イケメン従者とおぶた姫。
幼稚園の事件があってから、ショウの心のケアに為に国最高峰のカウンセラー数名からの治療。そして、愛娘の心のケアの為に、無理矢理休暇をもぎ取りショウの側にいるリュウキ。

ぶっちゃけ、キキョウはそれを面白く思わないが、今すぐリュウキを追い払いたい気持ちをグッと抑えて我慢した。

…だって、一応リュウキはショウの父親だし。リュウキが、ショウの事を唯一無二の宝物の様にとても大切に思ってる事も知っているから。

けれどだ。リュウキが来ると滅多に会えないからか緊張こそするものの、とても嬉しそうにしてリュウキに甘えるショウの姿を見るのは面白くない。かなり、すっっっごく!!

だから、キキョウはリュウキが帰って来るのが凄く嫌だ。その分、ショウとの時間を取られちゃうし…なんか、威風堂々としてるというか威圧感が半端ないし、相当頭が切れるのは見て取れるし色々見透かされてそうで…すっごく苦手なタイプだ。

こんな狸ジジイが、純粋無垢なオレ様の天使ショウの実の父親だなんて信じられないくらい。

周りの奴らの言いたいことは分かる。
時間のないリュウキが、その時間を無理矢理に割いてショウに会いに来てる。親子水入らず二人きりの時間を大切にしたい。させてあげたい。

…分かるけど!オレ様は、周りの言うその僅かな時間でさえ無理!!オレ様の心がショウ不足で持たない。

親子水入らずを邪魔していると図々しいと言われようが、断固としてショウの側から離れないキキョウ。

リュウキを含め周りのメイド達も苦笑いするしかない。そして、仕方ないので、リュウキの来た時だけキキョウに勉強やトレーニングなどハードメニューを与え

その貴重な時間をリュウキはショウと親子水入らずで過ごしている。

寝る時だって、いつもならショウと一緒に寝てるのにリュウキが帰って来るとそれも奪われてしまうのがキキョウにとってすっごく嫌だ。
けど、毎回お婆に説得され泣く泣くキキョウは一人で寝てる。と、いうかショウと一緒でないとイライラして毎回眠れない。

だが、幼稚園の件があった今回は違った。


「ショウには、お前がとても必要だ。今回は特別だ。一緒に寝てくれ。」

と、ショウにとって最善を考えた提案に、キキョウはその意図を汲み取ってしまい渋々その考えに乗った。

だから、リュウキのキングサイズのベットにショウを挟んで川の字で寝る羽目になった。

本当は、ショウと二人きりがいいのだが大好きなキキョウと大好きなリュウキに挟まれ、ショウはとっても嬉しそうだったので…キキョウはそれだけで良しとした。

キキョウやリュウキ、屋敷で働く人達の献身的な支えのおかげで、ショウの心は少しずつ癒えていき

今度は前回の反省を踏まえて、選びに選ばれた幼稚園にショウを入園させる事になった。

前回は、屋敷から近い一般の幼稚園で評判も悪くないという理由で入園を決めた。
とにかく、お嬢様であるショウに“普通、一般的”の感覚を知ってほしくて選んだ幼稚園だった。まさか、こんな事になるとは思わなかったが…完全なるリサーチ不足だったと、リュウキも自分を責めショウに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

だが、前回の件があった為、キキョウはショウの幼稚園行きに大反対、猛反発。

自分の意見が通らない事に憤怒したキキョウは、ショウを連れて逃亡しようとした。
だが、その計画も見事にリュウキに見破られ、リュウキ直々に説得に説得を重ねられ…渋々、承諾せざるを得ない状態まで追い込まれたのだった。

…クソッ!

コイツ、マジでタダモンじゃねー!

オレ様の考えてる事が読める力でも持ってんのかよ、オレ様の心が見えんのかよ!

怖すぎんだろっ!とんでもねーよ。やべーよ、コイツ

ぜってー、敵に回しちゃダメなやつだ

と、キキョウは、リュウキに畏怖を感じた。


そして、いよいよ新しい幼稚園に編入する事となったショウもとっても不安そうで、何度も
“幼稚園は嫌だ。もう、行きたくない。”
と、訴えたが、リュウキに言葉巧みに言いくるめられコロッと騙されたショウは今回はリュウキに抱き抱えられ新たな出発を迎えるのだった。

最初、不安だったキキョウや屋敷で働く人達だったが、元気いっぱいに幼稚園から帰って来るショウの姿を見てホッと肩を撫で下ろしたのだった。

その幼稚園には、遠くから引っ越してきた家族や海外出張中の親が多く、色んな国や地域からやって来る子達。様々な家の事情を抱えた子供達など、幅広く受け入れている幼稚園だった。

もちろん、問題のある子だってたくさんいるが、この幼稚園にはカウンセラーの先生も数人いる他、先生方の献身的なサポートがしっかりなされていた。

そして、不定期にたびたび内部調査も行われるし、先生方への定期的な再教育(学び直し)や研修などにも力を入れている為、必然的に先生方も毎回気を引き締めて仕事しなければならない。

とにかく、ショウが充実した日々を送っている様なので良かった。

もちろん、友達と喧嘩して落ち込んだり怒ってたりもする時だってあるが、それは社会勉強になるレベルの許容範囲内だ。可哀想ではあるが、いい経験だと思う。

でも、やっぱりショウが元気がなかったり悩んでたりすると、キキョウは超絶過保護っぷりを見せて

“幼稚園辞めさせる!”

と、自分の事の様に激昂するのだが。それを見ていて、逆にショウが冷静になって

“…あちた、チィにごめんなちゃいって…あやまるね?よく考えたら、あたちが悪かったから。”

なんて事が、しょっちゅうである。

何故なら、ショウの言っている事をキキョウはゆっくり丁寧に何度も聞き直し、相手はどんな様子だったか?どうして、相手が怒ってしまったのかなど自分の気持ちだけでなく相手側の気持ちも考えるよう促す。

それを繰り返しているうちに

ショウも、どうしてそんな事になったのか自分だけでなく、自分が相手の立場になったらどんな気持ちになるだろう?と、ショウなりによく考える事ができるようだ。

それでも

“ショウが謝る事はない!悪いのはアッチだ!”

と、ショウがどんなに悪い事をしても絶対肯定マンのキキョウを

“チチョウ、もう大丈夫だよ?おちちゅいて。”

そう言って宥めるショウ。二人のこのやり取りに、周りはちょっとだけほっこりだ。

ちょっとっていうのは、キキョウがわざと怒ってるふりをしてショウに色々考えさせて自分から答えを探すよう教育しているのか。
本気で、ショウ絶対肯定マンなのか…分からない所があるからだ。絶対肯定マンは…流石にヤバイ。そう思うから、ちょっとなのだ。

ある意味、ショウとキキョウはいいコンビなのかもしれない。

ーーー

それから更に月日が経ち、ショウが小学ニ年生になった時の話だ。その頃には、キキョウは某有名大学・大学院と飛び級して主席で卒業していた。

そして、世界最年少にて史上初の特S魔道士の称号を得るという偉業を成し遂げてしまった。
今やキキョウは歴代最年少にして史上最高峰の魔道士である。

そして、今まで休む暇なく突っ走ってきたキキョウ。そのせいか、同年代の子供達に比べ、かなり大人び過ぎてる気がする。

このまま、ショウ専属の従者として働いてもらっていいのかと考えた時。やはり、同年代の子供達との接し方や考えなど学んでほしい。
そして、キキョウも年頃だし今の時期しか味わえない青春を思う存分楽しんでほしいという思いから、嫌がるキキョウを何とか説得して中学、高校と通わせる事になった。

高校を卒業したら、キキョウの好きな職に就いていいという条件を出したらキキョウは不満ありありに仕方なく承諾した。

リュウキとキキョウ、お婆の三人でその話し合いをしていた時の事だった。

中学、高校と通う事を約束させ、話し合いも終盤に差し掛かった時の事だ。


「そういえば、ショウと同い年の女の子が年上の悪い彼氏と遊んで妊娠したそうだ。」

と、リュウキは何の前触れもなく、急に妙な話題をふってきた。

そもそも、ショウと同い年って事は誕生日がきたら8才になる女児だ。初潮もまだだろうに、妊娠する訳ないじゃん。馬鹿にしてんの?
これでも、自分は大学院まで卒業してるんだけど?と、キキョウはシラけた顔をしてリュウキをみた。


「俺の職業柄、目を伏せ耳を塞ぎたくなるような話や、気が狂いそうになる話など悍ましくも嫌な話が日々耳に入ってくる事が多い。
初潮が無くても、どんなに幼くても、やる事をやっていれば腹に赤ん坊が宿るという事例は少なくないらしいぞ。」

と、言ってくるからに、どうもキキョウを揶揄っている様に思えない。…しかし、事例があるとか想像するだけで…ゾッとする。考えたくもない。

何故、こんな話を自分にしてきたのかと不審な顔をしてキキョウはリュウキを見る。


「ショウと同い年の女の子の話をしたのは、お前がショウに対してどういった感情を抱いているかハッキリ確かめたいからだ。」

それと、その女の子の話とどう繋がりがあるって言うんだと、キキョウは考えていた。


「キキョウ、お前。ショウが赤ん坊の時から、今もずっとショウに“将来、結婚しような”って、言い続けているらしいが本気か?
少なくとも、ショウはその気になってしまっている。冗談や軽い気持ちなら、もうそんな事を言うのはやめてほしい。」

と、リュウキは言ってきた。
ああ、その事かとキキョウは小さくため息を吐くと


「オレ様は本気だぜ。そういう意味でも、オレ様はショウを愛してる。」

そう断言してきた。そういう意味“でも”かとリュウキは、ショウに対するキキョウの深すぎる愛と執着に気づいていたつもりであったが。
直接その言葉を聞く事で、ショウが自分以外に目が向かないよう必死になってショウに暗示めいた事をしていたのかと思うと少し怖く感じた。


「俺がショウの同い年の女の子の話をしたのは、もし、お前がショウに手を出して妊娠させたらどうする?と、いう話を聞きたかったからだ。無い話じゃないだろ?
なにせ、女の子ってのはマセてる子が多いからな。それに、お前の年頃は性に興味が湧く子が多い。」

と、言ったところでリュウキの言いたい事が分かった気がした。


「オレ様が、今のショウに手を出すとかあり得ねーな。だって、ショウはまだまだ未熟な体だし、心だって幼い。
そんな幼いショウの口から、生々しい性の話とか聞きたくないじゃん。純粋無垢な天使なショウがそんな感じの事言ってきたらオレ様、ショックで立ち直れねーよ?」

…あ〜…これ、恋愛対象の他に、親や兄目線の感情も大きく入ってるな。と、リュウキは苦笑いしている。


「もちろん、ショウの気持ちは尊重するし、ショウに初潮が来たらちゃんと説明もする。
それに、いくら避妊したって出来る時はできるんだ。大学や大学院で、そういうのいっぱい見てきたからさ。
ただの興味本位とか快楽、刺激欲しさだけに、ショウの事を考えればこそ無責任にできねーなって思った。」

…驚いた。最初の頃、キキョウと会った時はコイツは周りに流されやすく、刺激や快楽に貪欲で直ぐに悪さする様になるだろうと思っていた。人を人と思わない王様気質な人間になるだろうと予測していた。

つまり、手のつけられないキチガイになるだろうと。その時は、直ぐに切り捨てようと思っていたのだが。

まさか、前を見据えてしっかりと考える事のできる人間に育つとは。周りに流されない真っ直ぐで強い軸ができている事にも驚く。

…お婆。やっぱり、あなたは素晴らしい人だよ。どうしようもなくなって非行に走ろうとしていた俺を立ち直らせたくらいだけある。

お婆に任せて良かった。そして、恐れ入った。と、リュウキはお婆に感謝するのだった。


「…まあ、ショウが性に興味持ち始めて性欲を持て余してたら、喜んでペッティングはするけどな!最後まではしないけど。
最後まですんのは、お互いに責任持てるようになってからだって考えてる。
…それに、初めてって裂けるくらいイテーんだろ?慣れるまで時間かかるんだろ?
あんな、ちっこい場所に本当に入るの?それ考えたら、可哀想でできねーよ。」


親の前で、堂々とペッティングする発言や、挿入時の話をするのはどうかと思うも、キキョウがどれほど迄に深くショウの事を考え思ってくれているのか、かなり伝わってくる。

そして、性の知識も相当勉強している様だ。そのせいで、可哀想と思ってしまうなんてどこまで過保護なんだか。と、リュウキは
こんなんじゃ、ショウに一生手を出せない可能性も出てきたなと、同じ男として少しキキョウを哀れに感じてしまった。

しかし、リュウキはキキョウに伝えなければなら事があった。

「だが、世の中は広いぞ?今までは、ショウの為にとひたすらに真っ直ぐに突っ走ってきて、視野が狭くなり周りを見る事ができなかっただけかもしれない。
だが、今一度立ち止まって見てほしい。
そして、視野を広げてしっかりと周りが見えてきた時、それでも今と同じ様な事が言えるのであればお前の気持ちを尊重しよう。」

そう、リュウキはキキョウに伝えた。

キキョウの嘘偽りのない誠実な気持ちを真っ直ぐに伝えてきたのだ。その心意気に、こちらもしっかりと受け止めなければならない。

そして、リュウキの中で出た答えがこれだった。

「へえ、意外。全力で止められるかと思ったぜ。」

「まさか。そんな野暮な事はしない。ただ、俺は父親として娘の幸せを考えてるだけだ。
だから、お前が少しでも不誠実な行動を見せたら、この話もなかった事にするだけだしな。」

「無い話をありがとうございます。近い未来のお義父さん。」

「まだ、“お義父さん”と呼ばれる筋合いはないがな。」

「じゃあ、“オヤジ”って呼べばいいか?」

「…ハハ。随分、躾のなってないお子様だ。
それに、俺はお前の父親になった覚えはないが?そもそもの問題、ショウの気持ちはどうなんだ?」

「いやいや、意地はんなよ。もう、オレ様をショウの婿として認めたと同じだろ。
あと、聞いて驚け!ショウもオレ様の事、“王子様みたい”って、ベタ惚れしてるから両思いだし問題ねー。」

「フン!独りよがりもいい所だな。
まだ、認めてはない。あと王子様じゃなくて“女王様”の間違いじゃないか?
中性的な容姿って言えば響きはいいが、お前はどこをどう見たって女にしか見えない。
…は。それに、ショウと両思いというが、ショウのソレは恋愛感情か?単なる憧れの可能性だってあるだろ。勝手に一人で暴走してくれるな、お子様。」

「…は?…んだとっ!?…お、女ぁっ!!?このクソジジィーーーッッ!それ、めっちゃ地雷だかんなっ!マジ、地雷っ!!
あと、独りよがりなんかじゃねーし!ちゃんと想いあってるし!テメェー…マジ、ムカツクッッッ!!!」

と、何故かバチバチと火花を散らして喧嘩に発展していたが、お婆は素知らぬ顔で茶を啜っていた。

「なんだかんだで、似たもの同士。気が合いましゅな。ヒョヒョヒョ!」

「「どこが(だ)っ!!?」」

「タイミングもバッチリで、お婆はビックリしゅ。ヒョヒョヒョ!」

「…グッ!このクソババアっ!!?」

「こんなクソ餓鬼と一緒にしないでほしいな、お婆。」

「ヒョヒョヒョ!」


結局のところ、キキョウは中学、高校似たような悩み(恋愛)や根本的な考えが似たような親友もできたようだし、口は悪いし態度はデカイが明るくたまに見せる優しさもあってか友達も結構たくさんいるっぽい、なんだかんだで楽しく過ごしている様だ。

その様子を見て、中高と通わせ本当に良かったと思うリュウキとお婆であった。

そして、周りの子達の話をうっすら耳にしたらしく性に興味を持ち始めたショウに戸惑い


「…は?今時の子供はマセ過ぎかよ!?」

お前らみんな、ビッチか!

オレ様の天使に何て事聞かせんだ!!

…最悪だ…

と、驚きを隠せず、心の中でおマセなショウの同級生に悪態をついていた。そんなキキョウをキョトーンと首を傾げながら、言葉だけで意味が分かってないショウは不思議そうな顔をして無垢な顔を向けてきた。

…やべー!

性について話すのは、まだまだ先の話だと思ってた

意味は分かって無くても、こんな早くから言葉だけは知ってしまうんだなぁ〜
…うわぁ、…周りの影響って、怖ぇーーー…

でも、ここでしっかり教えとかねーと、中途半端な事だけ覚えちまったら興味だけが先走って大変な事態を起こす事になりなねない

オレ様のショウに限って、そんな事はねーだろうけど

しっかり、教えねーと変なのに巻き込まれでもしたら大変だ

と、秒コンマの短い時間でキキョウはそう判断し、正しい性の知識をショウに分かりやすく説明した。

「…いや、あ…えっと!…あ、あのな…」

そして、最終的にはリュウキに話した内容をショウにも分かりやすく噛み砕いて説明した。

性の意味を知り、キキョウの考えを聞いたショウは茹で蛸のように真っ赤か。そんなショウを見て、キキョウも妙に緊張してしまって、全身がカーーーッと熱くなり真っ赤かだ。

キキョウの肌は真っ黒いから、ショウはその事は分からないが、物心つく頃からずぅーーーっと一緒にいるキキョウなので、すっごく体温が高くなってる。とっても恥ずかしがっているっていう事だけは分かった。

キキョウも自分とおんなじ気持ちなんだと思ったら、なんだかくすぐったい気持ちになる。

だから思わず「…んふふっ!」と、両手で口元を押さえ小さく笑うショウに、キキョウもくすぐったいような歯がゆいような気持ちになってちょっと照れ笑いしていた。


それから、キキョウとショウは個々の差はあれど、順調に成長していきショウ12才、キキョウ17才となっていた。

その頃には、二人はリュウキでさえ認めざる得ないみんなが公認する恋人になっていた。
ショウとキキョウは、ショウが性をしたあの日から恋人になっていたし報告だってしたが。

リュウキが「まだ早い!」と言って反対した為、リュウキが認める…いや、覚悟できるそれまで非公認の恋人でいるしかなかったのだ。


と、ここで

【もしも、サクラの生い立ちが、ダリアバージョンだったら〜主人と専属従者〜】


対象者が、設定人物サクラと同い年の年齢まできたので、もしもの世界を終了します。

機械音で、そんなアナウンスが流れた。


ーーーヘイマクーーー


そこで、ショウとダリアは目を覚ました。

そして、それを見ていたオブシディアンは


『今回の“もしもの世界”は、是非とも王様にも見てもらいたいような内容でした。』

と、リュウキに言葉飛ばしで報告し、それにはフウライも大きく頷いていた。

人は生まれながらに、元々の本質というものを持っているのだろうが。
この、“もしもの世界”を見て感じたのが“育つ環境や周りの人達”次第で、こんなにも違うのか変われるものなのかという事。

もしもの世界でのダリア(キキョウ)は、サクラやリュウキから聞いていたダリアという人物と同じ人物とは思えなかった。もはや、別人である。

それくらいに、違っていた…いや、環境や周りの人達の支えなどにより変わる事ができたのだ。心の成長が大きく育っていき、心の進化を成し遂げたと言っても過言ではないだろう。

そんな風に感じ、目を見張るような内容だった。


目の覚めたダリアも何やら考え込んでしまっているようだ。

ショウは、現実と夢の境を見失って混乱している。混乱するショウに、いち早く気が付いたダリアはショウに寄り添うように近づき


“…さっきのは夢だよ。…色々、ごめんね。”

と、言ってショウを抱きしめようとするが触れられず。その事を思い出すと


“…そっか…、そうだよな。”

寂しそうに呟いた。すると


「…キキョウ?大丈夫?」

と、ダリアを心配そうに見つめ抱きしめようとするショウの姿があった。もちろん、今のダリアには実態がない為触れる事などできないが、ショウはそれでもダリアを腕の中に包みこむ様な仕草をした。

ショウの優しさが伝わってくる様で、ダリアはグッと胸に込み上げてくるものを感じ泣いた。泣けないが、きっと実態があれば見っともないくらいに泣いているだろう。

そして、ショウの胸の中に包まれながらダリアは言った。


“…おい、オブシディアンと【親友のフウライ】。オレ様の一部…いや、サクラに伝えろ。
お婆に感謝しろってな。”

その言葉に驚く二人。

ダリアの言う“親友”とは、“もしもの世界”でキキョウが中学校、高校と親友だったのが、何を隠そうフウライともう一人だったのだから。

もしもの世界の映像を見ていたフウライは、とても複雑で不思議な気持ちになっていた。

まさか、サクラと同じ感じになるとは、と。

と、言うのも、フウライは高校でサクラと知り合い、色々とキッカケがあり数少ない友達になったのだ。親友と言っても差し支えない友達だと思っている。

だが、ダリア…キキョウとは、中学校から一緒で気のおけない大親友になっている。キッカケもけっこうサクラと似ていた。

この偶然に、最初フウライは“もしも玉の設定のせい”かと疑ったが、直ぐに違うと感じた。

そこで、思い出すのはダリアの言った言葉。

“オレ様の一部”

どうも、この言葉が引っかかる。


「サクラが、ダリアの一部?」

と、フウライは答えてくれるか分からない質問をダリアに投げかけてみた。

すると
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