イケメン従者とおぶた姫。
参った…面倒な事になったとサクラやオブシディアン達は思った。


ここは、火の精霊王国の地方警察署、取調室。そこに、オブシディアン、ゴウラン、シープはいた。

そこで、オブシディアンは代表して


『旅をしていたら、いつの間にかここに来ていた。』

と、説明した。なにせ、空の精霊王国城から表・裏の世界を行き来できる鍵で来たなんて言ったら即、お縄になってしまうだろう。

だから、あくまで自分達は空間の歪みから迷い込んだ哀れな迷い人だとした方が無難と思いそう説明した。

この世界の者でないゴウランとシープは言葉が通じないのに、オブシディアンはテレパシーの様なもので直接脳に話しかけてくるので会話が成立している。

『一緒にいた、二人とはこの世界に迷い込んだ時に知り合い、世界中を旅しているという二人の好意で一緒に旅をして元の世界に戻る方法を探している。』

と、伝えた。

オブシディアンの話には信憑性があり、警官達も

「大変だったね。君達の他にもね、本当にごく稀な事だけど裏の世界から迷い込む人達もいるんだよ。」

「迷い人が安全に元の世界に戻るのは…残念ながら難しい話だ。ここに迷い込んだ裏の世界の人達は、本当に稀で…その人達がどうなったのか、どう過ごしたか分からない。」

「ただ、君達は被害者なのには変わりない!
他の国では、裏の世界からの迷い人を邪険にしたり研究材料にしたりと随分と酷い扱いをしたがる輩も多いと聞く!
だが、我が国、火の精霊王国は断じてそんな非道な真似はしない。安心してくれ!」

「種族は違えど、同じく生きている生命だと我々の国は認識している。」


と、いうやり取りを経て


ー今現在ー、ショウ達は火の精霊城にて、火の精霊王と話し合い中である。

そして、オブシディアンが警官に説明した様な内容を火の精霊王に話した。


「…フーン?三人が、裏の世界の住人らしい話は分かったが。そこの空の住人は、王族しか持ち得ない純粋な波動を感じる。」

と、炎の様な髪と目の色をした、褐色肌の男が立っていた。髪は風も吹いていないのにゆらゆらと火のように揺らめいている。そして、瞳孔が炎の形をしてこれもまたゆらゆら揺らめいていて、どうなってるのか不思議だ。

火の精霊王は鍛え上げられた肉体を存分に披露できる様な露出の多い高級な衣服を身にまとっている。衣服や厳ついアクセサリーには火や炎を模した形をしていてた。

野性味溢れる容姿のこの男は、サクラをじっと見てそう発言した。

その言葉に内心サクラはドキリとしたが、いつも通り平静を装い知らないふりを決め込んだ。

「…それに、おかしいのはそこの子供だ。
パッと見た感じ火の住人に見えるが、その肌に浮き出ている紋様。それは、“王”にしか与えられない証だ。王になりすまそうと、同じ様なタトゥーを入れようとしても消えて無くなる。だから、偽物を作る事は不可能。そして、王は一人しか選ばれない。」


その言葉に、みんな…え!?と、思いショウを見た。
ショウは、もちろん何で自分がこんなに注目されているのか分からず、何だか怖くなって俯いてしまった。

「今なら許す。嘘偽りなく正直に話せ。」

と、見透かす様な目で一同を見てきた。その威圧感は半端なく、ショウは怖くてガタガタ震えて今にも泣きそうになっていた。

ゴウランやシープもまた、恐怖ですくみ上がっている。

これはマズイと判断したオブシディアンは、このままでは自分達はただでは済まないだろう事を肌でヒシヒシと感じ、自分達が話して差し支えないよう嘘はつかないが隠す所は隠しこれまでの経緯を話した。

まず、裏の世界(自分達の住んでいる世界)の王位継承権を得る旅へ出ていた事。
途中、この宇宙を滅ぼそうとする規格外な強さを持つ鬼に遭遇。その鬼に対抗する力を得るべく、それぞれ修行へ出ている事。

その中で、力の持たないショウだったが運良く“特定の召喚従”を召喚する能力を得た。
しかし、その召喚従を召喚するには各地に散らばる召喚従の魂と肉体を見つけ出し一つにしなければならない。
この召喚従を味方につけられれば、大分状況が変わり鬼と同等に渡り合える希望がある。

そういう趣旨を伝えた。

その話を聞き、火の精霊王は難しい顔をしながら何かを考えているようだった。

それから、少しの間ショウの顔をジッと見ながら

「……自分の推測が正しければ…信じがたいが……」

と、何か難しい顔をして頭を捻り

「…自分一人では判断が難しい。ここは、闇の精霊王にでも相談してみるか。」

そう判断しオブシディアン達は“闇の精霊王”と聞き、またこの世界の重鎮が増えてしまうのか。何故だ?

何故、ショウに対してこうも慎重になっているんだ。

そう、不安がるオブシディアン達に


「なに、心配するな。ただの“確認”だ。お前たちの悪いようにはしない。今、闇の精霊王から許可を得た。自分では、とてもではないが判断が難しい。だから、精霊王随一の知性を持つ闇の精霊王にお前達を連れて相談にいく。」

そう言った瞬間、みんな一瞬炎に包まれたかと思えば、見知らぬ暗闇にいた。
だが、薄っすら灯りもついていてまるで星や月がふんだんに出て輝いてる夜を思わせる。だから、人結構ハッキリと姿形、色までもが分かる。

灯りも、花やキノコ、空に浮かぶ大中小の星で川も波が虹色に輝いているし、薄っすら光る石もあるので暗いには暗いが真っ暗闇とは違う。

例えるなら、偏見で申し訳ない…水晶を操る占い師の部屋の様な少し怪しい雰囲気がある。


「久しぶりに来たな。闇の国は、これで真っ昼間だ。夜になれば、本当に真っ暗で何も見えなくなる。」

と、いう炎の精霊王の言葉にみんな驚く。

…え!?

じゃあ、夜はどうやって生活してるの?やっぱり、電気を通して灯りをつけてるのかな?

なんて疑問に思っていると

「だが、闇の精霊達はそれに特化しているから暗闇だろうが、光が無くても色形もハッキリ見えるらしいから何の問題もなく生活できるらしい。」

そんな、衝撃発言が飛び出してきた。驚きでしかない。


いや、その前に誰に触れる事もなく、目的の人物だけ結構人数も多いと思うのだがショウ達5人と炎の精霊王、そして炎の精霊王の側近が二人と計八人を何の詠唱もなく触れる事もなく最も簡単にワープ(瞬間移動)して見せたのだ。

こんな高度な魔導を容易く…一体、火の精霊王…いや、精霊王という立場の方々はどれだけの力を持っているのか。未知すぎて、頭が追いつかない。

ワープの事や、見たもこともない世界に来てそれだけで精一杯の一行。そこに

「ああ、この者達がそうなのか。」

と、重低音が聞こえてきた。驚いて、その声のする方へと視線を向けると

さっきまで外に居たはずだったのに、いつの間には自分達は玉座の前にいた。

やはり、辺りは薄暗く黒やドス黒い紫の宝石などを主体としたシンプルな城内である。しかし、あちこちに大小大きさの違う黒、紫と言ったルーン文字、魔法陣が壁や床、空中までも彷徨っているので、これにぶつかったら、どうなってしまうのかと怖い。

玉座は、10M程高さがあり玉座に座っている王の姿がハッキリ見えない。

玉座の下には、王の側近であろう二人が階段を挟んで左右に立っている。

真っ黒な鎧を見に纏い、刃物のついた魔法の杖を持って立っている。


…めちゃくちゃ怖い。

火の精霊王はと思えば、闇の精霊王の横にいて何やら色々話している様で

話を聞くたびに、サクラをチラッと見たり…結局最終的には

闇の精霊国に来て

真っ黒な髪と爪、真っ白な肌に濃い紫水晶の様な目の色に変わり額には目を縦にした様な第三の目が付いていた。第三の目は白目部分が濃い紫水晶色をしていて黒目部分は黒い。


「……なるほど、その御子がそうか。お前の話からすると、この国に適応する体へと進化したのであろう。
そして。闇の精霊王しか持たぬ第三の目まで持つとは。……そうか……。
何故、この様な所にいるのか謎ではあるが、何らかの事情で“記憶を消された”或いは“記憶が消えた”のであれば理由がつく。」

なんて、ショウを見て意味不明な事を言ってきたのだ。

だけど、サクラだけは二人の精霊王が何を考えてるのか何となく分かったようで、二人を警戒する様にショウを自分の後ろへ隠した。

それを見て、二人の精霊王は目を見合わせ


「……なるほど。」

そう闇の精霊王が言うと、サクラは大きく目を見開きますます二人を警戒した。


「理由は分からぬが、何やら複雑な事になっている可能性があるな。何より、そこの二人が御子を敬ってないのがいい証拠だ。」

闇の精霊王はチラリとゴウランとシープを見た。と、思ったら、いつの間にか火の精霊王と闇の精霊王はショウ達のいる場所まで降りてきていた。

そこで初めてしっかり見る闇の精霊王にショウとゴウラン、シープはビビり散らした。

身長は3Mくらいはあり、とてもガタイがいい。黒い髪に所々紫のメッシュが入っている。目の色は、白目部分が真っ黒で目が紫。額には目の形をした黒い穴の様に見える。

肌は真っ白く、肌には黒と紫で全体的に闇を現すタトゥーの様な紋様がある。爪は黒く獣の様に鋭く尖っている。

口紅を塗ったかの様な紫の大きな口。アイシャドウを塗ったような紫の瞼。

野性味溢れるワイルド系イケメンであるが、仕草や言動などとても静かで気品溢れとても高い知性を感じさせる。

衣服は黒一色だが、シンプルであるが王族服を着こなし頭の大部分を隠すような大きな襟の付いたマントを羽織っている。

だけど、厳つい大男な上に顔もいくら美形とはいえワイルドかつ強面。更には声も威圧を感じる重低音だったので、ショウ達がビビり散らすのも仕方ない。

そして、何故か玉座から降りた精霊王二人はこう言った。


「理由や事情はあるだろうが、御子がここに居るのに我々が御子を見下ろす事はできぬ。」

「何があったか分からない。だが、そちらが“そんな風”にしたいなら、こちらも敢えてそれに合わせるしかない。」

と、またよく分からない事を二人の王は言い

「それは、置き。旅で疲れているであろう。良ければ、我が宮殿で休むといい。
そして、御子達の目的がスムーズに進むよう我々も協力をしたいのだが許可をもらえるだろうか?」

なんて、思ってもない嬉しい言葉が闇の精霊王の口から飛び出してきた。

「……え!?いいの?」

さほど、怪しむ事を知らないショウは願ってもない闇の精霊王の有り難い言葉に喜びを全面に出し、丁寧語も使えない礼儀も知らない為、とても失礼過ぎる態度を取っていた。

そんなショウの言動に、ゴウランやシープは心の中で悲鳴をあげながら、サーーー…と血の気が引き
今すぐにでもショウの口を塞ぎ、床に叩きつける勢いで土下座させ、もちろんショウ以外自分達も土下座しショウの無礼について死ぬほど謝ろうと二人はグリンと青ざめた顔でショウを見た。

だが、そんな二人の心でも読んでいたかのようにオブシディアンは、二人に向かいフルフルと首を振り

『大丈夫だ。精霊王様達は“分かっている”。だから、お前達が想像しているような事にはならないから安心していいよ。』

と、二人に声を掛けた。

それでも信じられなくて口をパクパクさせて、オブシディアンに訴える二人の冷や汗ったらなかった。

相当なまでに焦ってるし、王に対する態度ではないと“無礼罪”になりどんな処罰が下るか。
きっと、ショウだけではない。ショウと旅をしている自分達まで巻き込まれるのは目に見えている。

勘弁してくれよ!自分達は身を弁えてるってのに、あの豚のせいで!!

と、ゴウランとシープは似たような事を考えていて泣きそうな顔でキッとショウを睨んだ。

だが、その視線はサクラによって塞がれ無意味になってしまったが。


「いいも悪いも、御子が望むなら我々は逆らえるはずがない。そして、何より御子に会えるとは何たる奇跡。全ての運を使い果たしたかのような気持ちだ。
だから、今宵は御子に会えた喜びを祝して宴をしたい気持ちは山々だが…今現在、何やら複雑に色々な糸が絡まった状態のようだ。」

「そうだ。だから、俺達も下手に動けない。
特に“空の精霊王”に御子や空の王族が、この世界に来ている事を知られる訳にはいかない。あと…怪しいのは…誰か?」

「…うむ。自分は光の精霊王と水の精霊王が怪しい動きをしているとう情報を得ている。
草と土の精霊王は信用できるだろう。」

「…光の精霊王が!?空だけでも厄介極まりないってのに、光の精霊王となれば…マズイな。」

「…まあ、それはアイツらが我々の敵になりうるかどうか。それも、今はまだ分からぬ状態。何より、精霊王様が自暴自棄になり引きこもってしまったのが、この騒動の始まり。
精霊王が自らを封じたせいで、精霊王様の右腕とされる空の精霊王が調子づいた。」

「…いや、空の精霊王だけでは、ここまで大事にはならぬ。なにせ、我々精霊王が集まれば、空の精霊王の暴走は阻止できたはずなのだ。
それができなかった。どんな手段を使ってもだ。そこが、まずおかしな話だ。何か、裏があるとしか思えぬ。」

「…だったな。確かに、空の精霊王の暴走を止めようと他の精霊王達と共に最初は何度も話し合いをした。それでも拉致があかなく力づくで止めようとしたが…こちらの惨敗であった。」

「まさか、戦争など起こして罪もない民たちまで巻き込む訳にはいかない。
だから、あれから平行線のままであり…このままでは精霊界が滅んでしまう。精霊界が滅べば、裏の世界(ショウ達の住んでる世界)の自然は崩壊し、魔法・魔導の属性も消えて無くなるだろう。つまり、精霊界が滅べば裏の世界も滅ぶ。」


なんて、精霊王二人が自然な流れで立ち話をしていたが、その内容は自分達が直面している“世界が滅ぶ”と、12年前に急に現れた精霊王の予言の内容に酷似していた。

もちろん、自分達では理解でない話もありほぼ分からない事だらけではあったが、この話の内容は自分達も絶対に無視できないものだとオブシディアンを始めゴウランとシープも強く感じていた。

そして、そんなピリつく空気の中


「熱心に話し込んでいる時に申し訳ないが、ショウ様がお疲れのようだ。休める場所を用意してほしい。」

と、場の空気も読まず平然とした顔でサクラは無礼にも王二人に対し言ってきた。

その声に気付き、王二人がショウに目を向けると立ちっぱなしが辛かったのだろう。足の裏を痛めた様で、サクラにお姫様抱っこされた状態で申し訳なさそうな顔をしていた。

それに、王二人がハッと気付き


「…こ、これは、非常に申し訳ない事をした。だが、これは大事な話でもあり急ぎの話でもある。皆に知ってもらわなければならない内容でもある。
よって、応接室で御子は休憩し、他の者達は我々の話を聞いてほしいのだがよいか?」

と、闇の精霊王が言った事により


今現在、だだっ広い応接室にみんないる。そこには、いつの間に呼んだのだろう。

土の精霊王と草の精霊王までもが、部下数名を連れいた。

土の精霊王は、以外にも女性で茶褐色の肌に鋼色の髪と目をしている小柄で気の強そうな美少女だ。着ている服装もシンプルだ。

草の精霊王は、肌の色がライムグリーン色をしていて、髪は白緑だが、そこに赤、ピンク、黄、紫など様々な色がメッシュとして入っている。目も角膜がピンク、瞳孔が赤。爪も一本一本それぞれ色が違ってカラフルだ。

そのせいか、服装やアクセサリーなども派手派手だが、その派手さがよく似合うチャラそうなイケメン。

しかしながら、精霊の国の王とはみんな美形なのだろうか?土、草、火、闇の精霊王達は系統は違えど美形な事に間違いない。

…いや、他の精霊王達は分からないが…

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