イケメン従者とおぶた姫。
リュウキは考えていた。

自分の前世、前々世の記憶はだいたい思い出す事はできたが、やはり欠けてる部分も多い。

前世、ビクターだった時。ショウ…アイルが行方不明になり奇跡的にビクターの元に帰って来てからの事だ。

何故かアイルの近くには宝石が転がっている現象はよくあった。どうして、アイルの近くに勝手に宝石が出てくるのか観察した事もあった。
観察していると、科学的原理は分からないが、どうやらアイルの気持ちや気分で色違い、形違いの宝石が出てくる可能性があると考えた。

なので、試しにアイルに

「頼みがあるのだが。気持ちの問題、けじめのつもりで“ベーレ(ダリアの生まれ変わり)の妻であったベドと決別する”そして、新しい自分として人生を歩むという意味を込めて強く祈ってみてくれないか?」

そんな風にお願いをしてみた。

ベーレの事を思い出させるのは酷かとは思ったが、それもそうとアイルの宝石にも興味があったのだ。

そして、ビクターの言う事を素直に聞き、アイルが目をギュッとつむり一生懸命お祈りをしていたところ。

いつものように音もなく、あたかも最初からそこにあったかの様に自然にアイルの近くに宝石が転がっていた。

その宝石は、手の平くらいの大きさのハート形の黄色の宝石だった。珍しい形だなと見ていると…

…パカ…

そのハートの宝石は、真ん中から真っ二つに割れ涙形に変わった。

それを見て驚くビクター。

そして、これが正しい情報かは定かではないが、何処かで動物の骨で人工的に宝石を作る事ができるという話を聞いた事があった。極々小さくしかできないらしいが、その骨からできた宝石の色が黄色だと聞いた事があった。

ならば、この割れたハート形の黄色い宝石は、アイルの気持ちの表れだと思ったら切ない気持ちになったのを覚えている。


しかし、物語の中でダリアは体と魂を二つの宝石に封じたという話があった。
もしかしたら、その宝石というのはそういう事だろう。

現に、あの当時骨壺のつもりで割れたハート形の黄色い宝石を入れる器を用意したのが…ベス帝国にあった宝石箱だ。

フウライ達があの宝石箱を開けたら、ダリアのいた異空間から我々が脱出できたという訳だが…。

おそらく頭のいいダリアは、あの宝石箱にも何らかの細工をしていたのだろう。
初代ベス帝王ノアに“何かあった時、この宝石箱を開けろ”と託した宝石箱。
何かとは何か分からないが…色々見通しての事だろうが。まだ、しっかり把握できていない。

そして、何より

ダリアの封印されている二つの宝石の行方だ。

宝石箱は見つかっていて、ベス帝国で厳重に保管してもらってるが。何故、宝石箱だけ見つかって宝石の行方が分からないのか。

何より、何がキッカケとなりダリアが目を覚まし、我々を異空間に連れて行ったのか。
我々というより、ショウか。ダリアがショウを連れて行こうとした所に我々が巻き込まれたという形だろうな。

ダリアは一体、何を考えているんだ。
ダリアは、エリスを嫌悪し離れたがっていたんだろ?だから、天であるエリスを裏切ったんだろ?

“裏切りの赤”が出たら、天守の能力は元より天守の役割自体無くす。天守ではなくなる。
天とは関わりの無い存在となるはずだ。

なのに、何故こんなにもエリスに執着するんだ?


と、リュウキは頭を悩ませていた。


その頃、レッカとユコ達が公園を去って行ったのを見計らいサクラはショウと手を繋いで公園に戻って来ていた。食事の途中だったからだ。

ショウはそこにゴウランが居た事に驚いていた。ゴウランがいるんだったらヨウコウ達も居るんじゃないかと辺りを見回していると

「…あ〜、安心してくれ。ヨウコウ様達はいない。俺だけだから。」

ゴウランは、ちょっと都合悪そうにショウに話しかけてきた。
嫌な事を言われる以外でゴウランに話しかけられたのは初めてだったので驚きつつも、やっぱりゴウランは怖いし嫌な事ばっかり言うので大嫌いだし凄く苦手だ。だから、サクラの後ろに隠れ静かに頷いた。

自分に対してのショウの怯えようにゴウランは、自分はここまでショウの心を追い詰めたんだなと自己嫌悪に陥っていた。
これまでの事を反省し新たな関係を築き上げられたらと考えたが、ショウの自分に対する恐怖心や嫌悪感などを考えても簡単に謝って済む問題じゃないし、今のタイミングじゃないと感じた。

とにかく、ショウに対し自分は誠意を持って接しショウに自分はお前に危害は加えない。むしろ味方だと信じてもらう事が大事だと思った。
そして、ショウが自分に対し心を許してくれたところで初めて、誠意を持ってしっかりと謝る事が許されるんじゃないかと考えた。

今までが今までなだけに、簡単に謝ったところでますます不快感を与えるだけだと思った。

だから、今はまだ自分は謝る事すら許されないと感じている。まだ、その時じゃない。

サクラはショウの様子をひどく気に掛けながら、お前さっさと消えろとばかりにゴウランを冷たい視線で睨んだ。
深くフードを被り顔を隠してるのにも関わらず、“睨んでる”そう感じるのだ。

ゴウランはサクラの突き刺さる様な冷たい視線に、早くこの場を去りたいと思ったがここで逃げてしまえばショウとの溝は深まるばかりと考え平然を装いその場にとどまっていた。

本当の本当は、サクラは怖いしショウへの罪悪感でマッハでこの場から逃げ出したい気分だ。


サクラはゴウランが立ち去らない事に苛立ち、お前がここから行かないならこっちが出て行く。と、ばかりにショウを連れどこかへ行こうとした時だった。

『せめて食事が終わるまでここにいよう。
あまり、忙しなくあちこちショウ様を連れ回したら忙しくてショウ様が目を回してしまう。
逃げる事も大切だが、時には向き合う事も大事だ。それが、今かと思う。』

いつもならサクラに合わせその場を立ち去っていただろうオブシディアンが、サクラを説得し引き止めようとしていた。

その事にゴウランだけでなくサクラまで驚いていた。珍しく、サクラに意見したオブシディアンにきっと何か深い訳があるのだろうと、サクラは渋々その場にとどまる事にした。

だが、ゴウランが見えないようにショウをサクラ自身で遮り、ゴウランがいないかのように振る舞っていた。

このあからさまに嫌です。関わらないで下さい。といったサクラの態度にゴウランはカッチーンときて苛ついたが、それも仕方ないと受け入れてようと踏ん張っている。

今現在、ショウ達は微妙な雰囲気の中
そんな空気なんて、お構い無しのサクラ以外シーン…と静まりかえっていた。

あまりに静かになった事で

先程までレッカチームと揉めていたタイジュチームの会話が聞こえてきた。


だいぶ落ち着いたらしいキウは、しょんぼり落ち込みながら

「…本当にごめんなさい。…どうしても、あの子、そしてあの子と仲良くしてる人達の声がすると怒りや憎しみのような感情が一気に込み上げてきて訳が分からなくなってしまう。

自分の気持ちを自分で制御できなくなってしまって…ダメだって分かってるけど、その時はもう自分でもパニック状態で…ダメだって分かってるのに…」

と、さっきまでの荒れようが嘘のように、静かに泣いていた。

それを見たショウは

「…キウちゃん、どうしちゃったの?」

心配そうに、サクラに聞いてきた。


「少し嫌な事があったようです。」

「…そっか、可哀想だね。凄く優しい子なのに。」

仲間に謝るキウの姿とショウのキウは“優しい子”発言に、ゴウランとシープは首を傾げ

「…え?キウが優しいって?周りに迷惑ばかりかける嫌な者ではないのか?」

思わずシープはショウに問いかけた。
すると

「…え!?キウちゃんが嫌な子?
それはないよ!学校で一人ぼっちだった私を気にかけてくれた優しい子だよ。それにキウちゃんは明るくて大人しい子だよ。」

と、明るくて大人しいってチグハグしててなんか変じゃないかと思いつつも、キウについて必死に弁解するショウに、ゴウランとシープはキウを見る目が少し変わった。
でも、最初の印象が強かっただけに、優しいいい子とは思えないが。もの凄く悪い子ではなさそうかも?程度には思う事ができた。

ショウが一生懸命にキウは悪い子じゃないと説明している時だった。近くに賑やかな人がいるなと何気なく見たキウは、ショウらしき人物を見つけドキリとした。

…あれ?
あれって、ショウちゃんじゃない?
なんで、こんな所に?見間違いかなぁ?

なんて思ったが、やっぱり何回見てもショウの様な気がする。

ユコを筆頭としたグループにショウはイジメられて学校へ来なくなってたから心配していたが元気そうで良かったと思った。
友達になって少しは悩みとか相談してほしいって気持ちはあったが、話しかけても心を閉ざしてしまったショウとは結局友達になる事もできないままだったが。

そんなキウの様子に気が付いたタイジュは

「ん?どうした?」

キウの隣に座って、柔らかくキウに声を掛けた。

「んー…。ちょっと、学校のクラスメイトがいる様な気がして…。」

と、少し言葉を濁すキウに

「…もしかして、ユコの友達?」

アーロラが嫌そうな顔をして聞いてきた。すると、慌てたように

「ち、違う!違うよ!!全っっ然、違うから!!私があの子と友達になりたかったってだけで!」

なんて、キウは言っていたが気になる。

「友達になりたかったって、なれない事情でもあったの?」

アーロラは、結構知りたがり屋でグイグイくる。

「あの子は、私のクラスメイトなんだけど…」

と、これ以上言っていいのか、こんな事簡単に言われないよねなんて言い淀んでいると

「あー!分かったゼ!キウが簡単に言えないって事は、あのスッゲーデブ。学校でイジメられてたんダロ?」

巨大ハンマーを傍に置き、目をキラキラさせながら、どう?自分の推理は当たってる?と、答え合わせを求めるかのように、護衛の明(メイ)が張り切って聞いてきた。

「…確かに、そうだけど…」

ショウの気持ちを考えると、あんまり言っていいとは思えなかったが嘘をつくのもちょっとな…と思ったキウは仕方なく答えた。

「やっぱりな!なんか、あのデブ舐められてイジメられそうだもんナ!」

と、納得したかのように鼻高々にしていた。

「メイ、それは少し言い過ぎなんじゃないかな?」

それをアーロラはピシャリと抑制した。
メイは基本的には真っ直ぐでいい奴だが、思った事をズバズバ言って人を傷付けたり不愉快に思わせてしまう事が多い。しかも無自覚でだ。そんな事もあり、傷つきやすい人やコンプレックスの多い人などは彼女に苦手意識をもち離れていく。

けど、嘘偽りのない性格と元気いっぱいな彼女なので好まれ友達も多い。

無意識に人を傷つけてしまう事を、キウと旅をしていて気がつく事ができた。それをやんわりとタイジュが教えてくれるかアーロラのようにやや強めにピシャリと押さえてくれて、ようやく気がつくのだ。

「あー。また、やっちゃったナ!ゴメン、ゴメン!」

メイは、苦笑いしながら謝った。

「大丈夫だよ。うん、あの子はユコを中心にクラスでイジメられてた。それから、学校に来なくなって…それから、ユコの次のターゲットに私が選ばれたんだよね。」

何故か分からないが、メイがやらかしてみんな笑って許す空気の中だとキウは気が緩むのか、ついつい言いづらい話もポロポロっと喋ってしまう。

少し笑いながら話すキウを、アーロラはギュッと抱きしめた。

アーロラは不思議だった。どうしてかな?
この子が悲しんだり苦しんだりしてると無性に抱き締めたくなる。

そんなアーロラを見てタイジュは苦笑いしながら

「…アーロラさ。ちょっと言いづらいけど、キウを慰めたいって気持ちは分かるけど。アーロラは、単に可愛いお洒落が好きなれっきとした男だろ?
そんな事したら周りも含めてキウも勘違いしてしまうかもしれない。だから、もう少し慎んだ方がいいんじゃないか?」

と、やんわり注意した。

「…あ、ごめん。なんか、妹ができたみたいな気持ちになっちゃって。」

アーロラは、申し訳なさそうにキウから離れた。

「確かに、国でアーロラを待ってる恋人もいるんだし、良くない気がするぜ!」

と言う、メイの言葉に何故か傷ついたような表情を浮かべるアーロラがいた。

「…うん。」

その様子に、タイジュは参ったな…と思っていた。自分の勘違いに越したことはないが。

最初会った時、キウは問題を抱えていて深く心が傷ついている状態だった。

アーロラは最初こそ、キウを面倒な子。悪い子。と、嫌悪していた。
だが、接しているうちに段々とキウの本質は違うんじゃないかと気付き、本当に少しずつだが歩み寄りキウのいい所をどんどん見つけていった。

そして、少々時間は掛かったが、キウが我を忘れて悪態をつき奇行に走る原因も突き止める事ができた。

アーロラは面倒見が良く情の厚い男なので、何だかんだで根気よくキウを気にかけ、結果、本当のキウを見つけてあげられたのだ。

そして、旅を続けていて分かったのは、実はキウはとても美人かもしれないという事。

分厚い赤ぶち眼鏡、髪質の問題で上手く手入れができていないボサボサ頭。地味で野暮ったい服。それらのせいでキウは容姿が良くないと思われていたのだが。

ある日、土砂降りの雨に降られ、曇って見えなくなった眼鏡を外した時・雨に濡れて髪の毛がストレートになった時など、様々な場面の所々でキウの顔立ちがいいのではないかと思わせる片鱗があったのだ。

まだ、ハッキリとは分からないが。多分、そうなんだろうなぁとタイジュ達は想像している。
だから、メイはやたらとキウにお洒落させたがる。
だが、キウは自分なんかがそんなお洒落したら痛々しいだけだと断固として受け入れてくれなかった。

それをメイは残念に思ってブーブー言ってるが、一番残念そうにしてるのはアーロラだったりする。

キウが美人かもしれないと思ってからアーロラは、更にキウを守ってあげたい、キウを本当に守ってあげられる、キウの事を分かってあげられるのは自分だけだという使命感が湧いてきたようだった。

それは、旅を続けている内に段々と強くなっていき今に至る。

そうしているうちに、アーロラのキウに対しての気持ちは形を変えているように思う。けど、その形は…。
…う〜ん…と、少し考えてしまうタイジュだ。

自分の思い違いならいいんだが。もし、そうなのであればと、そこを考えると母国でタイジュの帰りを待っている恋人を思い複雑な気持ちになる。

もし、遠距離恋愛中の恋人に、自分の他に好きな人が出来たと知ったら…ゾッとする。考えたくもない。

だからこそ、アーロラのキウに対しての気持ちは、自分の思い違いであってほしいと願うばかりだ。

アーロラには母国に恋人がいる。

当初はその話で、遠距離恋愛中であるという共通点で互いに盛り上がっていた。

だが、いつからだろう。

最近、その話題になるとアーロラは、あまり気乗りしなくなったように感じる。

そう考えていた時

「そういえば、タイジュの恋人とアーロラの恋人について詳しく聞いた事がなかったな!二人の恋人はどんな子なんだ?」

と、メイが聞いてきた。

…え?と、タイジュが思っているうちにキウも

「私も気になる!!二人の恋人だから凄くスペック高そう!」

なんて興味津々である。食い入るように、目を輝かせて見てくる二人に男性陣二人はタジタジだ。

「で、どうなんだ?やっぱり、二人の恋人はめちゃくちゃに美人なのか?写真見せてくれよ!!!」

メイが特に食い付き、メイが満足するまでしつこそうだ。

なんだか、質問責めに合いそうな予感がして、今すぐこの場を立ち去りたいタイジュだ。

「…え?そんな事無いよ、普通だよ。」

と、なんて事ないようにいうアーロラ。

「すっげー、恥ずかしいけど…めちゃくちゃに世界一かわいいよ。」

なんて、照れくさそうなタイジュ。

キウとメイにかなりお願いされて、アーロラは二人に圧倒され渋々ながらアプリ携帯の写メを見せてた。

そこには

…ホゥ…と、同性でありながら見惚れてしまうくらいの美少女が写っていた。
アーロラと並んでも引けを取らない彼女は、アーロラが綺麗としたら彼女は美人と言った感じだろうか。
もう、お似合いの二人としか言いようがない。

そんな彼女の事を“そんな事無い”の一言でで片付けられるアーロラは、照れ隠しじゃなきゃぶん殴ってるって思うくらい羨ましい話だ。こんなとんでもない美人滅多にいないぞ。
やっぱり、美形には美形がくっつくんだなとつくづく思わされた。現実を見せつけられた気分になり、キウとメイはズ〜ンと気持ちが沈んでしまった。もう、気持ちはブルーだ。


次にアーロラ達はタイジュの写メを見せてもらった。
タイジュが選ぶくらいの彼女だから、どうせとんでもないパーフェクト美人なんだろうなと想像しながら。

どれどれ、どんなタイプの美人さんかな?なんて、ドキドキしながら見てみると


……!!!!???


そこに映し出された女の子は、みんなが予想だにしない女性が!!?

……え???

そこに映し出されていたのは

ショウ程ではないがぽっちゃりで地味な子だった。いつも冷静なアーロラも絶句という表情をしている。

「この子、タイジュの恋人???」

三人はパチクリと驚愕の表情で顔を見合わせていた。

「…えっ…と、ほんわかして優しそうな人だね。」

キウは、写メを見て何とかタイジュを傷つけないように言葉を選びながらタイジュの彼女(?)を褒めた。


…まずい…それ以上、言葉が見つからない。

この地味でぽっちゃりな女の人が、タイジュの彼女だなんて信じられない。

タイジュはこの通り凄くイケメンだし、何に対しても卒なくこなすオールラウンダーのような万能系だ。

それだけでなく、性格も優しくて面倒見が良く細やかな所にまで気が配れる、それでいていざって時は男らしく前に立ってくれる文句のつけようのない、いい男だ。

タイジュは、自分達の自慢だ。

そんな人が…こんな…、こんなって言ったら失礼なのは分かるけど…こんな…

タイジュと付き合う女性は、容姿もさることながら全てにおいて完璧な女性じゃないと納得できない。
そういう女性でなければタイジュと釣り合わない。嫌だ。と、いう気持ちがどうしても前に出てきてしまう。

三人の気持ちは一緒だったのだろう。
タイジュの彼女を見て、ガッカリもいい所だし、絶対こんなの違う!タイジュ、目を覚まして!!と、あまりのショックに声を失っていた。


「うん。恋人っていうか、婚約者。」

なんて、タイジュからビックリ発言まで飛び出してきた。キウとメイはショックのあまり絶望的な気持ちになってしまった。

だが、絶望的な顔をしている二人をよそに
これには何か事情があるんじゃないかと感じた、アーロラは冷静に考えて思った事を口に出した。

「…もしかして、家同士が決めた政略結婚?」

その発言に、キウとメイはハッとした。
そうだった。忘れがちだけど、タイジュは王子様だったんだ。だとしたら、そんな話があってもおかしくない。

「そうだよ。」

と、答えるタイジュに、みんななんとも言えないような顔をしていた。その反応を予測していたかのようにタイジュは

「確かに政略結婚って事にはなるんだろうけど。
俺は彼女を好きだし、俺の思い上がりじゃなきゃ彼女も俺の事を好きなはずだから問題ないよ。
…ただ、彼女が…」

と、言いかけた所で、何とも言いがたい微妙な顔をしてムグッと黙ってしまった。
そんなタイジュのただならぬ様子に、アーロラ達はとても興味が湧き教えて教えてと無言の圧をかけてきた。

その圧に負けたタイジュは、はぁ〜〜〜と、心の中で深くため息をつくと

「彼女は、ちょっと変わってる所があってさ。
あー…、でも。これ言うと、自意識過剰とか思われそうで言いづらいんだけど。
彼女、ファンみたいでさ…俺の…。それが悩みっていうか…う〜ん…」

と、よほど恥ずかしく喋りづらい事だったのだろう。
声が尻すぼみになっているし、少しげんなりした表情をしていた。

…ん?婚約者なのにファン??
どういう事と、首を傾げるもまだまだ話に食い付いてくる三人。

もう、これ以上話したら恥ずかしぬから勘弁してくれと苦笑いして、タイジュは教えてくれなかった。
三人はケチだとか、それくらいいいじゃんなんてブーブー言ってたが、タイジュは苦笑いしたままスルーしていた。

それでも、あまりに三人がしつこいので


「そういえば、アーロラの彼女凄く美人だよな!どこで知り合ったんだ?」

と、自分の話題から逸らしたくてアーロラに話題を振った。まさか、自分に振ってくるとは思わなく焦ったアーロラがタイジュを見ると、意地悪い顔してニッと笑って見せてきた。
このヤロー、いい性格してるよ!と、アーロラは思いつつメイとキウの質問責めにどうかわそうかと四苦八苦していた。


遠くからその様子を眺めていたショウは、話してる内容こそ分からないがキウちゃんがみんなと仲良しで良かったなと微笑ましい気持ちになっていた。

ショウは、キウが同じ学校の人というだけで恐怖の対象で、それだけの理由で関わりたくはないのだ。どんなにキウが優しいいい子であってもだ。

だが、“それだけ”といってもしっかりそれなりの理由だってある。イジメがあった時学校が一緒だった人を見ると、どうしても当時の嫌な事が頭の中にフラッシュバックしてとても辛く耐えられない気持ちになる。


また、キウも遠くからショウの様子を見てショウが仲間達とうまくいっているようで良かったと思っていた。
学校でお互い色々と辛い事はあったが、自分とショウは気が合いそうだなと感じていて友達になりたいと思っている。
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