イケメン従者とおぶた姫。

あなたは、そのままでなければならない。

オブシディアンは、あまり時間がない事も考慮した上でこの機会しかないと無礼を承知で闇の精霊王に次の質問をした。

『恐縮であり無礼を承知で、“言葉飛ばし”で質問させて頂きます。…ショウ様に聞かれたくない話ですので、何卒お許し下さい。』

深々と頭を下げるオブシディアンに、何一つ動じる事なく

「…よかろう。この話は、己の他に波動使いであるサクラ様にも聞こえてしまうが構わぬか?」

と、テレパシーで返事を返してきた。

『もちろんです。』

オブシディアンは言葉飛ばしがサクラには筒抜けだという事を知っているので今更驚かないし、サクラはショウの事についてストーカー並みに誰よりも知り尽くしていると思っているので、今更ショウについての話や言葉飛ばしについてサクラにまる聞こえだろうが構わないし、サクラには勝手に聞こえてしまうのだから仕方ないと諦めている所もある。

「そうか。なら、遠慮せず質問をするがよい。答えられない事も多いが、答えられる事は全て話そう。」


『有り難く存じます。では、さっそくの質問ですが
ショウ様の父親は覇王、軍事の鬼神など様々な異名を持つ程の才気煥発であり絶対的なカリスマ性を持った方です。母親の方は残念ながらご存知あげませんが、膨大な魔力量の持ち主だったと伺います。
…なのに、こんな素晴らしい逸材の二人の実の子供であるショウ様には、そのどれもが全く受け継がれず微塵たりとも感じ取れないのです。』

「…なるほど。」

『親や先祖がいくら立派であっても、その子供や孫達が立派になるとは限りません。…ですが!
子供なら不出来であろうが出来損ないであろうが、少なからず親や先祖の能力の一つや二つ受け継いでいてもおかしくないはず。
なのに、ショウ様は“何もない”ほんの僅かも受け継いでるものがないのです。これは、あまりに不自然過ぎてあの方の実子を疑ってしまいます。』

「確かに、オブシディアンお前の言いたい事は分かる。
だが、“御子に関しては、それでいい”のだ。」

オブシディアンの質問に対し、何やら意味深であり不可解な言葉を発した闇の精霊王にオブシディアンは首を傾げる。

『……“それで、いい”とは?』

そう、聞いた時

闇の精霊王は、何やら考える事があった様でしばらくしてようやく口を開いた。

「…オブシディアンの過去世の事もあるが、そうなればこの話はお前だけでなく“もう一人”にも聞かせねば不公平になる。これは、お前ともう一人の過去世を知る己の勝手なる思いだ。
お前の一存など関係無しに、この話は御子の過去世に大きく関わり、何の因果かお前と同じように今もなお御子と関わりを持っているもう一人にも聞かせよう。」

なんて、闇の精霊王が言った事でオブシディアンは前世か前々世に自分がショウと関わりを持っていた事実を知り驚愕していた。あくまで、顔には出さず心の中だけでだ。隠密の鏡である。


「さて、“御子が容姿や知性、運動神経など全てにおいて底辺である事。才能に関しても“目利き”以外何も取り柄がない事。”に、ついてだが…」

テレパシーで、そう説明してくる闇の精霊王の声に


「……うっ!うわっ!?な…な、なんだ、コレ!!?頭の中に勝手に………ウグッッッ!!???」

オブシディアンの隣にいたゴウランが、頭の中に直接話しかけられ驚きパニックになっていた。

だって、オブシディアンの言葉飛ばしとは違う感覚で慣れてないので気持ち悪く感じし、言葉飛ばしの様にハッキリ言葉として伝えるのではなく“言葉ではないのに、相手が伝えたい事がハッキリ鮮明に分かる”のだ。なんだか、気持ち悪い感覚しかない。

ゴウランの様子のおかしさにいち早く気がついたオブシディアンは、風の魔導で即座にゴウランの口を塞ぎ今までの経緯を簡潔に説明した。

驚いてるのはゴウランだけでない。オブシディアンも予想外の展開に驚きっぱなしだし、闇の精霊王のいう“もう一人”とは、シープの事だろうと漠然と考えていたので、まさかのゴウランの参加に内心驚きを隠せずいたのだ。顔には出さないが。

しばらくの間、何がどうなってるんだ!??と、パニック状態のゴウランを落ち着かせるのに暫く掛かったが、闇の精霊王はそれを咎めるでもなくゴウランが落ち着き冷静になるのを静かに待っていた。

他の精霊王達は、闇の精霊王からオブシディアンとゴウランの二人のプライバシーに関わる事で、二人に内密な話がしたいとテレパシーで言われていた事もあり三人以外と重要な話を進めていた。


「さて、そろそろ本題に入ろう。何故、オブシディアンとゴウランに、御子について話そうとしたのは先程も少し触れたがお前達二人は前々世で御子に深く関わっていたという事。」

と、闇の精霊王が話し始めた所で、オブシディアンとゴウランは自分達が前々世でもショウと関わりがあったという事に驚きを隠せなかった。しかも、深く関わっているという。

ここで、オブシディアンはハッとした。

前々世、ショウと自分が大きく関わっているという事は…おそらく、“そういう事”なのだろう。

ショウ達と旅をするようになり、ある事情からショウの父親であるリュウキがショウの今後に関わる大事な事だからと、サクラが知る情報を無理矢理に吐かせた事があった。

その内容は未知すぎて未だに飲み込めていない部分もあるが、ダリアというイレギュラーな存在、異世界からの未知なる鬼の存在などが現れサクラの話が色濃くなっていき、その内容は現在なのだと受け止めた所に闇の精霊王の今の言葉だ。

ここで、ようやくオブシディアンは現実味のない話を何とか受け入れしっかり向かい合わなければと何処かフワフワした自分の気持ちに叱咤し続けていたのだが、一気にこれは現在なのだと確信に変わったのだった。

だからこそ、これから聞く闇の精霊王の話はきっと、おそらくオブシディアンやゴウランにとって嫌な話になるだろう予想もし覚悟した。


「そして、お前達が途中自分達の愚行に気が付き、御子の所に引き返した時には既に取り返しのつかない事になり絶望していた事。
本来なら、許される事ではない愚かな罪人であるお前達だ。だが、しかしだ。」


……ドックンッ!!?


…やはり、そういう話か

そう、オブシディアンはある程度覚悟していたが、人の口から聞かされる事実は自分で考えるのとは違いとても重くのし掛かり酷くショックを受けていた。

サクラからダリアの話を聞いていた、前々世ダリアとショウの星に住む者達がショウを裏切りダリアと共に星を出て行ったという話。
…その愚かな行為をしていた中に、自分もいたという事になる。

その時は自分はどんな気持ちでいたのだろう?ショウの事をどんな目で見ていたのか。

…そして、今世…

ショウの隠密だった自分は、ビーストキングダムで自然災害で危険にあっているショウを一瞬ではあるが見捨てたのだ。

サクラへの淡い気持ちがあり、ショウさえいなければ少しは自分も見てくれるのではないかという、あり得ない妄想から起こした一瞬の迷い。

その一瞬の迷いで、ショウの命を危険に晒してしまったのだ。

一生背負っても悔いても悔いきれない大きな大きな罪悪感ばかりが残った。

そんな愚行を働いた自分が、前々世でも同じようにショウに対し愚かな行動をしていたとは……

自分という人間は、何と愚かな人間なのだろうかと大きなショックがオブシディアンを襲う。


「自分達の愚かさに気づき、御子の元へ戻ろうとした者達はお前達を含め僅か数人程度。
現在お前達の住んでいる星と我々のいる星の人口を合わせても、到底及ばない程にまでに【御子の星】には、御子を守り敬うはずの人々が住んでいたのにだ。
だというのに、自分の愚かさに気付き御子の元へ戻ろうとした者らは、たったの数名程度……。
なんと嘆かわしくも愚かな者達ばかりなのかと、その事実を知った己は絶望しその者達を許せぬと未だ憤りを感じている。」

想像を超えるたくさんの人達がいた星。その星から、全ての人達がショウを捨てて出て行った。

しかも、その星に住んでる者達は本来ショウを敬い守らなければならない者達だという。
おそらく、ショウの家来か何かなのだろうが…みんなが居なくなった星で、たったひとりぼっちになってしまったショウの事を考えると…居た堪れないし可哀想過ぎてこれ以上考えたくない。と、オブシディアンとゴウランは似たような事を考えていた。

だが、星とか何とか規模が大き過ぎて現実味も湧かなくファンタジーの小説でも聞いてる様な気持ちのゴウランは、何処か夢でも見てる気持ちでフワフワした気持ちで漠然と聞いている。

闇の精霊王の話を聞いても、よく分からなく話についていけない部分も多い為だ。


信じられない話ではあるが、闇の精霊王という自分達人間からすれば神と言っても過言ではない存在が言ってるんだ間違いのない話なのだろうとゴウランは、信じられない話を信じるしかなかった。

それと、前々世の自分はショウの家来だったかもしれないという事実にショックを受けている。
…だって、自分がこんな底辺をいくようなザコいデブスの家来だったなんて嫌過ぎるとゴウランのプライドがその事実を受け止めきれずいた。

同時に、あ…!だから、前々世の自分はショウを捨てて出て行ったのかとゴウランは一人妙に納得してしまっていた。


「こんな話をされても、二人にとっては意味の分からない話であろう。だが、これ以上は深くは話せぬため、この事は頭の片隅に置いて聞くがいい。」

オブシディアンとゴウランの気持ちを配慮した闇の精霊王の言葉にオブシディアンは感謝し

『我々の事まで考え言葉を掛けて頂き誠にありがとうございます。』

と、お礼を述べ深々と頭を下げた。
それを見習い、ゴウランも深々と頭を下げる。


それを少し離れた場所から見ていたシープは、

なんでゴウランなんだよ!

オブシディアンの一番弟子は自分なのに、なんで自分だけ仲間外れなんだ

……ムカつく!

と、嫉妬丸出しで、オブシディアンとゴウランを睨みつけていた。

その視線に気がついたオブシディアンは、少し苦笑いし『後で説明する。今は我慢してほしい。』と、シープに言葉飛ばしで話しかけ

ゴウランは、自分は何も悪くないのに、何でが睨まれなきゃいけないんだよ!と、シープを睨み返していた。


「…正直、己は御子を裏切ったダリアを筆頭とした御子の星の者達の愚行は到底許せぬ。むしろ、主である御子を蔑ろにし捨てた罪人だと思っている。
だが、しかしだ。御子を思い引き返してきたお前達だからこそ。罪人には変わりないが、御子の事を思い考え改め自分達の愚かさをを悔い嘆いていたお前達だから話そうと思えた。」


…何が、どうなって前々世のオブシディアンとゴウランはショウの元へと引き返したのかは、記憶のない二人にとってもう知る由もない。

そして、“罪人扱い”されてる事に対し、記憶もないのにそんな事を言われてもなぁ…今の自分とは違う訳だしというのが正直な二人の気持ちである。

前々世、ショウを捨てて出て行ったはずの自分達が、何を思いどういう気持ちでショウの元へと引き返したのか知りたい所ではあるが、その気持ちをグッと抑え二人は闇の精霊王の話を聞いている。


「そもそもの問題。御子を独り占めしようとしたダリアの暴走とそれを阻止しようとしたロゼの力と力のぶつかり合いで、全宇宙が多大な影響を受け中でも一番の被害を受けたのが御子の星だ。
なにせ、そこで一瞬ではあったがダリアとロゼの争いが起きていたのだからな。」


…しかし、一体ダリアという男は何がしたかったのか?

ショウを独り占めしようとした?

なのに、ショウを手に入れておきながらショウを蔑ろにし捨てた。

意味が分からない。

ただ、ダリアの愚行を止めようとロゼが奮闘していた事にも驚く。だが、圧倒的なダリアを前に一瞬で片がついてしまったようだが。

ロゼは悪しき大魔王に、負けた勇者といったところだろうか?


「そこで、本来なら【御子の偉大さや尊さ】を知る筈の御子の星の住人や生き物達は、ダリアとロゼの絶大な力と力のぶつかり合いによりその影響でその記憶を失ってしまったのだ。
しかも、最悪な事に御子を独り占めしようとしたダリアさえも【唯一無二である御子の偉大さ、この世界の安泰の為に御子を敬い守り幸せにしなければならない】という記憶さえも消えてしまったようだ。」


オブシディアンとゴウランは、ゾッとした。

【唯一無二の偉大なる存在・世界の安泰の為に敬い守り、幸せにしなければならない存在】

と、いう記憶が消える。

…それって、とんでもない話なのではないかと嫌でも何となくこの先の最悪なシナリオを察してしまう。


「…そこからが、御子にとっての悲劇の始まりとなった。そこは、御子のプライバシーの問題になるので割愛する。そして、今現在に至る訳だがここからが本題だ。」

と、いう闇の精霊王に、これ以上何があるのかとオブシディアンとゴウランに緊張が走る。


「何故、御子が“容姿や才能、能力”などが、一般の者達よりも劣るのかという話だ。オブシディアンも、気になっていた話だ。これには、しっかりとした理由がある。」


「【御子は偉大なる存在】。御子の気持ち一つで、この世界は滅ぼす事も、自由自在に形を変える事も容易い事だ。だが、そんな能力を自分が持っていると知れば、御子の欲でどんな恐ろしい世界ができるか分からない。
だから、

【敢えて御子には、自分の立場や能力について一切知らないようになっている】

そして、

御子には可哀想だとは思うが、御子が有頂天にならず弱い立場の者達の気持ちを考えられるよう。平民をさほど差別なく、できる限り優劣なく平等に見れるように

【敢えて御子を、全てにおいて平均より劣るようなっている】。」

と、衝撃の真実を伝えてきたのだ。


「御子が自身の能力に気がつけば、姿形も好きな姿に変える事もできる。そんな事をしなくとも、御子の両親を見れば本来の御子は相当な美人になっていたであろう想像もつく。

だが、

【御子が暴君にならないよう】

【御子の力や能力は、“天守の力”として二つに分離して自分の天守に“全て渡す”。
天守に選ばれた二人は、本来の自分の力に加え御子の力や能力を貰い受けその力で“御子を守る剣と盾”となる。】

【御子が居ればこその、この世界。御子が居ればこその自分達だ。】

【御子が何かを心の底から強く願えば何でも叶う。御子は、それすらも知らない。知ってはならない。】」


そこまで聞いて、オブシディアンとゴウランはとんでもない話を知ってしまったと思った。

いや、オブシディアンに関しては何となくだが、そうかもしれないと何となく察していた部分もあったが自分が想像していた以上のとんでもない話だった。

確かに、これは誰にも知られれてはならない話だ。

だから、サクラやロゼ、リュウキまでもショウの事について頑なに口を閉ざしているのだ。

そして、ショウに関して

“これでいい”

みんな、口を揃えてそう言うのも納得した。


「鋭いオブシディアンならば、これ以上言わずとも御子の正体についておおよその察しはついただろうが。
御子について、これ以上言えん。これ以上は深く知られてはならない。

【大切に大切にその存在を隠し守らなければならない存在。】

本来ならば、その役目の“お前たち”だ。」


闇の精霊王の言う通り、オブシディアンはショウの正体についてほぼほぼの検討がついた。

それに、ここまで聞けば何も知らないまま聞いていたゴウランでさえ、何となく神話的な話だが“そうなのだ”としっくりきたしショウを見る目がガラリと変わった。

あと、大人の事情で本来の姿や能力、力を奪われた上に本当の自分の事について知る事のできないショウを不憫に思った。


「この事は、この世界を創られた【創造主様】と、御子の両親、天守。御子の星の者達…そして、この己、闇の精霊王だけが知っている話だ。
…あの悲劇さえなければ。ダリアの欲の暴走により最悪な道を辿っているが、自分達の過ちに気付き御子の元へと引き返したお前達には、本来お前たちが知らなければならない話を知ってほしく話した。」


闇の精霊王がショウについて話してくれた事に関し、ゴウランはそこの部分には納得したが


「だが、己がお前達の事を“罪人”と思い怒りが収まらないのは己の単なる逆恨みであり、御子の星の者でないのでな。御子がどういう状況下にあるか知りつつも助けてやれない己の不甲斐なさに対する八つ当たりだ。」


この理由についてだけは納得できなかった。

だって、そもそもショウを独り占めしようと暴走して、その強すぎる力のせいで、ショウに関する大事な情報をみんなの記憶から消えてしまった。

記憶がない状態で、全てにおいて底辺をいく主に果たして、ついていこう!守ろう!と、思えるのだろうか?
…絶対的に、無理があるだろうとゴウランは考えていた。


「本当ならば、全ての元凶はダリアでありお前達は言わばその被害にあった犠牲者達だ。
それを知りつつも、お前達を逆恨みするのはお門違いもいい所だという事も分かってはいる。
だが、しかし!……御子を思えば……どうしようもなかったとはいえ、どうしても許せないのだ。お前達も己も……ッッッ!!!」


そこに闇の精霊王の切実な思いを聞き、ゴウランは何とも言えない気持ちになった。

“分かっていても助けられない”、それって相当なまでに苦しい話だと安易ではあるが想像できてしまう。

そういった気持ちで、それを見続けていたのだろう?闇の精霊王の気持ちを考えれば考えるほど気が狂いそうになってくる気がする。

そこで、精神崩壊しなかった闇の精霊王の心の強さにオブシディアンは感服した。


「だが、お前達にとっては前々世の話であり、今は生まれ変わり御子とは関係のない者達になったのだろう。
永遠を生きる己にとっては、いくら生まれ変わろうがなんだろうがお前達はお前達に過ぎないが。お前達は、違うのだろう。だから、お前達は自分達の思う通り自由に生きるがいい。」


…ドックン…!!?


確かに、自分達は前々世の記憶なんてないし、生まれ変わって別々の人生を送っている。

だけど、こんな話を聞かされて

前々世ショウと大きな繋がりがあった事、そして生まれ変わっても尚、また巡り会い一緒にいる事。

それなのに、ショウとは関係なく自由に生きろと言われても少なからず無理がある。

そう、二人は感じていたし

もはや、これは切っても切れない運命的なものではないかとも感じていた。


「…だが、もう一つ。己がこの話をお前達にしようと思った理由についてある。それは、
“元御子の一六天皇子のリーダー”であったオブシディアンが、御子について深く知りたがっていたのでな。己にとって、とても考え深いものがあり話そうと思い至った。
ついでに、中階層の門番をしていたゴウランにも話したくなったのだ。ゴウランも、また御子を思い引き返してきた一人であった為だ。以上だ。」


これは、決定だろ。


そもそも、オブシディアンの場合は全前世関係なしにショウに仕えるものである事には変わりない。
しかも、前々世“一六天皇子”と名のつくからには、それなりの役職に就いていたのだろう。しかも“リーダー”となれば尚更だ。

それに、前々世で理由は何であれ仕えるべき大切な主を捨て。挙げ句、今世は……

何度生まれ変わろうが、同じような事を繰り返すものなのかとあまりの自分の愚かさに自傷気味に笑うしかない。


ゴウランもまた、“中階層の門番”という役職がどんなもんかよく分からないが、中階層があるくらいだから下界層、上階層なんて所もありそうだなと漠然と考えた。
門番というからには、大切な主を守る重要な役職であったに違いない事は確かだろう。

そんな自分が、一部記憶喪失であって仕方がないとはいえ主を裏切り捨てた。

そして、今世なんて……つい最近まで、ショウを虐めて酷い扱いをしていた。

最悪もいい所である。


これは何があっても自分達はショウの味方になり、命懸けでショウを守り抜かなければ割りに合わない。

…例え、ショウが自分を嫌い許してくれなくても…

…いや、それでもまだまだ足りないくらいだ。それくらいの事を自分はしたんだ。


そう思うほど、二人はショウへの罪の意識に苛まれていた。

「それはショウ様への贖罪、罪滅ぼしのつもりか?
それなら、やめろ。そんな気持ちでショウ様に近づいてくるんじゃねーよ。ドクズどもが!」


いきなり、会話の中に入ってきたサクラの登場にみんな驚いた。今まで、ダンマリを決め込んでいたくせにまさかの乱入で普通にビックリする。

そして、ショウの前では絶対に見せない聞かせない汚いな言葉と乱暴な言い方だ。
これが、サクラの本性でショウの前では猫を被ってるのか?と、ゴウランと闇の精霊王はサクラの豹変ぶりに驚いている。

それを察し

『残念ながら、サクラ様のこれは両方とも素だよ。』

と、オブシディアンは苦笑いしながら、サクラのショウの前だけでは猫被り疑惑を否定した。


「いくら、ショウ様がお前達の事を許したとしても、俺だけは絶対に許さない。永遠にだ!」

怒りと憎しみの籠ったサクラの気迫に、オブシディアンとゴウランは何も言い返す事もできない。グッと息を飲み込むしかない。
自分達の愚かな行為を罪と認めてしまった以上言い返せる筈がないのだ。


「…だが、それでもだ。それでも、お前達は…記憶が消えても自分達の罪を認めショウ様の元に帰って来た。それだけは認めてやらない事はない。
だから、気に食わないがショウ様の側にいる事を許してやる。せいぜい、永遠と自分達の罪に苦しめ。クソヤローどもが!」

とんでもない上から目線でサクラは、二人を罵倒しつつも何とか認めてはくれているようだ。ゴウランは、サクラの上から目線に物凄く腹が立って仕方なかったが、ショウの事を思えば何とか我慢できた。


サクラの事をよく知っているオブシディアンからすれば、ショウが絶対であり全てのサクラ、そして気難しいサクラが自分とゴウランの事をここまで許してくれた事に驚いた。だから、サクラの言葉を素直に受け止め

『…ありがとう。』

と、礼を言った。本当は、サクラに向かい深く頭を下げたい所ではあるが、人の目がありおかしく思われるのでやめておいた。

ゴウランは、意地でもお礼なんて言わなかった。
だって、サクラはムカつくし、自分がサクラに何をしたって訳じゃないから。
むしろ、何でお前にこんなにボロクソ言われなきゃいけないんだと怒ってるくらいだ。だけど、サクラが怖いのでそんな事言えないけど。



< 122 / 125 >

この作品をシェア

pagetop