イケメン従者とおぶた姫。


…とにかく、最悪だっっっ!!!


小学生に通い始めてすぐ、太ってるって理由だけで何人かの男子に囲まれ背中を蹴られたりランドセルをぶつけられたりして


「…うっわっ!!めっちゃ、デブッ!」

「なんか、ここら辺臭くね?って、思ったらぁ!デブがいるぅぅ〜〜〜!
クッセェ〜〜!デブから、デブ臭がしてくっせぇぇ〜〜〜!!」

「デブに近づくと、デブ菌うつるぜ!逃げろーーー!」

と、鼻を詰まんで臭いというジェスチャーしてからかってきたりして、ギャハハ笑いながらデブ菌が感染ると馬鹿にするジェスチャーしながら走り去っていった。
やる事が表立っていて、あからさま。身体的に苦痛を与える事が多い気がする。

周りの子供達もそれを見てクスクス笑ってるし、一部の女子は集団で集まりわざとナナシに聞こえるように悪口を言ってクスクス笑っている。

しかも、ムカつくのが、ワザと聞こえる様に言ってはナナシをチラチラ見てる癖に、ムカついてその女子集団をギッと睨むと「ヤダ〜、睨んでるよ。気持ちわるぅ〜い。」など言って、あたかも自分達は悪くない、ナナシなんて見てなかったという風に

ナナシが見るとワザと目線を逸らし、ナナシが見てないとナナシをワザとチラチラ見るを繰り返している。やる事が、裏でコソコソと回りくどくてねちっこい。精神的苦痛を与える事が多い感じがする。

どちらにせよ、情け容赦ない。

学校初日、もう既に学校に行きたくなくなってしまった。

人間の体って不思議だって思ったのが、
学校がある日の朝凄くお腹が痛くなって上からも下からも出てトイレにこもってしまう。
胃が空っぽになっても出てこようとするから酸っぱいものばかり出て喉や鼻にツーンとくるしヒリヒリして嫌な感じだ。
しかも、これから嫌な学校に行くんだと思うと少し眩暈がしてフラつく事もあった。

夜になって、また明日も学校があるんだって思えば心臓がバクバクしてきて呼吸が苦しくなるし、滝汗が出るくらいお腹がすっごく痛くて具合が悪くて眠れなくなる。お陰で寝不足だ。

なのに、学校から帰って来たら休みの日になると、そんな症状も無くなって凄く元気になる。
普段、眠れて無いので休みの殆どをショウのお世話以外寝て過ごす事も多かった。

おかげさまで、元々スリムなナナシはたった数週間でゲッソリ干からびるように痩せ細ってしまった。

多分、こんな事を何年も繰り返してたら症状はどんどん悪化して、休日になっても治らなくなるかもしれない。症状が酷すぎて立ち上がれなくなるかもしれない。


それでも、半年間なんの問題も起こさず、毎回学校に通い続けたら中学校の勉強ができる。それだけを励みに、ナナシは学校へ通い続けた。

通い続けて分かった事は、集中的にイジメの標的になっているのはナナシであったが自分の他にも目立ってイジメられてる子が二人ほどいた。

毎回毎回、派手にぶちかまして目立とうとするあからさまなイジメ、バレないようにしてくる陰湿なイジメ。
暴言を吐かれたり、コソコソ悪口言われたり、汚いものを見る目で見てきたり、靴隠されたり、教科書破かれたり、ランドセルに干からびたカエル入れられたり…まあ、色々…。

怪我させるとか、性的な事とか事件に取り上げられる程のとんでもないイジメではなかったものの…

それでも、ナナシの心にグサグサと突き刺してきて怪我をさせてくる。
毎日毎日、心の傷は増えていくばかりで心の血がダラダラと流れてくる。古いものは瘡蓋になり、新たな傷が毎日つけられる。たまに、瘡蓋を剥がされ血が出る。

心の傷は治る事などなく血は止まっても傷跡として残る一方。そして、新たな生傷が増えるだけ。


毎日毎日積み重なってくるソレは苦痛でしかない。学校初日だけでさえ、もう学校に行きたくないって思うほどだったのに。

それでもナナシは、目的の為に学校に行きたくない気持ちを叱咤し、行きたくないと竦む心と足を無理矢理動かして学校へ通う。

同じようなイジメが繰り返される毎回。こんな嫌な事は、慣れるなんて絶対ない!

色んな苦痛が積もりに積もって溜まっていくだけだ。こんなの繰り返されてたら、怒りと復讐心で頭がおかしくなりそうになる。

これが積み重なって行く度に、気がおかしくなり気が狂うだろうと安易に想像できた。

…辛い…苦しい、苦痛だ…

…許さねー…

オレ様をこんなに追い込む、アイツらを…ただただそれを傍観してた奴らも…我が身可愛さにそれを見て見ぬふりしてる先生達もみんな…

…特に、オレ様をイジメてた奴ら…呪ってやる…いつか、絶対呪い殺してやるッッッ!!!

と、憎悪と殺意、復讐心が芽生え、それはナナシの中で毎日毎日どんどん膨らんでいった。
ナナシの妄想で、いじめっ子達をいくら殺したか分からないくらいに、ナナシはいじめっ子達を恨んだ。恨んで恨んで……


ただ、ナナシにはショウがいた。

それだけが、癒しであり救いだった。

ショウがいなければ、気性の荒い本来暴君なナナシは入学式の時点で学校にいる全員を殺していただろう。

ショウの為と思えばこそ我慢できるのだ。


「…クフフ!かわいいなぁ、オレ様のショウは…」

と、ベビーベットに眠るショウの寝顔を見て、癒されるナナシ。
ショウのあどけない寝顔を眺めていて癒されてる筈で笑みが溢れるナナシだが、じわりとショウの顔が滲んだと思ったら一緒に涙も流れてきた。


「…あれ?おっかしいなぁ。ショウと一緒に居れて幸せな筈なのに、なんで涙が出てくるんだろ?」

と、涙を拭っても拭っても溢れ出て止まらなかった。


「…あれ?マジで、おっかしいの!でも、オレ様はやれる。ショウ、お前がいるからオレ様は耐えられるんだ。ありがとな。」

そう言って、ショウのおでこにソっとチュウをするナナシ。

その様子を、ショウとナナシの部屋のドアの隙間からそっと覗き見るメイド長。


「…ナナシしゃま…」

そして、ナナシが学校に通い始めて一ヵ月が経ったころ。

ナナシは、朝、ある程度ショウのお世話をし終わると、ショウを揺かごに乗せショウをあやしながら朝食を食べていた。

その時、お婆はナナシに普段と違う事を言ってきた。いつも、ナナシの話や学校の事など聞きたがってきたが(全部、無視している)、今回は違った。


「ナナシ様、自分以外の人間一人一人の様子を注意深く見てみてくだしゃれ。すると、いつも見えてこなかった何かが見えてくる事もございましゅ。
周りを注意深く、よぉ〜〜く観察すれば、ショウ様を育てていくうえで今後とても役に立つ事があるやもしれましぇぬ。」

そう言ってきたのだ。いつもと違う話、しかもショウの為になると聞けば、ナナシはお婆を無視できなくなって


「……!!?どういう事だ?」

と、いつになく食いついてきた。その事にお婆は目をまん丸くしたが


「よろしいでしゅか?とにかく、少しの変化も見逃さず注意深く人間観察してみなしゃれ。」

そう言うだけで、明確な答えは教えてくれなかった。だが、ただただイジメを耐えるだけでは、いつ自分の堪忍袋が壊れて

いじめっ子達をどうにかしてしまってもおかしくない状態まで精神状態がキツくなっていたから、いい気の紛らわしになるかもしれないと思いナナシはお婆に言われた通り人間観察する事にした。
…別に、お婆に言われたからではない。これは、自分の意思で決めた事であり、お婆の助言を受けたからではない。

あくまで、気の紛らしだとナナシは自分に言い聞かせた。



そういえばだが、学校に通って三日ほど経った頃だったか、学校の帰りにナナシの事を表立って派手にイジメる集団(3名)が、ナナシを待ち伏せしてランドセルに向かって飛び蹴りしてきたり、上から目線の王様気取りな暴言を吐いたりと学校だけでは飽き足らずナナシをイジメにきた。

しかも、家にまで着いて来ようとしている。

そこで、ナナシの頭の中に一番にショウの姿が浮かんだ。ヤバイ。コイツらに家がバレたりしたら、下手したらショウにまで危害が加えられるのではと。

だが、そこでお婆の言葉が頭をよぎった。

“何かの用事で、誰かが家を訪問しに来る可能性もありましゅ。でしゅが、うちは貧乏という事になっておりましゅから、ナナシ様が必要があればこれを使ってくだしゃれ。”

と、ある魔道具を渡された。

“この魔道具を使った瞬間、そこの空間に本来ある筈のない家が出てきましゅ。
つまりは、幻術であるはずのない物を相手に見せる事ができましゅ。でしゅが、場所によっては危険でしゅので、人気のない場所や迷惑のかからない場所…そうでしゅな。
例えば、公園や空き地などで使用してくだしゃい。”

そんな事を言って、無くてはいけないとその魔道具をネックレスとして無理矢理装着されていたのだ。

それを思い出し、ナナシは近くにあった野ざらしにされた畑に駆け込み、お婆が使い方を説明した通りその魔道具を使用してみた。

すると、そこの畑にはありもしないボロい家が出てきた。だが、それはナナシには透けて見えていて同時にお婆の説明も思い出される。

“使った本人には幻術と分かるように透けて見える状態になっていましゅ。そして、使った時にその場にいた物達にしか、この幻術は見えておりましぇん。
同時に、使った本人の姿も幻術に掛かった者達には見えなくなりましゅ。”


こんなもの何の役に立つんだ、いらないと思っていたが。まさか、役に立つ時が来るとは。
…助かったと、ナナシはホッと胸を撫で下ろし、いじめっ子達から自分の姿は見えていない為いじめっ子達の後をつけて様子を見ていた。

すると


「…あれ!?あのクソデブ、どこ行った?」

「マジだ!いつの間に!!でも、あの家に入ってくの見えたぜ?」

「…プッ!あんなボロい家、初めて見たよ。」

と、三人は、お互いに顔を見合わせてゲラゲラ大笑いしていた。そして、家に誰か居ないか、周りに誰かいないか確認して誰もいない。ドアの鍵が開いてると分かった時。

三人は、ヒソヒソと悪巧みし相談した結果、家の中に突入する事に決まったらしい。
家に突入する前に、子供用の自転車が置いてあるのを見ていい事思いついたとばかりに

「貧乏人のくせに、自転車とか贅沢なんだよ!貧乏人は貧乏人らしくしろや!!」

と、言って自転車の一部を分解したり壊したりして面白がっていた。無残な姿になった自転車を見て、やってやったぞ!と、含み笑いする三人。

「ザマーミロ!ギャハハ!貧乏人が、無理すっからさぁ。」

そう言って、家の中に入って


「ナーナシくぅ〜ん!あっそびましょー。」

と、棒読みでナナシの名を呼んでは色んな部屋を開けてナナシを探し回っていた。だが、いくら呼んでも脅しても出てこないナナシに痺れを切らし、飽きたのもあって家の物を蹴ったりして八つ当たりすると

一人、何か思いついたかのように


「いいじゃん!あのクソデブが出て来ないのが悪い。」

そう言って、他の二人に耳打ちしてそれを聞いた二人もニヤリと悪い笑みを浮かべ

奇声をあげながら、人ん家の色んな部屋へ行って探るという三人の大冒険が始まった。
勝手に冷蔵庫を開けて、夕飯らしき物を素手で食べたり、寝室へ入って色々探ってお金を見つけると

「いーもん、みーっけ!帰り、これで何か美味いもん食おーぜ。どうせ、貧乏人なんだから金はいらねーだろ?こんな貧乏人に使われるよりオレらが使ってあげた方が金だって喜ぶだろ。」

「そーだな!つーか、オレゲームソフト欲しかったけど、そんな端金じゃ買えねーしな。」

「うちの親が、話してたけどクソデブん家、貧乏でババアの年金だけで二人で暮らしてるぜいきんドロボーで悪い奴ららしいぜ!」

「じゃあ、ぜいきん取り戻した俺たちは、すっげーいい奴じゃん!」

なんて言って、給食の集金の袋からお金を盗んで笑っていた。

…ああ、アイツらの親も親で、すっげー悪口言ってるからイジメてもいいって勘違いしてるパターンな。子どもが子どもなら親も親ってやつ?と、シラけていた。

つーか、お金取り戻したって…どんだけ頭悪いんだよ。お前ら、普通に犯罪者だぞ?

なんて、心の中で突っ込んでおいた。


そして、三人はひとしきり暴れると、ようやく家から出て冷蔵庫から盗んだアイスを半分食べて


「これ飽きたから、貧乏人にも分けてやるよ。」

と、言って家の壁にアイスを投げつけ、人の家の壁を汚してゲラゲラ笑っていた。


「おいちかったでちゅかぁ〜?」

ギャハハ!!!と、三人がある一定距離まで離れると幻術は解けた。幼稚な考えで本人達はただ悪い事してスリルを味わって遊んでるだけのつもりだろうが、中身はかなり酷いものだし罪をたくさん重ねてるだけの立派な犯罪者達だ。


そんな事があって、それから味をしめた三人はしょっちゅう(幻術の中)のナナシの家に来ては大暴れして、誰も注意してこない事を知るとどんどん行為がエスカレートしていった。

幻術って知らないで、バカなヤツら

と、アホくさく馬鹿らしくも思うが、これを実際自分がやられてたらと思うとゾッとしたし、はらわたが煮えくりかえる思いがした。

…テメーらに、人の心はねーのかよ!

そんな事をナナシは思い出していた。今日もアイツら(幻術)の家に行くのかな?…すっげームカつくとイライラしたが、ショウの顔が目に入るとスポーンとその苛つきは吹っ飛びショウにデレて夢中になっていた。

そんな事があり、ナナシはイジメられながら人間観察とやらをしてみる事にした。
最初は、誰に着目したらいいか分からなくて、いじめっ子達ばかり目に入って負の気持ちばかり溢れて観察どころじゃなかった。

だが、要領のいいナナシは徐々にコツを掴んでいき分かった事があった。

自分の他にも目立ってイジメられてる二人のうち一人は、心の限界で人格が歪み始めている事。そういえば、こいつ…体型がだんだんぽっちゃりしてきたな。
もう一人は、ナナシのように恨みに恨んで目が血走っている。このままでは、きっと近い将来何か事件を起こしてもおかしくない状態だろう。そして、最初見た時より随分痩せたように感じた。

そんな風に感じた。オレ様以外もイジメで苦しんでるやついるんだなと、ここで初めて自分だけがイジメで苦しんでるわけじゃないと知った。

そして、イジメっ子といじめられっ子の気持ちの重さ、深さが違いすぎる。

イジメっ子は、軽い気持ちやノリでやってる。自分がした事を覚えてない事も多いくらいに。大した事ないつもり…いや、悪い事だという認識も大してない。
とってもとっても軽いなんて事ないもの。ただ、自分の地位や評判を脅かす人間にバレないようにしてるって事は少なからず、悪い事だとは思ってるらしい。
だが、バレなきゃいいだろって簡単に考えてるあたり…良心のネジがぶっ飛んでると思う。


逆に、いじめられっ子は根深い恨みつらみの負の根があちこちに張り巡らされ、消えることのない深い傷として根深く鮮明に覚えている。それはそれは、一人でも家族一丸となっても抱えきれないくらい重く一生のし掛かり続ける。

そんな風に、ナナシは観察を続け感じていた。

イジメっ子にも、大きく分けて二つ種類があるな。周りから問題児扱いされてる子と、表向きは良い子ちゃんで裏では非道外道なイジメや悪さする子。

いじめられっ子も、性格が酷すぎて無視され始めて、それからどんどんイジメがエスカレートってケースや、いじめっ子が“ただ、イジメてみたかっただけー”と、自分の欲望だけで運悪くターゲットにされてしまう子。色々だ。

色々あるが、やっぱり思う事はイジメはダメだ。人間の精神を破壊する行為。その度合いや人によって、精神が壊れ一生を病院で終える人さえもいる。

それは学校に限った事ではない。家庭や職場、あらゆる所で、それがはびこっている。

同じ人間なのに、人を人として見ていない。

そう、ナナシは考える様になっていた。


そして、観察を続ければ続ける程、えげつない現実も見えてきて…
とても口では言えない様な残酷な事を抱えてる子もいたりしてナナシは、どうしようもないない現実に怒りが込み上げてくるし自分でも誰にもどうする事もできない…みんな無力だ。
その子達の事を考えると、自分は全然なまっちょろくマシな方、かなり軽い方だと思った。

思ったが、マシな方ってだけで苦痛や憎しみや悲しみ恨みなど負の感情は薄れる訳でも消える訳でもないが。比べたらキリがないが、それでもナナシだって相当な負を負っているのだ。

それでも、本当に人は個々それぞれ違っていて色んな考えや気持ちがあって、だからぶつかり合う事はある。が、イジメや虐待はそれとは全く違う別物だ。

とも、考えるようになった5歳児であった。

この心の変化の早さに、お婆は腰を抜かすほど驚いた。幼児が、大人でさえ考える事ができない心の問題まで、ここまで根深く掘り下げ考える事ができるなんてと。

そして、お婆との約束通り問題を起こさず、半年間小学校に通い続けたナナシ。

お婆は、ナナシに


「ナナシ様、中高の勉強は家庭教師を雇い早めに習得して、早くに大学へ行きたいと思いましぇぬか?」

と、提案してきた。そんなお婆に


「…それが、クソババアの優しさな?」

そう、ナナシは言ってきたのだ。一瞬ドキリとするお婆だが

「そうでしゅ。どうでしゅか?」

「いいぜ、乗ってやるよ。
どうせ、学年があがる程イジメの質や規模も全然違ったモンになってくるんだろ?
だから、そこまでのイジメの経験まではさせたくねー。

だけど、オレ様にイジメられる弱い立場の人間の気持ちも知ってほしい。理解してほしい。そんな感じだろ?」

全然子供らしくなくて可愛げが無いが、だいたいその通りだった。…あまりに大人びていて、この子は本当に幼児なのかと疑ってしまう。

まさかとは思うが、外見は幼児、中身は大人…という何かだろうか?


「…それにさ。今、ショウは目が離せない時期が続くし、何よりショウの側に居られるから、すっげー嬉しいっ!!」

と、両手を上げてぴょんぴょん飛び跳ねて喜ぶ姿に、それを目撃したメイドや使用人達はどっきゅーーーーーん!!と、ハートを撃ち抜かれていた。

うちのナナシ様が、可愛すぎるんだが!!


だからこそ、こんな風にたまに見せる幼児らしさが見えた時は、そのギャップに愛らしいとキュンキュンしてしまう。

特に、ショウといる時は大人顔負けな育児をこなしつつ、話しかける内容だったり子育ては思いがけない事のがいきなりやってくるので、パニックになって、たまに「どーーしてぇ?」と泣いちゃう姿など幼児そのもので、そんな姿を見るとホッとする。

ちゃんと、5歳児もしてるなと。

それはさて置いてだ。話は少し逸れてしまったが、ナナシの様なタイプは、言っても聞かない王様気取りの調子こきだ。
弱いものの立場や気持ちは経験しなきゃ分からない、考えられないタイプだと感じ敢えてお婆は心を鬼にしてイジメ問題のある学校を選んだのだ。

そして、ナナシの見えない所で裏で色々動きフォローもしていた。最初こそ気づかなかったが、お婆に言われて人間観察をしていてお婆の並々ならぬ努力とフォローなどにも気付けた。

それがなかったら、お婆の苦労や努力など知る由もなかった。

それどころか、復讐の鬼となっていじめっ子達を生きてる事が辛くなる様な不幸のどん底に落としていただろう。
それも、楽に死ねない様にジワリジワリと時間を掛け痛めつけ最終的に精神崩壊させ壊していただろう。

お婆の一か八かの掛けであったが、ナナシの場合はこれしか思い浮かばなかった。それ以外で、いい方法があったなら良かったのだが。

ナナシが学校へ行くたびに、お婆の心は引き裂かれる様に痛んだし罪悪感から悪夢に項垂れる毎日を送っていたのだ。

そして、お婆のその罪も消えない事だろう。それを背負う覚悟で、いつか大犯罪者になりそうな危険極まりないナナシを真っ当な人間にしようと決めたのだから。


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