イケメン従者とおぶた姫。
ダリアがショウと会話していた、その頃。


サクラ達は、ショウ達のいる宿からさほど離れていない広場へ来ていた。

そこで、リュウキは“もしもの世界”でのダリアの内容を聞き、更に“ 今回の“もしもの世界”は、是非とも王様にも見てもらいたいような内容でした。”と、いうオブシディアンの強い言葉に、少し思う事があった。

そして、リュウキは今回の内容をその場に居るみんなに話した。その内容には、みんな驚きを隠せない様だった。
あと、お婆の凄さを知りそんなに凄い人だったなんてと驚くばかりだ。驚きを隠せない面々を見てリュウキも少し苦笑いする。

次にリュウキは、サクラを見ると


「あと、サクラ。ダリアからの伝言だ。
“お婆に、感謝しろ”だそうだ。」

と、伝えた。リュウキの言葉に、サクラの肩がピクリと小さく跳ねた。どうやら、自分でも思い当たる節があるらしい。

「それに、お前…この世界の者ではない事は少し知っていたが。まさか、幻の国、空の王国の王子だったとはな。少しばかり驚いた。
お前も、幻の国とこちらの世界に行き来できる鍵を盗んだのか?」

そう聞くリュウキに、サクラは少し観念したように溜め息をつくと(とても嫌そうに)

「……まあ、そんな感じだ。…だが、ダリアの様に胎児でありながら、自分の力を隠したり力の匙加減をコントロールするなんて芸当もできるわけがねぇ。それを胎児でやっちまうとか…マジの化け物じゃねーか。
だから、俺の場合は当たり前だが自分の力をコントロールできる訳もなく、俺の力を恐れた“一部の大人達”によって生まれて直ぐに封印の間に閉じ込められた。」

と、サクラから衝撃の話が飛び出してきた。

「ここで、俺の魔力が飛び抜けていたら“何かの養分”される予定だったらしいが、俺の魔力は優秀ってだけで恐れるほど飛び抜けたものじゃなかったらしい。
だが、俺は特別“波動”が飛び抜けていたらしく、魔力ではないが何か役に立つ事があるんじゃないかと念の為に封印の間に閉じ込めておいたみたいだ。」

サクラの“養分”という言葉に、リュウキはドクンッ!と、心臓が止まる思いがした。まさか…と、自分の妻であるアクアの顔が浮かぶ。

…何の為に?


「養分?養分って、栄養の事だよね?何の養分にする為にサクラを部屋に閉じ込めたんだい?
そもそも、どうして部屋に閉じ込める必要があったのかも分からないねぇ?」

と、ハナはない頭を振り絞って考えていた。

「残念だが、そこまでは俺も分からない。
ただ、魔力量が成長しきって安定した年になるまで、逃げられないように魔力を封じる部屋に閉じ込めて余分な知識をつけないよう、余計な感情が芽生えないように外との交流は一切遮断するらしい。
ただ、しっかりとした養分に育てる為に、健康管理は徹底していたな。」

…ドクン、ドクン…!

似てる…アクアが話してくれた内容に、よく似ている

と、リュウキはアクアと出会った当時を思い出し胸糞悪い思いが蒸し返してきた。
サクラの話を聞いたハナ達も、何故同じ人なのにそんな酷い恐ろしい真似ができるのか。そいつらには、人の心は無いのかと身の毛もよだつほどゾッとした。


「しかし、周りの大人達には誤算があった。
それは、そもそも俺が魔導はそこまで得意ではない。だから、魔導を封じる部屋に閉じ込めた所で俺にはさほど意味ない。なにせ、俺は魔導より波動の方が断然得意なんだからな。

そして、もう一つ。俺は所々欠けてるとはいえ前世と前々世の記憶があった。だから、その時に培った知識や感情が備わってたって事だ。」

ここまで聞いても、幻の国の事やサクラに対してまだまだ謎は多い。

「サクラ。特殊な部屋に閉じ込められ、外との世界を遮断されてるはずのお前が、何故、“何かの養分”だとか、“彼方とこちらを行き来できる鍵”の存在を知っているんだ?そして、どうしてお前が5才のタイミングで逃げ出したんだ?」

と、リュウキは不自然な点を指摘すると


「…テメェら、少し俺が大人しくしてるからって調子乗ってんじゃねーぞ。」

みんなの視線がこちらに向き注目されてる事と、ここぞとばかりの質問責めにサクラはイライラを隠しきれず、綺麗な顔に不釣り合いに眉間にグシャッと深い皺を寄せ額には青筋が浮かび上がっている。

柄付きの悪いゴロツキそのものである。

その様子を見て、ハナ達はサクラの豹変ぶりに同一人物かと疑うほど驚き、リュウキは


…確かに言われてみればだが、性格がダリアに似てる部分が多いな

態度がでかく粗暴な所がよく似てる

だが、ショウの前では猫被りもいい所だ
それはそれはとても優しい度の過ぎる過保護な紳士に大変身だからな

サクラの本性をショウにも見せてやりたいくらいだ。こんな男だぞ?いいのか?ってな

サクラにはこの二面性があり、それが後々ショウに大きな弊害を及ぼすのではないかと危惧して、ショウとサクラを引き離そうと考えていたのだが…

最近、色々あり…ショウに対するサクラの行動は素だって事も分かってしまった

つまり、サクラは二面性があるという訳ではなく、単に嘘のつけない不器用な性格だった
ある意味、素直過ぎる性格とでも言えばいいのか…

…ハア。その不器用な性格を隠す事を知らないと大人になり社会へ出た時どうかと思うぞ?
社会へ出る上で、社交辞令やよそ行きの顔も覚えておかなければ社会では生きづらい

世渡り上手な所と演技力などは、全部ダリアに持っていかれたかぁ〜〜…いや、元々はサクラは、ダリアの一部なんだ。そこを考えれば、当たり前と言えば当たり前なんだが

仕方ないとはいえ、ダリアはいい所どりだな。ダリアが持ってない数少ないものをサクラは持っているという所か?

それに、こんな感じでもまともな“人”になれたって、どんだけだよ、サクラ…

実はダリアより、お前の方が要注意人物、危険人物だったんじゃないのか?

だが、サクラは悪魔やバーサーカーになる事を回避し人になる事ができた

素晴らしく喜ばしい事ではあるが、サクラはほぼほぼの確率で悪魔かバーサーカーになっていたと聞くとゾッとするな

サクラが、人の心を持てて本当に良かった

それを知った今では、お婆は流石としか言いようがない。お婆は、我が国が誇る称賛するに値する素晴らしい人物だ

お婆がいなかったらと思うと…ゾッとするな

…だがなぁ、社会生活を考えれば…

ハァァ〜〜…

と、サクラの性格について考えれば考えるほど、リュウキは心の中で大きく頭を抱え深ぁぁ〜〜〜い溜め息をつくのだった。

だが、サクラが“ダリアの一部だった”という事は、今の段階ではまだ誰にも話していない。

この話はあまりにデリケートな話なので、本人にさえいつ伝えればいいのか、どうやって伝えるべきか。
また、このまま伝えない方がいいのか悩む所だが…サクラのダリアの嫌い様を見ていれば伝えない方がいいと感じる。

サクラがダリアの一部だと知った時のサクラの精神状態があまりにも不安だ。…いや、不安を通り越して怖い。


…しかし、ダリアの決断が以外だったな

と、オブシディアンから、ダリアの決断とその後について報告を受け、これがダリアにとっての最善だろうとホッとした気持ちもあったが、反面これで良かったのだろうかと、気の毒な気持ちも混じり複雑な気持ちに苛まれていた。

この時、何故かロゼはどんどん魔力が吸い取られてる事に気付き


「…ニャッ…!我の魔力が…誰かに吸い取られちょる!?」

と、驚き慌てているところに


「…向こうで少々問題が起きたらしくロゼの力が必要になったらしい。勝手だが、“ショウの為”に魔力を少々分けてもらっているようだ。
…勝手に、すまないな。」

なんて、リュウキは申し訳無さそうに、キキョウに勝手に都合良く魔力を使われるロゼを気の毒に思い苦笑いしていた。

もちろん、勝手に魔力を使われたロゼはプンプン怒っていた。ロゼの魔力を勝手に使えるとしたら奴しかいないので尚更だ。
だが、ショウの為と言われると…仕方ないという気持ちになる。

…しかし、少々と言った癖にめちゃくちゃ魔力を吸い取ってるじゃないかと抗議しつつ、遠慮なしにどんどん魔力を吸い取られるロゼはグッタリとした体をサクラの頭の上で休ませていた。

そんなロゼに「だから何故、俺の頭の上なんだ!?」と、キレるサクラだが振り払う様子はない。

そんな様子を見て、(いつの間にこんなに仲良くなったんだ、この二人は)とリュウキは苦笑いした。そして

…ショウに関して“国に登録”しなければならない事ができてしまったな

と、様々に複雑な気持ちを抱えながら

「これから、お前達に伝えなければならない事がある。」

と、リュウキは至極真面目にサクラ達に話しかけた。この様子から只事ではないと感じた面々はリュウキに注目する。

「サクラとロゼ、オブシディアン、そして、シープは、ヨウコウ一行から離脱しショウと共に“残りダリアの魂”を見つけ出しダリアを復活させる事を命ずる。」

その言葉に、ここに居る面々に大きな衝撃が走る。

「…正気か?」

「…あ、あり得ぬ!あの様な恐ろしい化け物は、このまま封じたまま二度と出て来られぬよう手を打たねばならんじゃろ!!」

「絶ッッ対、駄目だ!!あり得ねー!
年取り過ぎてボケてしまったのか、クソヤロー!!あんな外道をこの世に放つなんて正気の沙汰じゃねー!!」

「…ダリアって、誰だよ!!」

「そうか、分かった。」

こうなると想像はしていたが、物凄い勢いで大抗議されてしまった。みんな鬼気迫る形相でリュウキを見てくる。(ハナとルナ以外※ルナはダリアの存在を知らないからだが)

…そりゃそうだと、リュウキは苦笑いする。


「まあ、聞け。」

と、リュウキが一言言っただけで、みんなグッと言葉が引っ込み何も言えなくなってしまった。リュウキの王たる威厳と絶対的覇気にみんなカチンと固まり身動き出来なくなってしまったのだ。
我が強い面々をたった一言で制止させたリュウキは流石と言える。

「今、フウライとオブシディアンから、ダリアに関しての問題は無事に解決したと報告があった。だから、ダリアが我々に危害を加える危険性はなくなった。」

そうリュウキから、伝えられるもダリアを知ってる者や直接対面した者は、とてもじゃないが信じられない気持ちしかなかった。


「おそらく、ダリアを知ってる者は信じる事ができないだろう。だが、これは紛れもないな事実だ。証拠に、ダリアはダリアの名を捨てた。」

それは、どういう事なのか、何を意味するのか分からずみんな困惑している。ただ、リュウキの話を聞かなければ分からない事なので、口を出したい気持ちを抑え黙って聞いている。

「元々、“ダリア”という名前は奴の本名ではない。奴は真名どころか本名さえ、天以外の者に呼ばれる事を嫌い周りには偽名で名乗っていたそうだ。その偽名こそが“ダリア”。」

と、言う事実にサクラ以外、驚きが隠せずいた。ロゼも真名を隠すのは分かるが、偽名まで使って天以外に本名を呼ばせないというダリアの徹底ぶりに、そこまで天が大事ならば何故に今の今まで…と、何とも複雑な気持ちになる。

「奴の本名は“桔梗(ききょう)”。そして、つい先ほど、ショウと正式な契約を交わしショウの召喚従“アイビー”となった。」

と、言うリュウキの言葉に、みんな???である。召喚獣ならぬ、召喚従?なんだ、それは?だ。そもそも、何がどうなってそうなった?分からない事だらけである。

「詳細は、本人達のプライバシーもある為全ては言えないが、現在我々は異世界から来る“鬼”の問題に直面している。鬼は、この世界の強者達全てが結束したところで歯が立たないどころか瞬殺されるだろう。
そうだな。例えば、人間対宇宙くらい力の差がある。」

と、言った所で実際に鬼と対面したサクラとロゼ以外みんな、信じられないとばかりに驚愕に満ちた表情をしていた。
あまりに未知すぎる例えにあまりピンとこない。それに、そんな未知数の相手にどうやって渡り合うというのか。

「そこで、必要になってくるのがこの世界最強であろう魔道士ダリアの存在だ。奴は、今、魂と体という器が無く力や能力が散らばり不安定な状態。まとまりのない存在としてショウの中にいる。」

今のダリアは魂という器に収まってない為に、意識や力など何もかもが散漫になりフニャフニャで上手くまとめる事ができない。

例えるなら…少し違うかもしれないが
今のダリアは、色んなモノがごちゃ混ぜの散らかり放題で足の踏み場も無いゴミ屋敷状態。そのせいで、上手く身動きできないし何が何処にあるのか把握できてない。
それを綺麗に、まとめ収納するのが魂といった所だろうか?

「まず、それを一つにまとめコントロールできる魂が必要だ。
自由自在に動く事ができる実体は何処にあるか把握できているから良しとする。それらを一つにしてダリアを復活させる。
鬼に対抗できるのは、残念ながら今思い当たる人物はダリアしかいない。」

と、言った所で


「……クソがっ!!なんで、あんな外道に頼らなきゃなんねーんだよ。もっと、他にないのか!?信用できねーだろ、あんなクソクズ!!」

やはりというか、サクラがせっかくの美しい顔を思いっきり歪めて猛反発してきた。

「断言する。ダリアを中心に動いてもらわなければ、鬼の気分一つでこの世界は終わる。」

と、リュウキは無表情でゾッとする言葉を放った。その言葉に、みんなゴクリと生唾を飲み固まる。しかし、ここまできても往生際の悪い奴がいた。リュウキが、みんなを説得している間にも、サクラ一人がずっとリュウキに意義を唱え暴言を吐いていた。

「あのクソクズヤローに頼るなんて絶対嫌だ!断固反対だ。他に何かいい案があるだろっ!!」

あまりの往生際の悪さと、止まる事のない反論。サクラ自身も頭では分かってるが、心が納得できず反論という名の暴言が止まらない。自分でも止める事ができずいたのだ。

その時だった。


「サクラーーーッッ!!!」

と、普段声を荒げる事のないリュウキが一喝した。その凄みと威圧感にサクラは一瞬、暴風に吹き飛ばされそうになった感覚に陥り、全身は雷に打たれたようにビリビリと痺れ畏敬の念からピタッと体が硬直し声も引っ込んだ。

よくリュウキを見れば、意図せずリュウキは両手に握り拳を作り何かを耐えるようにワナワナと小刻みに震えている。リュウキもこの命令は自分でもかなり抵抗がある事が分かる。
それからは流石のサクラも何も言う事ができずグッと言葉を詰まらせていた。

魔道に絶対的な自信のあるロゼも、あの鬼を目の前に何もできなかった事を思えばとても悔しいがダリアの力を借りる他ないと感じていた。とてもとても嫌だが。だから、サクラが抗議したくなる気持ちは痛いほど分かる。
分かるが、世界が終わってしまっては元も子もない。ここは我慢の時なのだ。


リュウキは、もう一つの報告で“もしもの世界で生まれてしまった、もう一人のショウ”の存在を知り頭が痛くなった。

…これは、双子として育てたらいいのか?ショウは愛しているが、果たしてもう一人できてしまったショウも同じ様に愛する事ができるのか?

…いや、ちょっと待てよ?ちょうどいいのかもしれない。片方はサクラに、もう片方はロゼに…とは、ならないな

人の心は、単純であり簡単じゃない

さて、どうしようものかと一瞬の内でそんな都合のいい少し馬鹿げた事を考え直ぐに否定した。


ダリアとフウライ、オブシディアン、世界屈指の頭脳の持ち主達が話し合い考えた末に
“もう一人のショウ”が、できてしまったのは“未完成なもしも玉”の副作用という答えに行き着いたようだ。

時間が経てば消えてしまう生命体。ショウの気持ち一つで絶命する命…そう、命ができてしまったのだ。まだ、ショウの中で実態を持たないフニャフニャしたモノらしいが。

その生命体はショウの一部であり、今はまだ眠っている状態だという。しっかりと、“新たにできたパラレルワールド(自分のいるべき世界)”へ行くと目が覚めるらしい。
ショウの一部はどうもこの世界の気が合わず、眠る事で自分の生命を守っているようだ。

まさか、こんな事になるとは想像もしてなかったリュウキは、次から次へと問題が出てくると頭を抱えている。

だが、理由はなんであれ生まれた罪のない命を消そうなど思えない。
いや、あってはならない。その考えは、ダリアも同じだったらしい。

そこで出したダリアの答えは

“新たに生まれたパラレルワールドで、ショウの一部と共に暮らす”事だった。

と、いうのも“もしも玉”を使い、その世界がショウの記憶に強く残ってしまった為に、もう一つの世界(パラレルワールド)ができたらしい。
その世界には、たった今生まれたばかりの別のショウが居るべき場所。

そして、素のショウが一大事になった時
ダリアはショウの召喚従としてショウを助けたいと申し出たのだ。

ダリアは言った。自分は欲張りだから新たにできたパラレルワールドのショウも、素のショウもどちらも欲しいのだと。例え、ダリアがパラレルワールドへ行き、こちらの記憶が消えてしまおうとも。

それに、素のショウが消えれば全てのパラレルワールドのショウも消える。そもそも、こちらの世界が“正道”でこの世界から色々と枝分かれして数え切れない程多くのパラレルワールドが存在している。

だから、この世界からキキョウが居なくなれば、この世界には現在この世界で最強であろうキキョウという存在はいなくなる。

だから、今回の様に“鬼”の様なイレギュラーが現れた時、ショウのピンチの時に最強の存在が消えてしまっては少しも太刀打ちできなくなってしまう。それだけは避けたい。

そして、今回の“もしも玉、もしもの世界”の記憶はショウから消す事になった。理由は、サクラとロゼにある。

ショウの記憶や心の中に“もしもの体験”とはいえ“恋人のキキョウ”の存在がある。
それは現実ではないにしろ、二人にとって面白くない話でそれが二人にどのような影響を及ぼすか予測不能だからだ。

少なくともダリアは、天守剣盾だった頃のダリアの一部からできたサクラの考えや行動は少々予想ができるようで、そんなダリアが絶対にダメだと念を押す程なのでかなりヤバイ事なのだろう。


という事で、リュウキの意見や話を交えながら話がまとまった。

この話も、サクラ達に話す必要はないだろう。

むしろ、聞かせられない、知られてはいけない。こんな話をしたら、手がつけられないほど面倒な事になりそうなので。

だから、敢えて詳しい詳細は知らせず

“キキョウは心を入れ替え、ショウの召喚従になった”

と、だけ伝えたのだ。

そこで、少し話が落ち着いた所でリュウキは、オブシディアンから驚くべき提案をされた。

まさか、オブシディアンからこんな提案を出されるとは考えもしなかったリュウキは、オブシディアンが責任を持つならいいとそれを許可した。

だが、それに対してサクラとロゼはとても嫌な顔をしていた。この二人の気持ちはよく分かる。特にシープはカンカンに怒っている。だが、シープに関しては…何故お前が怒るんだと疑問が湧く。


ちなみにだが

たった今できたばかりのパラレルワールド。
その世界にキキョウともう一人のショウは、その世界の親から肉体を授かり赤ちゃんからやり直す事になるらしい。

その世界のショウは魂など何もかもが誕生したてのホヤホヤ。いや、その世界全てがそうなのであろう。

そこで、キキョウは新たなキキョウとして新しい一歩を踏み出す事になる。

…がんばれ。そして、今度こそ幸せになれとリュウキは願うばかりだ。


ここからは余談になるが

そのパラレルワールドではサクラもロゼも存在しない世界なのだとか。
そして、天や天守という存在もない。その代わりになる何かはあるようだが何かは分からない。それに、こちらの世界では考えられない事も多々あるようで、それが何かまでは把握できない。未知なる世界である。

そして、何故この世界でダリアの魂と肉体を一つにする必要性があるのか。それは、この世界のショウの召喚従として力を使う事が必要になる為。

もう、決まった事。

キキョウは、もはや新しく誕生したパラレルワールドの人間であり、こちらの世界の人間ではなくなるのだ。

だが、今までエリス(通称エリー、真名ミア)を散々傷つけてきた罪は重い。ダリアの罪は永遠に消える事はない。

そのケジメとして、ダリアは新たに生まれ変わりこちらのショウとは決別するという苦渋の決断をした。

そして、せめてもの罪滅ぼしと
ショウの前々世のミア(エリス)、前々のアイルへの過剰過ぎる愛と想い、依存性をこの世界のダリア、本名キキョウ、真名アイビーの力と体をショウの為の召喚従とした。

ダリアは元々こちらの人間。中身が、抜けてしまっても、その存在がいたという事実は残るし、肉体や“中身のない魂”はこの世界にある。

それを消そうと思えば消せるが、鬼というイレギュラーが現れた今、この世界最強の力をもつダリアを無くすのは惜しいし大打撃である。

それに、これは鬼に限った事ではない。
いつ、またこの様なイレギュラーが起こるか分からない。

そして大問題は、ショウには自分自身の身を守る術がない事だ。その為の天守ではあるが、やはりこの世界最強の力を無くすのは惜しいし、もしもの為の強力な保険がほしい。

ならば、この世界最強のダリアの力や能力をショウに与えればいい。
だが、単にダリアの力や能力をショウに与えてはダリアの力や能力に耐え切れずショウの体と魂は木っ端微塵は確実。

つまり、ショウが消滅してしまう。

それにダリアの力や能力は偉大な為、ダリアに次ぐ大魔道士のロゼでさえ、ダリアの力を貰い受ける事はできないし扱う事すら不可能。
それに、相性という問題や色々と複雑で面倒な事が多い。

ただ、この世でたった一人ショウだけがダリアの力を扱う事ができるし貰い受ける事ができる唯一の存在。
だが…残念な事に、先程も言ったようにショウの魂や体が耐え切れないのだ。

だとしたら、ダリアの力や能力に耐え得るダリアの魂と体を使えばいい。そして、それをショウが操り扱えばいい。

そういう理由から、召喚従という案が出て今に至るのだ。

だが、その為にはダリアの空っぽの魂と体を一つにしなければならない。そこで初めて、ソレはショウの召喚従として動く事ができるのだ。

今はショウと正式な契約を交わしただけで、召喚従は魂と体が封じられ身動きる状態ではない。

…え?何で、魂が空っぽかって?

だって、中身はダリアなので、そのダリアがいなければ空っぽなのは当たり前である。

そして、最後にダリアは念の為に召喚従となった元自分の体に、オブシディアンとフウライ、(そして、無断で勝手にロゼの魔力も使い)の力を借りて性別を無くす術を施したのだった。

それに、これからダリアは新たな新天地で新たに生まれ変わり生きていくのだから。
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