に考え、出来るだけ子供なりの考えた答えや質問により良い方向へと導くよう促し
子供が自分の中で自分の力で考えて答えを出した!そういう感じに、自分で考え自分で導き出す力。もし、それがいけない事であったなら、しっかりとそれを伝える必要もある。それは、どうしてか?何故、いけないのか、また一緒になって考える。
凄く根気も気力も要るが必要な事である。
視野を広げて、よく考える事。それが、とても大切だと思う。
いくら、たくさんたくさん考えたって言ったって視野が狭ければ、本来見えるはずのものも見えずそこだけしか見えない。だから、大切な事、大事なものを見落とし失ってしまう。
難しい事ではあるが、決して罰したり罵ってはならない。
罰する事で、子供達…大人も含めて負の感情ばかり積もり…結果、将来とんでもない大事件を起こす事も多く、事件にならなくても心の病で生きてるだけで苦しく辛い悲惨な人生を送る者もかなり多い。他にも、色々と苦難が多い。
そこから、立ち直る、更生するには、もはや自分だけの力では無理。
周りの人達の惜しみない思いやり、見捨てない根気の入った手助け、本人のとてつもない努力と根気、気力との壮絶な戦いが必要となる。
こういった心苦しい話は尽きないが、
とりあえず今、自分達にできる精いっぱいを全力で頑張るだけだ。
それから、屋敷の人達はナナシを特別扱いせず、他の子供達と同様に接した。
それでも、ショウと自分が大好き。自分とショウさえ良ければ、後はどうでもいいというのは変わらず。
それどころか、自分より少しでも劣る者を見ては、見下し嘲笑ったりしてばかり。容姿や能力の高さに絶対の自信のあるナナシは調子に乗りまくっていた。
これは、いけないとお婆は荒治療ではあるし、今後どう影響してくるか分からないが一か八かの賭けに出た。
ナナシが、この屋敷に来て一ヵ月。
ナナシの驚くほどの能力にみんな驚かされっぱなしだし、何ならナナシは本物の天才で僅か、
5才にして子育ての合間に独学で小学生の殆どの教科全てをマスターしてしまっていた。
そして、もちろんショウの為に子育ての本や教育の本まで読み漁っていたのには恐れ入る。
ただいま、独学で中学校の勉強をしている。
そして、更に驚く事に魔法レベルを通り越して、魔導レベルA判断。しかも、火・水・雷・土・草・光・闇・癒・聖・毒・幻・召喚、を使いこなす前代未聞の天才であった。
波動もちょっと使える様だが、これは苦手らしいく波動レベルEだった。それでも目が飛び出るほどもの凄い事なのだが。
だって、まだ5才だよ?幼児なんだよ??
神は、この子に全てのモノを授けたのかってくらい目を疑う。
だから、研究所に連れて行かれる事を危惧したお婆は、これを知る全ての者に口止めしナナシにも研究材料にされるから力は使わない事。
それどころか、しばらくの間、魔導は使えないフリをする事を約束させた。
そして、お婆は調べに調べてナナシをある小学校へと入学させた。飛び級であるが、学校側にもその事は伏せるよういい、もうすぐで7才とい事にして入学させた。
とてもとても、問題のある学校へ。
そして、学校へ入学する時、お婆は最新技術の魔道具を使って…ナナシをブサイクのデブへと加工した。
そりゃ、「なんで、このオレ様がこんなデブでブスの格好させられなきゃなんねーんだ!ふざけんな!しかも、小学校一年生とか馬鹿にしてんのか!!?」と、大抗議して癇癪を起こして宥めるのがとても大変だった。
だが、誰だってこんな格好させられて怒らない方がおかしいだろう。
「オレ様の美貌を隠してーなら、髪長いんだし頭ボサボサにして、野暮ったい黒縁メガネでもかけてりゃバレねーよ!」
ごもっとも。幼児らしからぬ考えで驚かされるが、それでは駄目だった。
それだけでは、お婆の目論見がかなわない。
可哀想な事をするのは重々承知だが、可愛い子には旅をさせろ。言って分からなければ、体験してもらうまで!
お婆は、可哀想に思うも心を鬼にして
「しょの姿、しょして魔導も使えないように魔封じの魔具をつけさせてもらいましゅ。
服装も一般の子達より少々劣る服と、同じ服を何着か用意しておりましゅ。
何故なら、ナナシ様は両親が居なくてお婆に引き取られたちょっとだけ貧乏設定にして学校に申し込んでおりましゅからね。
もし、半年間何の問題も起こさず学校へ通う事ができたなら中学校への飛び級も考えましょう。」
と、条件を出してきたのだ。もう、小学校の勉強を会得しているナナシは、早く中学校の勉強がしたくてたまらない。
しかも、小学校へ通う間は中学校の勉強をする事も禁止されてしまった。
…最悪だ!!!
早く、色々身に付けてショウに恥じさせない、超ウルトラスーパーすっごい天守にならなければならないのだから!!
とにかく、ナナシはショウの一番の絶対的なお気に入り。そして、ショウの自慢になりたいのだ。
ショウに、ナナシと一緒じゃなきゃ嫌だ。ずっと側にいてほしいと言わせたい。自分以外目に入らないくらいナナシに夢中になってほしい。
なんたって、将来結婚して夫婦になるんだから。
その為に、自分磨きに余念がないのだ。
もちろん、ショウに気に入ってもらう為に美容やお洒落にも気を使っている。
そして、気が滅入るが小学校の入学式。保護者としてお婆が来ているが、貧乏人が頑張って買いましたって感じの安いスーツを着てきた。
ナナシも、お婆と同じで貧乏なのに晴れの舞台に為に頑張って安いお洒落な服買ったよって風なスーツを着せられた。…ダサすぎて、ナナシはちょっぴり泣いてしまった。
すると、やはり保護者側でお婆達を見て何かをヒソヒソ言ってるのが聞こえた。
そして、ナナシやお婆だけでない。本当に生活に苦労してる感じの子や、片親の子供もいて、それだけで周りの大人達はそれを話題にし変な顔をしながら何か言っている。
雰囲気だけで、自分達を悪く言ってるのだけは分かった。…もの凄く不愉快だし、悔しいっ!ムカつくっ!!
オレ様が、何したって言うんだ!?
ナナシの他にも、生活が苦しそうな子や片親の子、ちょっと容姿に自信がない子など…不快そうに今にも泣きそうな顔をしている。
…何なんだよ、これ!?
入学式から、不穏な空気が漂いナナシは何だかとても嫌な気持ちになった。
…それに、学校にショウを連れて行くと言ったら全力で止められた。自分が居ない間、ショウが心配だ。オレ様が居なくて、寂しくて泣いてるんじゃないか、オレ様の代わりにショウを世話してる奴!ちゃんと、世話できてんのか?
もう、ショウが心配で心配でたまらない。
不安過ぎて、オレ様が居ない間ショウの動画を撮り続けろと言ったけど断られた。が、オレ様も引き下がる事もできねーだろ!心配でさ!
そうやって話し合って(?)1時間に一回、ショート動画を送ってくる事とショウに関する細かい報告もするという事で決着がついた。
かなり妥協してやったオレ様に感謝してほしいぜ。だけど、やっぱり不安は尽きなくて
それだけでも、心が不安定だっていうのに入学式の一部でこの嫌ぁ〜〜〜な雰囲気。
標的にされてない子供達は、そんなクソ最悪な雰囲気にも気付かず呑気に元気いっぱいとても楽しそうだ。
緊急してる子もいるが、自分の事だけで精いっぱいである。
マジ、うぜーーーッッ!!!
何も知らねーで、騒いでる奴!!
と、今すぐにでも馬鹿みたいに騒いでる奴らと悪口を言ってるドロドロに汚れきった大人どももろともブッ殺してしまいたい所だが、法律ってやつが邪魔するし
何より魔力を封じる魔具だけでなく、体力や力さえも7歳児の平均に調整させられた魔具をつけられてるから身動き取れねーのがムカつく!と、ナナシははらわたが煮え繰り返る思いで下を俯いてグッと我慢するしかなかった。
自分の他の奴らはどうしてんだろうと気になり俯いた横から、他の子供達の様子をチラ見すると
大人達の悪い雰囲気を敏感に感じ取り我慢できなくて泣いてる子もいたり、あまりに内気すぎてオシッコに行きたくても言い出せずお漏らししちゃう子、ふざけ過ぎて先生や親に怒られてる子など色んな子がいた。
本当に、人それぞれで一人一人違うもんなんだなぁと感じた。
「大事な話がありましゅ!」
『…お婆の大事な話は本当に大事な話だからな。実際に会って話したい所だが、今はそれが叶いそうにない。電話で申し訳ないが、話してくれ。』
と、言うリュウキは、多忙な様であちこちからリュウキに意見や命令、承諾待ちやらの声、一刻も早く出してほしい書類の話。明日からのスケジュールを読み上げる声も聞こえる。
一人でこなすには、とてもじゃないが無理がある。体が二つ、三つあっても足りないだろうと電話越しにでもリュウキの大変さが伝わってくる。
そんな中でも、僅かな合間を割いてお婆の話を聞いてくれようとしている。申し訳ない気持ちと感謝の気持ち、何よりあまり無理しないでほしいとリュウキの体と心を心配するお婆だ。
「手短に言いましゅね。ナナシ様の件でしゅ!」
と、言うお婆の言葉にリュウキはドキリとした。リュウキは、少しだがナナシと話し様子を窺って、このままショウの世話をさせるか迷っていた。
何故なら
「ナナシ様は、それはとてもとーーーーーっても∞性格に難があると感じましゅた。
おしょらく、このまま育てばとんでもない事になるでしょう。話せば長くなってしまいましゅので、色々と割愛しましゅが危険でしゅ。
なので、ナナシ様の教育を私にさせてくれましぇぬか?地位もナナシ様と同格として。
おしょらく、私めがナナシ様より上の地位だと気に入らないと癇癪を起こし何をしでかすか分からない。かと、言って下の地位では見下し言う事を一切聞かないでしょう。」
…さすが、お婆だ。僅かの間にナナシの本質の一部を見抜いたのか
と、お婆の観察眼に恐れ入るリュウキだ。
「にゃので、ナナシ様の指導係にして下しゃれ!ナナシ様はこのまま育てば、末恐ろしい未来しか見えましぇぬ。
でしゅが、ナナシ様の本質は純真無垢。それでいて、心があまりに敏感で脆い。
そして、あまりにも高すぎるプライドと自分だけは特別中の大特別だという俺様気質。周りに流されやしゅい。それが、大問題なのでしゅ!!」
お婆の人を見極める力は半端じゃない事をよく知っているリュウキだから、この話は本当に聞き流してはいけない気がした。
「私が見る限り、ナナシ様は自分をよく見せたいプライドの塊。このままでは、自分の気持ちより先に周りの評価ばかり気にする様になってくるように思いましゅ。
しょうなってくれば、己の美貌と能力の高さに徐々に自惚れ始めるはず。まさに、王様気取りの傲慢極まりない手のつけれられにゃい悪魔になってしまいましゅ。
…厄介なのは実際、ナナシには皆が羨むものの殆どが備わってしまっている事。劣等感とは無縁に育ってしまうでしょう。
そうなれば、近い将来ショウ様もその犠牲になる可能性が大いにあるのでしゅ。」
いつも思うが、将来まで見据えた話をよくしてくるが最初こそ、まさかと疑っていたが実際にその通りになっていく様々な人達を見て知っているからこそ…お婆の今の話は本当に怖いとリュウキはナナシを早くショウから引き離した方がいいと考え始めていた。
お婆とは違う視点、着眼点ではあるが、王として人なりを見た時、かなりの危うさを感じたのも確か。それこそ、自分とショウ以外の命を命とも思ってない様な残虐非道性を感じたのだ。
初めて言葉を交わした時、一瞬ではあったがショウ以外、皆殺しにしようとしている殺気を感じた。
「例えばの話でしゅが。周りの大人達が
“何故、あんな平凡な子に、あんなに素晴らしい従者がついているのか。”
そんな風な評価、噂が聞こえれば、素直なナナシ様は
“そうかもしれない”
と、思い、何故自分は
“こんな普通の子を世話してるのか”
と、疑問を抱き考えるうちに
“ハイスペックなオレ様に、コイツは相応しくない”
と、ショウ様に嫌悪するようになり蔑ろにして深く傷付けてしまう恐れがあるのでしゅ。そんな事は絶対にあってはなりましぇぬ!
できるのなら一刻も早くそれを阻止し、そうなる恐ろしい芽を摘んでしまわなければなりましぇん!
でしゅので、少々荒治療になるかとは思いましゅが、上手くいけばただ性格が少々悪いだけの良い子になる筈でしゅ!」
と、力説するお婆の言葉に
…ハハ…
それでも、性格は悪いのか
リュウキはから笑いするしかなかった。
だが、極悪非道の恐ろしい化け物になる未来しか見えないナナシが“良心ある、ただ性格が悪いだけ”の人間に育つなら、それはかなり喜ばしい事だ。
「…ただ、どういった心理なのかわかりましぇぬが、今のナナシ様はショウ様だけには聖母の様に慈悲深く温かい。とてもとても、優しく思いやりのある良い子なんでしゅよ。
しかも、敏感過ぎる事がたまに傷でしゅが、気遣いのできる、要領もよい素晴らしい子でもある事は確か。
…ただ、本当に心が脆く周りに流されやすい。調子に乗りやすいという欠点をどう克服できるか。ちょっとやそっとでは壊れない、流されない強靭な心をもつ事ができたのならば!
それ次第で、全く違った希望ある道がいくつも見えるんでしゅよ。
根が純粋無垢で透明な為に、色んな色に染まりやすい。その色を決めるのは、流されやすい本人には不可!他ならぬ我ら周りの人間。」
…さすが、教育論、育成論、心理学の研究を重ね世界的に評価された事だけある。そして、若かりし頃に看護師として様々な国の戦場に赴き数々の勲章の候補に選べれた事だけある。
もったいない事に、その名誉ある名や勲章を辞退してるが。本当に、素晴らしい人材だ。
「私は、性格のいい人間など存在してないと思っておりましゅ。みな、至って普通。
ただ、それは自分の中の悪い欲を周りに迷惑をかけず上手く自分と付き合っていく事ができるか、無いに等しくする為自分で何とかできる糸口を見つけるか。
欲を抑えきれず、自分の為だけに恐ろしい犠牲を出し続けるか。上部だけいい人を装い、隠れて恐ろしい本性を出し酷い事をし続けるか。
…他にも色々ありましゅが
これらの違いは、人を思いやれる気持ちがあるかどうか。
相手の気持ちになって考える事ができるか。
つまり、人道たる者か、人道から外れた人間の皮を被った愚かな悪魔か。
そして、同時に人間はみんな良い心も持っていると思いましゅ。良い心と悪い心の両方が備わってるのが人間。その比率は人によって様々。その良し悪しの判断も人によって様々。
人の性格をとやかく言う程、私もできた人間ではありましぇん。でしゅが、子どもを守るべき大人の私が、絶望的な将来しか見えないナナシ様を見捨てるなどできましぇん!」
お婆の言いたい事は分かった。だが、俺から見たナナシは、心の中に人の心を持たぬ悪魔を飼っている。そんなナナシをそこまで改善させるのは至難の業。
しかし、荷が重過ぎる役目だとは重々承知だが
『…ああ、頼む。これは、他の誰でもないお婆にしかできない事だと思う。お婆に無理だったら、ナナシはそれだけの奴だって事だ。
…お婆には、いつもかなりの負担を掛けるな。すまない。そして、心より感謝してる。』
と、お婆に、今後に関わるとても重要な役目ナナシの育成を託した。ナナシの将来はお婆の腕に掛かってると言っても過言ではないだろう。
そして、各国の戦場でここでは言えない様な残虐無比、残酷非道な中、人間が人間扱いされない壮絶な状況。奴隷扱いされ…とてもじゃないが話せない…!!を見て手当しお婆は思ったのだ。
…同じ人間なのに、何故…!
同じ人として見てもらえない人間はもちろん、人を人として見れなくなった人間も…
お婆のエゴだろうが、偽善者だとお前に何が分かる!最後までつきっきりで俺たちの面倒を見てくれる覚悟も無しに、一時の可哀想って感情だけで関わってくるな!と、罵られようが、お婆が腰と脚を負傷し現役を引退するその時まで
“エゴが強くて何が悪い!偽善者だっていいじゃないか!
救える命や心が、そこにあるんだ。みんな、お互いを思いやって、支え合って生きてほしい!平和が一番!みんな、幸せになってほしい!!
そう願って何が悪いっっっ!!!
誰かが犠牲になるなんて絶対あってはならない!”
と、自分に強く言い聞かせながら無我夢中で全力で走りきった。
そんな、お婆だったからナナシの危うさに直ぐに気付けた。そして、とても良い子だって事も分かった。
ただ、本当に心が透明過ぎて、周りから影響を受けやすいだけなのだ。それが、大きな問題でもあるが。
「ありがとうございましゅ。そして、どうか、あまり無理なさらぬよう…お婆は、頑張り過ぎるリュウキ様がとても心配なのでしゅ。」
『…ああ。お婆の気持ち、有り難く受け取る。ありがとな、お婆。お婆は、俺にとって“お母さん”のように思っている。
いつか、親孝行できるように頑張るから心配するな。大丈夫だから、な?』
「…りゅ、リュウキしゃま…!」
と、お婆はリュウキの言葉に感極まり、リュウキもまた心が温かく少し元気になった気持ちになれた。
そして、手短に済ませる筈だったがお婆の力説により随分長くなってしまった二人の会話は終わると
お婆はナナシを良心あるただの性格の悪い子に育てるべく熱心に教育本を読み漁ったり、手のつけられない子供が預けられる施設へ赴きその子達と触れ合ったりと勉強に勉強を重ねた。
もちろん、自分の部屋などにはそういった類の本などは一切置かない。
これが少しでも、かなり敏感なナナシの目に止まればお婆の信用はゼロどころかマイナスになるだろうから。慎重に慎重を重ねなければならない。
頭の回転は早く洞察力も鋭い、何かともの凄く敏感なナナシとお婆の戦いの始まりである。
この屋敷には50才以上しか居ないという高齢者が多いが(一番若くて56才である)、ショウを育てる環境をより良くする為にどの人材も実績や人柄など重視して選び抜かれたエキスパート達ばかりだ。
なので、お婆はこの時ほど、この素晴らしい使用人やメイド達が居てくれた事に感謝した事はない。
メイド長のお婆は、二回に分け屋敷から遠く離れた別荘で緊急会議を開いた。もちろん、ナナシの事についてだ。
みんな、お婆の危惧している内容に驚きつつも、確かにあり得ない話ではないとそれを重く受け止めお婆のナナシに対する注意事項をしっかりと頭に叩き込み
屋敷で働く使用人やメイド達総出で【ナナシ、いい子計画】を決行したのだった。
まず、一番は“みんな、平等”だという認識を持ってもらう事。だから、決して特別扱いはしない。
つまり、自分だけの事だけが特別な訳ではない。みんな、自分と同じく生きている生き物である。
だから、自分がされたら嫌な事は絶対にしない。相手の気持ちを考え、思いやりをもって接してあげられる心を持ってほしいのだ。
その為に、いい事をしたら全力で褒める。
悪い事をしそうになったり、していたらキツく注意する。
だが、ただ叱るだけでは相手には分からないし、ちっとも心に響かない。
だから、同じ過ちを繰り返すか、ずる賢いと怒られるのは嫌だしムカつく、苛つくだけなので、同じ悪さを隠れてするケースも多い。
そうならない為に、何がいけないのか把握するよう自分も子供の目線になり一緒に考え、出来るだけ子供なりの考えた答えや質問により良い方向へと導くよう促し
子供が自分の中で自分の力で考えて答えを出した!そういう感じに、自分で考え自分で導き出す力。もし、それがいけない事であったなら、しっかりとそれを伝える必要もある。それは、どうしてか?何故、いけないのか、また一緒になって考える。
凄く根気も気力も要るが必要な事である。
視野を広げて、よく考える事。それが、とても大切だと思う。
いくら、たくさんたくさん考えたって言ったって視野が狭ければ、本来見えるはずのものも見えずそこだけしか見えない。だから、大切な事、大事なものを見落とし失ってしまう。
難しい事ではあるが、決して罰したり罵ってはならない。
罰する事で、子供達…大人も含めて負の感情ばかり積もり…結果、将来とんでもない大事件を起こす事も多く、事件にならなくても心の病で生きてるだけで苦しく辛い悲惨な人生を送る者もかなり多い。他にも、色々と苦難が多い。
そこから、立ち直る、更生するには、もはや自分だけの力では無理。
周りの人達の惜しみない思いやり、見捨てない根気の入った手助け、本人のとてつもない努力と根気、気力との壮絶な戦いが必要となる。
こういった心苦しい話は尽きないが、
とりあえず今、自分達にできる精いっぱいを全力で頑張るだけだ。
それから、屋敷の人達はナナシを特別扱いせず、他の子供達と同様に接した。
それでも、ショウと自分が大好き。自分とショウさえ良ければ、後はどうでもいいというのは変わらず。
それどころか、自分より少しでも劣る者を見ては、見下し嘲笑ったりしてばかり。容姿や能力の高さに絶対の自信のあるナナシは調子に乗りまくっていた。
これは、いけないとお婆は荒治療ではあるし、今後どう影響してくるか分からないが一か八かの賭けに出た。
ナナシが、この屋敷に来て一ヵ月。
ナナシの驚くほどの能力にみんな驚かされっぱなしだし、何ならナナシは本物の天才で僅か、
5才にして子育ての合間に独学で小学生の殆どの教科全てをマスターしてしまっていた。
そして、もちろんショウの為に子育ての本や教育の本まで読み漁っていたのには恐れ入る。
ただいま、独学で中学校の勉強をしている。
そして、更に驚く事に魔法レベルを通り越して、魔導レベルA判断。しかも、火・水・雷・土・草・光・闇・癒・聖・毒・幻・召喚、を使いこなす前代未聞の天才であった。
波動もちょっと使える様だが、これは苦手らしいく波動レベルEだった。それでも目が飛び出るほどもの凄い事なのだが。
だって、まだ5才だよ?幼児なんだよ??
神は、この子に全てのモノを授けたのかってくらい目を疑う。
だから、研究所に連れて行かれる事を危惧したお婆は、これを知る全ての者に口止めしナナシにも研究材料にされるから力は使わない事。
それどころか、しばらくの間、魔導は使えないフリをする事を約束させた。
そして、お婆は調べに調べてナナシをある小学校へと入学させた。飛び級であるが、学校側にもその事は伏せるよういい、もうすぐで7才とい事にして入学させた。
とてもとても、問題のある学校へ。
そして、学校へ入学する時、お婆は最新技術の魔道具を使って…ナナシをブサイクのデブへと加工した。
そりゃ、「なんで、このオレ様がこんなデブでブスの格好させられなきゃなんねーんだ!ふざけんな!しかも、小学校一年生とか馬鹿にしてんのか!!?」と、大抗議して癇癪を起こして宥めるのがとても大変だった。
だが、誰だってこんな格好させられて怒らない方がおかしいだろう。
「オレ様の美貌を隠してーなら、髪長いんだし頭ボサボサにして、野暮ったい黒縁メガネでもかけてりゃバレねーよ!」
ごもっとも。幼児らしからぬ考えで驚かされるが、それでは駄目だった。
それだけでは、お婆の目論見がかなわない。
可哀想な事をするのは重々承知だが、可愛い子には旅をさせろ。言って分からなければ、体験してもらうまで!
お婆は、可哀想に思うも心を鬼にして
「しょの姿、しょして魔導も使えないように魔封じの魔具をつけさせてもらいましゅ。
服装も一般の子達より少々劣る服と、同じ服を何着か用意しておりましゅ。
何故なら、ナナシ様は両親が居なくてお婆に引き取られたちょっとだけ貧乏設定にして学校に申し込んでおりましゅからね。
もし、半年間何の問題も起こさず学校へ通う事ができたなら中学校への飛び級も考えましょう。」
と、条件を出してきたのだ。もう、小学校の勉強を会得しているナナシは、早く中学校の勉強がしたくてたまらない。
しかも、小学校へ通う間は中学校の勉強をする事も禁止されてしまった。
…最悪だ!!!
早く、色々身に付けてショウに恥じさせない、超ウルトラスーパーすっごい天守にならなければならないのだから!!
とにかく、ナナシはショウの一番の絶対的なお気に入り。そして、ショウの自慢になりたいのだ。
ショウに、ナナシと一緒じゃなきゃ嫌だ。ずっと側にいてほしいと言わせたい。自分以外目に入らないくらいナナシに夢中になってほしい。
なんたって、将来結婚して夫婦になるんだから。
その為に、自分磨きに余念がないのだ。
もちろん、ショウに気に入ってもらう為に美容やお洒落にも気を使っている。
そして、気が滅入るが小学校の入学式。保護者としてお婆が来ているが、貧乏人が頑張って買いましたって感じの安いスーツを着てきた。
ナナシも、お婆と同じで貧乏なのに晴れの舞台に為に頑張って安いお洒落な服買ったよって風なスーツを着せられた。…ダサすぎて、ナナシはちょっぴり泣いてしまった。
すると、やはり保護者側でお婆達を見て何かをヒソヒソ言ってるのが聞こえた。
そして、ナナシやお婆だけでない。本当に生活に苦労してる感じの子や、片親の子供もいて、それだけで周りの大人達はそれを話題にし変な顔をしながら何か言っている。
雰囲気だけで、自分達を悪く言ってるのだけは分かった。…もの凄く不愉快だし、悔しいっ!ムカつくっ!!
オレ様が、何したって言うんだ!?
ナナシの他にも、生活が苦しそうな子や片親の子、ちょっと容姿に自信がない子など…不快そうに今にも泣きそうな顔をしている。
…何なんだよ、これ!?
入学式から、不穏な空気が漂いナナシは何だかとても嫌な気持ちになった。
…それに、学校にショウを連れて行くと言ったら全力で止められた。自分が居ない間、ショウが心配だ。オレ様が居なくて、寂しくて泣いてるんじゃないか、オレ様の代わりにショウを世話してる奴!ちゃんと、世話できてんのか?
もう、ショウが心配で心配でたまらない。
不安過ぎて、オレ様が居ない間ショウの動画を撮り続けろと言ったけど断られた。が、オレ様も引き下がる事もできねーだろ!心配でさ!
そうやって話し合って(?)1時間に一回、ショート動画を送ってくる事とショウに関する細かい報告もするという事で決着がついた。
かなり妥協してやったオレ様に感謝してほしいぜ。だけど、やっぱり不安は尽きなくて
それだけでも、心が不安定だっていうのに入学式の一部でこの嫌ぁ〜〜〜な雰囲気。
標的にされてない子供達は、そんなクソ最悪な雰囲気にも気付かず呑気に元気いっぱいとても楽しそうだ。
緊急してる子もいるが、自分の事だけで精いっぱいである。
マジ、うぜーーーッッ!!!
何も知らねーで、騒いでる奴!!
と、今すぐにでも馬鹿みたいに騒いでる奴らと悪口を言ってるドロドロに汚れきった大人どももろともブッ殺してしまいたい所だが、法律ってやつが邪魔するし
何より魔力を封じる魔具だけでなく、体力や力さえも7歳児の平均に調整させられた魔具をつけられてるから身動き取れねーのがムカつく!と、ナナシははらわたが煮え繰り返る思いで下を俯いてグッと我慢するしかなかった。
自分の他の奴らはどうしてんだろうと気になり俯いた横から、他の子供達の様子をチラ見すると
大人達の悪い雰囲気を敏感に感じ取り我慢できなくて泣いてる子もいたり、あまりに内気すぎてオシッコに行きたくても言い出せずお漏らししちゃう子、ふざけ過ぎて先生や親に怒られてる子など色んな子がいた。
本当に、人それぞれで一人一人違うもんなんだなぁと感じた。