イケメン従者とおぶた姫。
サンクチュアリ大聖堂。
ヨウコウとミミにとって、あまりに居心地が良かったのでダラダラとムーサディーテ国の都心に居続けた為
あれから更に一週間経っていた。
もっと、この国に居たかったのだが、流石に金銭的に底を尽きそうになったのでヨウコウ達も渋々次の国へ向かって旅立った。
と、いうのも国から渡される一定額のお金は、新たな国に入国した際に渡されるからだ。
さて、次の国。サンクチュアリ大聖堂へ入国し、ヨウコウ達は驚いた。
町全体が大聖堂の一角になっており、白で埋め尽くされた街並みは空の青と合わさりなんと神秘的なのだろうか。
その中に、青色のつる草模様の装飾とステンドグラス窓が美しい特別に大きい建物がある。
その建物の上には大きなガラスの鐘がついていて、鐘には様々な形や種類の宝石が埋め込まれている。それが太陽の光によって様々な色に反射されとても美しい。
おそらく、この建物に聖女が住んでいるのだろう事が想像できる。
そして、町の3方向に
真っ黒な9本のバラ。
真っ赤な99本のバラ。
真っ白な999本のバラ。
が、それぞれ分けて植えられていた。
デザインは様々であるが、町の人々は修道服のような服を着ている。色も紺色で統一してある。多分、ここの国の民族衣装のようなものなのかもしれない。
「…なんと言えばいいのか、なんと神聖なる国なのだろう。心が洗われるようだ。」
ヨウコウは、思わず感嘆の声を出していた。
町の中心には、大きな噴水がありその中心には剣を地面に刺し倒れ込んだ姿の女神像が建っている。この女神像はこの国には不釣り合いな真っ黒な色をしていた。違和感はあるものの一部を抜かし、一同はなんと神秘的で美しいのだろうと感動していた。
何より、なんてタイミングがいいのか。
ヨウコウ達が、この国に朝を踏み入れた瞬間に大聖堂のガラスの鐘が鳴り響いのだ。
なんだか、この国に祝福されているような気持ちになりヨウコウ達は気分良く歩いていた。
心無しか、各薔薇達がキラキラ輝いている様に見えた。
だが、鐘が鳴り響いたと同時に人々は驚き
「…鐘が鳴ってる!!?」
「今まで鐘が鳴った音なんて聞いた事ないぞ!」
「あの鐘は飾りじゃなかったの!?」
なんて、どよめき、どうしたもんかと鐘の前にゾロゾロと人々が集まってきたのだった。
その異様さにヨウコウ達も不安になり、鐘を見上げていた。鐘は今も大きく揺れ
リゴーン、リゴーン
と、鳴り続けている。
すると、しばらくしてから交差部の八角形の採光塔がとても美しいのが特徴の大きな建物の最上階の扉が開き、中から人が出てきた。
青の修道服に白銀の胸当てを装着した二人の兵が出てきて中心を開け両端に控えた。武器も全て白銀で統一されている。
すると、更に中からいかにも地位が高そうな人物が出てくると
「皆さん、静粛にして下さい。」
一言、声を掛けただけで人々は静かになり、その人物に注目していた。
その声のあと、2人の女性達が出て来た。
…ザワ…
「聖女様だ。」
「わざわざ、聖女様が姿をお見せになるなんて…」
と、人々は静かにざわつきはじめた。
聖女様と呼ばれる女性二人は
ピンク色の目と髪色の褐色肌の美女
ブラウン色の髪にグリーンの目、肌色のそばかすが目立つメガネの平凡な女性
だった。
二人は、大部分が白生地の修道服とドレスを掛け合わせたようなデザインの服を着ていた。
服のデザインやアクセントに彼女達の目の色と同じ色が使われている。
ヨウコウ達は、何事かとポカーンとしながら聖女様達を見ていると
「大聖女様、直々のお声です。」
なんて、言葉が掛かると人々は緊張した様子でじっと聖女様達を見ていた。
すると、聖女様達の真ん中に一人のそれはそれは美しい美少女が現れた。
ウエーブがかったフワフワした絹糸のような金色の腰まで長い髪、真っ白な肌にピンク色の頬。パライバトルマリン(青緑)色の目。
全体的に、純潔、汚れなき尊い存在を思わせる。“神聖”という言葉が似合いそうな凛々しくも可愛いらしい顔立ちだ。
服も全体的に純白の白をベースに、金の刺繍などが施されたドレス型の修道服を着ていて容姿とあいまって崇高でいて尊大に見える。
「皆さんが毎日を健やかに過ごせる事を心よりお祈りいたしています。
皆さんは、礼拝堂の鐘が鳴っている事にさぞ驚いている事かと思います。
ですが、ご安心ください。これは“歓迎の音”です。この鐘が鳴ったという事は、この地に“ディヴァイン様”がいらっしゃったという喜ばしい事なのです。」
彼女の柔らかく可愛いらしい声は、聞いていてとても耳が心地よく優しい。
その容姿と声で、告げられる言葉はとてもありがたく尊く感じる。
人々も祈るポーズをし、なんて素晴らしい事なんだと感謝し喜んでいる。
「ただ、残念な事にディヴァイン様のご意向は分かりかねません。
そのお姿を現してくださらない事を考えれば、おそらくお忍びで遊びにいらしただけかもしれませんし、私達の様子を見にいらしたのかも分かりません。
ですが、私の前に姿を現さない事をみると悪い予兆などではないと思われます。
なので、皆さんは安心して普段通り過ごして下さい。」
そう言って、大聖女様は建物の中に入って行き、それに続いて聖女様、神官、兵と続いていった。
人々は“ディヴァイン様”が来ているという事に興奮し町中がお祭り騒ぎになっていた。
おかげで、町中のお店は大感謝祭として大セールが行われたり、演奏会、大道芸、屋台など楽しいイベントが行われた。
観光のパンフレットを見れば、どうやらこの国では“ディヴァイン様”は宇宙の全てを支配し守る者と信じられ崇拝されているようだ。
楽しいイベントもできた事で、さっそくヨウコウはミミとゴウラン、ミオを引き連れ祭りを楽しみに行った。
もちろん、ショウ達も祭りを大いに楽しんでいたが…ショウは何だかモヤモヤしていた。
母国の商工王国を出て旅を進めるうちに、何故か心の中がソワソワが強く感じていくような感じがしていた。
そして、この国に入るとソワソワが強くそして、何故かモヤモヤが止まらなかった。
…何かに呼ばれているような気がして…
ショウは、それが気になって気になって我慢ができず
「…ちょっと、気になる事あるんだけど。そっちに行こ!」
と、何となくの勘だろう。それに任せて歩いて行った。もちろん、サクラはずっとショウと手を繋いでいるので、それに引っ張られる形で慌てて着いて行く。その後をオブシディアンとシープも続いた。
サクラは、ショウのちょっとしたかわいい我が儘とニコニコ笑顔だったが、シープは別の場所に行きたいのにと不貞腐れオブシディアンに宥められていた。
そして、着いた場所は
大きな噴水。
ショウはその中心に建つ5m以上はあろうか大きな美しい剣を掲げる真っ黒な女神像を見上げた。女神像の表情は希望に満ち溢れ喜びで今にも動き出しそうな脈動感がある。
ショウが気になっているくらいだから、よほど希少価値の高い像なのだろうとサクラ達も女神像を見上げたが、自分達にはどこの国にでもある様な平凡な芸術作品と思ってしまいこの女神像の素晴らしさは…残念ながら分からない。
だが、気のせいか?
…最初見た時と何だか変わってるような気がするが?
最初からこんな形だっただろうか?
女神像を囲うように3方向に植えてある薔薇がキラキラ輝いて見えるのは太陽の光の影響か?
女神像を見た町の人達の様子を見ても、なんらリアクションがないので自分の記憶違いかとサクラ達は思った。
ショウと一緒ならサクラは何でもいいのかもしれないが、ジッと女神像を見てるだけのショウに付きそうオブシディアンとシープにとってはひどく長い時間に感じつまらない時間だけが過ぎていくだけだ。
「…なあ、いつまでその女神像を眺めているつもりなんだ?そんなに、この女神像が素晴らしい作品なのか?」
いい加減、しびれを切らしたシープはショウに話しかけた。
すると、よほど集中して鑑賞していたのだろうか…ショウは、シープの声にハッとし
「…あ!ごめんね?…でも…」
と、みんなを待たせた事に謝るつつも、再度女神像を見上げショウは言った。
「何だか、“呼ばれてる”ような気がするの。」
それを聞いた、サクラ達はゾッとした。
まさか…と。三人の脳裏にあの黒い靄の姿が浮かぶ。
用心に越した事はないと、三人は目配せをし
「…ショウ様、申し訳ありません。」
「…ヒャッ!サクラ、どうしたの!?私、自分で歩けるよ?」
サクラは魔導の力で巨体のショウを浮かせるとショウを抱っこして、そこから離れた場所へと急足で離れた。いきなりのサクラの行動にショウは驚き声を掛けるが、その度にサクラは心苦しそうにショウの言葉を振りきり謝っていた。
その間も、ショウはチラチラと女神像を気にしていて、シープもショウの視線につられて女神像を見ると心無しか女神像がカタカタと揺れているような気がした。
何となくだが、あのガラス製の大きな鐘とあの女神像が共鳴しているように感じるシープだ。
よく分からないが、この国にも“何かがある”気がして早くここから出て行きたいサクラ。
只ならぬ事を感じとっている様子のシープに、オブシディアンは言葉飛ばしを使い聞いてみた。
『どうした?シープも何か感じるか?』
「…ああ。微かだが、あのガラスの鐘に“念”を感じる。」
『…念とは、どういう事だ?』
「強い執着というのか、人の思いかな?言葉に表しづらいが、その感情のようなものが伝わってくるような感覚がある。
…そして、あの女神像はそれに反応して何かが起こり始めてるような気がする。」
言葉飛ばしに対し、シープは小声で答える。言葉飛ばしはサクラには筒抜けなので、あくまでショウに聞かれないように会話をする。
何だか気になって仕方がないシープは再度、鐘を見ると
…ギョッ!!?
…あれ?
いつの間にか鐘が鳴らなくなったと思ったら、鐘がひっくり返ってるし…何なら、屋根の中にあったはずの鐘が、屋根の上に乗ってる!!?
自分の見間違いか?
と、目を凝らして鐘を見れば…ひっくり返った鐘はワイングラスのような形状をしていた。
…何なんだ。一体何が起こっているのかと恐怖を感じた。
その事をオブシディアンに伝えるも、オブシディアンはそんな物は見えないしガラスの鐘なんてない。よく見てみろ。
なんて、オブシディアンに言われ不信に思いながらも鐘のある場所を見ると、そこには
全体的に白色で、金と青でシンプルな模様の入った鐘があった。
けど、やっぱり屋根の上には例のガラスの鐘がある。
…何か、おかしい。
シープの話を聞き、オブシディアンは
『…ショウ様。ガラスの鐘が見えますか?』
と、聞いた。すると
「綺麗だよね!でも、どうして屋根の上に置いちゃったのかな?白い鐘と取り替えちゃうのかな?ダイヤモンドの鐘の方が綺麗で好きなんだけど。もったいないよね。」
なんて、答えてきた。
それを聞き、サクラ達はやはり何かあると警戒を強めショウをあの女神像に近づけないと強く思うのだった。
そして、ヨウコウ達一行はこの国でしか入手できない武器や魔導書など突如行われた大セールにより、普段なら買えないような貴重なアイテムなど手に入れる事ができホクホクしていた。
夜もふけ、それぞれみんな自分の部屋で自由に休んでいた。
その頃、聖女様が住む大聖堂の一番大きな建物ホーリードームでは。
聖女と大神官だけが入る事が許される礼拝堂で、祈りを捧げていた大聖女エマは白く輝く光に包まれた。
大聖女の後ろで祈りを捧げていた聖女達は、それに驚き慌てたようにエマに駆け寄った。
「…エマ様!何があったのですか?」
「大丈夫ですか!?」
そんな二人にエマは言った。
「“生まれます”聖なる全知全能の君主様」が!!」
その言葉に聖女様はおろか、祈りを見守っていた大神官までも驚き聞いた。
「それは、どういう事ですか?」
大神官の質問に、大聖女は言った。
「代々の大聖女達だけ伝わる“お告げ”。
かつて“大きな罪を犯した君主様が、“聖”が集中するこの地を見つけ穢れを落とす為にここに眠っておられます。」
「…な、なんですって!?この地に君主様が眠られていたというのですか?一体、この地のどこに…?」
と、ピンク髪の聖女ソフィアは驚き質問する。
「…はい。実は君主様がどこに眠られているのかは…私にも分かりません。ですが、この地の何処かにいらっしゃる事は間違いありません。」
「…そうなのね。」
眼鏡をかけた聖女のオリビアは、もしかしたら君主様のお姿を拝見できるかもしれないと心躍っていたが、エマでさえ何処にいるか分からないのであればそれは叶わないと思いガッカリしてしまった。
ガッカリするオリビアに、苦笑いしつつエマは話を続けた。
「君主様の穢れを消し去る為にこの国は作られました。聖女から民まで、祈りを捧げる事で君主様の穢れを落とし消してきたのです。」
この国ができて歴史は長いが、何千年もの間、“浄化”の力を持つ偉大な聖女とチリほどまでに微力ではあろうが祈りを捧げる多くの人々の真っ直ぐな純粋さで、長い時間をかけ“大きな罪”という汚れを落としてきたのだろう。
だが、疑問だ。
祈りの中には純粋な祈りもあるだろうが、邪な心、憎しみや怒りなど負の祈りもある筈だ。むしろ、そっちの祈りの方が断然に多い気がする。
そうなれば、穢れが落ちるどころか汚れが増す一方なのではないかと思うのだがと二人の聖女は思ったのだが。
「…なるほど。礼拝堂が3つに分かれているのは、そういう事だったのですね。」
と、納得したように大神官は言った。
そこで二人の聖女達も、そうかと思った。
この大聖堂には3つの礼拝堂がある。
一つは、聖女が住むここホーリードーム内。最上階にある聖女と大神官のみが入る事の許される祈り部屋、カタルシス礼拝堂。
ここは、“聖なる力”“浄化”が集まるパワースポットとして有名なサンクチュアリ大聖堂。その中でも特に強く集中している場所である。
ここでは、朝昼晩とほぼ毎日、聖女達は浄化の祈りを捧げている。
ここの一階では、一般の人達が幸せを願い、日々の感謝を伝える場所となっている。
二つ目の礼拝堂は、町の一番右端にある、デセーオ礼拝堂。ここでは、自分の願い事や願望を祈る場所である。
そして、三つ目の礼拝堂なのだが…。町の一番左にあり螺旋状の階段を降りた深い地下にあるコンフェッシオ礼拝堂。ここは、消えない蝋燭の火のみの灯りしかないので薄暗くなっている。ここでは、怒り、憎しみ、呪いなど負を懺悔する、吐き出す場所となっている。
そこは、聖域、パワースポットから外れた場所となっていた。
実は、ホーリードームは他と遮断されていて余計な邪念が入らない特別な場所になっている。更にカタルシス礼拝堂は他の場所と遮断されるよう厳重になっている。
なるほど。そんな理由があるのならば納得の仕組みだ。
「そして、あのダイヤモンドで作られた鐘は実は“聖杯”なのです。
鐘の音が鳴るという事は、完全に君主様の穢れの“浄化”が済んだ事を意味します。
次の段階に入ると、鐘がひっくり返り聖杯へと形を変えます。
外を見て下さい。
おそらく、今現在、祝福の雨が降っている事でしょう。」
と、いうエマの言葉で、聖女二人と大神官は慌てて窓を開けて外を見た。
すると、エマの言った通り雨が降っていたのだが
「…こ、これは…!!?」
「なんて事なんでしょう!?」
「…綺麗…」
澄みきった夜空に、まるで宝石箱をひっくり返り返したかのように色とりどりに輝く星。
そこに幾重にも重なったような金色のカーテンの様なオーロラが広がる。
虹色に輝くきめ細やかな雨が優しく降り注いでいて、雨の美しい音色が心地良い。
人々が住む建物は深い霧で覆われ雲海で隠れて、まるで雲の上の世界にいるような気持ちになる。
おそらく、人々はこの濃い霧で隠れ何が起こっているのか知らず過ごしているのだろう。
大聖堂の最上階でしか見られないであろう、この現象を拝むことができる自分達はなんと幸運な事か。
なんと、神秘的で幻想的な風景なのだろう。
夢でも見ている気分だ。
ホゥ…と、幻想的な風景を見ていると次に、
3方向にある薔薇から聖杯に向かい金色の橋ができ、そこから滑り台のように虹色の雨が聖杯に注がれていった。
みるみる間に満タンになった聖杯は、白い光に導かれる様に噴水の女神像の所まで浮かんで行き、女神像は聖杯を両手で掲げ
なんと、その聖杯の水を飲み干した。
すると、驚く事に真っ黒な女神像はみるみるうちに真っ白な色に変わり
そして、どんどんお腹が膨れていき女神像はそのお腹を大切に抱え、慈愛に満ちた聖母のような姿に変わった。
3方向に植えられたバラの色が全て青色に変わった。
それから
紫色に輝く無数の剣が女神像を取り囲むと強烈な光を放ち、エマ達はそのまま気を失ったのだった。
気がついた時には、先ほどまでの神秘的な現象はまるで夢幻のように、すっかり無くなって今までと変わらない風景に戻っていた。
だが、あまりに神秘的で幻想的な風景が忘れられず、現実になかなか戻ってこられず放心状態だったエマ達であったが
ガラガラ…と町中に何かが崩れ落ちる音が響き渡った事によりハッと我に返ったのだった。
「…な、なにっ!?何が起こったというの?」
4人は慌てて、大きな音のする場所を見下ろすと、なんと、噴水の女神像が音を立てて跡形もなく崩れ落ちるのが見えた。
「な、なんて事なの!?」
「…あら?女神像の近くに人がいますわ!安全確保しなければ!」
二人の聖女は、どうしたらいいのかとアワアワとそれを眺め大神官は呆然である。
ーーーーー
ーーー
女神像が崩れ落ちる少し前に遡る。
真夜中、ミミとレッカは大きな女神像の前で待ち合わせしイチャイチャしていた。
あいにく空は厚い雲に覆われ、空と大聖堂の上層部は雲で隠れてしまっているが、そんな事はこの二人には全く関係なかった。
むしろ、そんな妖しい雰囲気は二人の気持ちを昂らせる。
「この国は、本当に凄いな。この国には魔獣や妖魔達が一切いないんだからな。」
「そうですねぇ。
この神聖な場所でレッカ様と二人っきり。
目の前の女神様にも祝福されてるみたい。」
「ああ、そうだ。この女神は、愛し合う俺達を祝福してくれてる。
女神に誓おう!俺達の真実の愛を。永遠の誓いを!!」
「嬉しいですぅ!ミミもレッカ様を愛する事を永遠に誓いますぅ。女神様、私達の真実の愛を祝福してくださぁ〜い。」
なんて、本気なのか遊びなのか判断は難しいが二人が結婚式ごっこしてイチャついている時だった。
…ビキッ!!
と、いう音が聞こえたと思ったら
女神像のお腹に亀裂が入り、二人が…え?と、思う間に、ビキビキビキィッ!!!と女神像のお腹を中心に縦に割れていったかと思うと
そこから一気に
バラバラバラ……!!!!??
と、町中に響き渡るような大きな音を響かせ女神像は跡形もなく崩れ落ちてしまった。
二人は悲鳴をあげながら、助かりたいがあまり我先にと互いを押しのけあいながら逃げ、何とか瓦礫の下敷きにならずに済んだが…
何が起きたのかと理解に追いつかない二人がポカーンと、崩れ落ちた女神像を見ていると町中の家の明かりが次々とつきはじめ
「…な、なんだ!?今、物凄い音がしたぞっ!!」
「一体、何があったんだ?」
ゾロゾロと住人達が、慌てた様子で家の中から出てきた。
そして、崩れた女神像を見て大騒ぎし
レッカとミミが、女神像の所で何かしていたという複数人の証言から
二人が女神像を破壊した疑いがかけられ、レッカとミミは大慌てでその容疑を否定していた。
あれから更に一週間経っていた。
もっと、この国に居たかったのだが、流石に金銭的に底を尽きそうになったのでヨウコウ達も渋々次の国へ向かって旅立った。
と、いうのも国から渡される一定額のお金は、新たな国に入国した際に渡されるからだ。
さて、次の国。サンクチュアリ大聖堂へ入国し、ヨウコウ達は驚いた。
町全体が大聖堂の一角になっており、白で埋め尽くされた街並みは空の青と合わさりなんと神秘的なのだろうか。
その中に、青色のつる草模様の装飾とステンドグラス窓が美しい特別に大きい建物がある。
その建物の上には大きなガラスの鐘がついていて、鐘には様々な形や種類の宝石が埋め込まれている。それが太陽の光によって様々な色に反射されとても美しい。
おそらく、この建物に聖女が住んでいるのだろう事が想像できる。
そして、町の3方向に
真っ黒な9本のバラ。
真っ赤な99本のバラ。
真っ白な999本のバラ。
が、それぞれ分けて植えられていた。
デザインは様々であるが、町の人々は修道服のような服を着ている。色も紺色で統一してある。多分、ここの国の民族衣装のようなものなのかもしれない。
「…なんと言えばいいのか、なんと神聖なる国なのだろう。心が洗われるようだ。」
ヨウコウは、思わず感嘆の声を出していた。
町の中心には、大きな噴水がありその中心には剣を地面に刺し倒れ込んだ姿の女神像が建っている。この女神像はこの国には不釣り合いな真っ黒な色をしていた。違和感はあるものの一部を抜かし、一同はなんと神秘的で美しいのだろうと感動していた。
何より、なんてタイミングがいいのか。
ヨウコウ達が、この国に朝を踏み入れた瞬間に大聖堂のガラスの鐘が鳴り響いのだ。
なんだか、この国に祝福されているような気持ちになりヨウコウ達は気分良く歩いていた。
心無しか、各薔薇達がキラキラ輝いている様に見えた。
だが、鐘が鳴り響いたと同時に人々は驚き
「…鐘が鳴ってる!!?」
「今まで鐘が鳴った音なんて聞いた事ないぞ!」
「あの鐘は飾りじゃなかったの!?」
なんて、どよめき、どうしたもんかと鐘の前にゾロゾロと人々が集まってきたのだった。
その異様さにヨウコウ達も不安になり、鐘を見上げていた。鐘は今も大きく揺れ
リゴーン、リゴーン
と、鳴り続けている。
すると、しばらくしてから交差部の八角形の採光塔がとても美しいのが特徴の大きな建物の最上階の扉が開き、中から人が出てきた。
青の修道服に白銀の胸当てを装着した二人の兵が出てきて中心を開け両端に控えた。武器も全て白銀で統一されている。
すると、更に中からいかにも地位が高そうな人物が出てくると
「皆さん、静粛にして下さい。」
一言、声を掛けただけで人々は静かになり、その人物に注目していた。
その声のあと、2人の女性達が出て来た。
…ザワ…
「聖女様だ。」
「わざわざ、聖女様が姿をお見せになるなんて…」
と、人々は静かにざわつきはじめた。
聖女様と呼ばれる女性二人は
ピンク色の目と髪色の褐色肌の美女
ブラウン色の髪にグリーンの目、肌色のそばかすが目立つメガネの平凡な女性
だった。
二人は、大部分が白生地の修道服とドレスを掛け合わせたようなデザインの服を着ていた。
服のデザインやアクセントに彼女達の目の色と同じ色が使われている。
ヨウコウ達は、何事かとポカーンとしながら聖女様達を見ていると
「大聖女様、直々のお声です。」
なんて、言葉が掛かると人々は緊張した様子でじっと聖女様達を見ていた。
すると、聖女様達の真ん中に一人のそれはそれは美しい美少女が現れた。
ウエーブがかったフワフワした絹糸のような金色の腰まで長い髪、真っ白な肌にピンク色の頬。パライバトルマリン(青緑)色の目。
全体的に、純潔、汚れなき尊い存在を思わせる。“神聖”という言葉が似合いそうな凛々しくも可愛いらしい顔立ちだ。
服も全体的に純白の白をベースに、金の刺繍などが施されたドレス型の修道服を着ていて容姿とあいまって崇高でいて尊大に見える。
「皆さんが毎日を健やかに過ごせる事を心よりお祈りいたしています。
皆さんは、礼拝堂の鐘が鳴っている事にさぞ驚いている事かと思います。
ですが、ご安心ください。これは“歓迎の音”です。この鐘が鳴ったという事は、この地に“ディヴァイン様”がいらっしゃったという喜ばしい事なのです。」
彼女の柔らかく可愛いらしい声は、聞いていてとても耳が心地よく優しい。
その容姿と声で、告げられる言葉はとてもありがたく尊く感じる。
人々も祈るポーズをし、なんて素晴らしい事なんだと感謝し喜んでいる。
「ただ、残念な事にディヴァイン様のご意向は分かりかねません。
そのお姿を現してくださらない事を考えれば、おそらくお忍びで遊びにいらしただけかもしれませんし、私達の様子を見にいらしたのかも分かりません。
ですが、私の前に姿を現さない事をみると悪い予兆などではないと思われます。
なので、皆さんは安心して普段通り過ごして下さい。」
そう言って、大聖女様は建物の中に入って行き、それに続いて聖女様、神官、兵と続いていった。
人々は“ディヴァイン様”が来ているという事に興奮し町中がお祭り騒ぎになっていた。
おかげで、町中のお店は大感謝祭として大セールが行われたり、演奏会、大道芸、屋台など楽しいイベントが行われた。
観光のパンフレットを見れば、どうやらこの国では“ディヴァイン様”は宇宙の全てを支配し守る者と信じられ崇拝されているようだ。
楽しいイベントもできた事で、さっそくヨウコウはミミとゴウラン、ミオを引き連れ祭りを楽しみに行った。
もちろん、ショウ達も祭りを大いに楽しんでいたが…ショウは何だかモヤモヤしていた。
母国の商工王国を出て旅を進めるうちに、何故か心の中がソワソワが強く感じていくような感じがしていた。
そして、この国に入るとソワソワが強くそして、何故かモヤモヤが止まらなかった。
…何かに呼ばれているような気がして…
ショウは、それが気になって気になって我慢ができず
「…ちょっと、気になる事あるんだけど。そっちに行こ!」
と、何となくの勘だろう。それに任せて歩いて行った。もちろん、サクラはずっとショウと手を繋いでいるので、それに引っ張られる形で慌てて着いて行く。その後をオブシディアンとシープも続いた。
サクラは、ショウのちょっとしたかわいい我が儘とニコニコ笑顔だったが、シープは別の場所に行きたいのにと不貞腐れオブシディアンに宥められていた。
そして、着いた場所は
大きな噴水。
ショウはその中心に建つ5m以上はあろうか大きな美しい剣を掲げる真っ黒な女神像を見上げた。女神像の表情は希望に満ち溢れ喜びで今にも動き出しそうな脈動感がある。
ショウが気になっているくらいだから、よほど希少価値の高い像なのだろうとサクラ達も女神像を見上げたが、自分達にはどこの国にでもある様な平凡な芸術作品と思ってしまいこの女神像の素晴らしさは…残念ながら分からない。
だが、気のせいか?
…最初見た時と何だか変わってるような気がするが?
最初からこんな形だっただろうか?
女神像を囲うように3方向に植えてある薔薇がキラキラ輝いて見えるのは太陽の光の影響か?
女神像を見た町の人達の様子を見ても、なんらリアクションがないので自分の記憶違いかとサクラ達は思った。
ショウと一緒ならサクラは何でもいいのかもしれないが、ジッと女神像を見てるだけのショウに付きそうオブシディアンとシープにとってはひどく長い時間に感じつまらない時間だけが過ぎていくだけだ。
「…なあ、いつまでその女神像を眺めているつもりなんだ?そんなに、この女神像が素晴らしい作品なのか?」
いい加減、しびれを切らしたシープはショウに話しかけた。
すると、よほど集中して鑑賞していたのだろうか…ショウは、シープの声にハッとし
「…あ!ごめんね?…でも…」
と、みんなを待たせた事に謝るつつも、再度女神像を見上げショウは言った。
「何だか、“呼ばれてる”ような気がするの。」
それを聞いた、サクラ達はゾッとした。
まさか…と。三人の脳裏にあの黒い靄の姿が浮かぶ。
用心に越した事はないと、三人は目配せをし
「…ショウ様、申し訳ありません。」
「…ヒャッ!サクラ、どうしたの!?私、自分で歩けるよ?」
サクラは魔導の力で巨体のショウを浮かせるとショウを抱っこして、そこから離れた場所へと急足で離れた。いきなりのサクラの行動にショウは驚き声を掛けるが、その度にサクラは心苦しそうにショウの言葉を振りきり謝っていた。
その間も、ショウはチラチラと女神像を気にしていて、シープもショウの視線につられて女神像を見ると心無しか女神像がカタカタと揺れているような気がした。
何となくだが、あのガラス製の大きな鐘とあの女神像が共鳴しているように感じるシープだ。
よく分からないが、この国にも“何かがある”気がして早くここから出て行きたいサクラ。
只ならぬ事を感じとっている様子のシープに、オブシディアンは言葉飛ばしを使い聞いてみた。
『どうした?シープも何か感じるか?』
「…ああ。微かだが、あのガラスの鐘に“念”を感じる。」
『…念とは、どういう事だ?』
「強い執着というのか、人の思いかな?言葉に表しづらいが、その感情のようなものが伝わってくるような感覚がある。
…そして、あの女神像はそれに反応して何かが起こり始めてるような気がする。」
言葉飛ばしに対し、シープは小声で答える。言葉飛ばしはサクラには筒抜けなので、あくまでショウに聞かれないように会話をする。
何だか気になって仕方がないシープは再度、鐘を見ると
…ギョッ!!?
…あれ?
いつの間にか鐘が鳴らなくなったと思ったら、鐘がひっくり返ってるし…何なら、屋根の中にあったはずの鐘が、屋根の上に乗ってる!!?
自分の見間違いか?
と、目を凝らして鐘を見れば…ひっくり返った鐘はワイングラスのような形状をしていた。
…何なんだ。一体何が起こっているのかと恐怖を感じた。
その事をオブシディアンに伝えるも、オブシディアンはそんな物は見えないしガラスの鐘なんてない。よく見てみろ。
なんて、オブシディアンに言われ不信に思いながらも鐘のある場所を見ると、そこには
全体的に白色で、金と青でシンプルな模様の入った鐘があった。
けど、やっぱり屋根の上には例のガラスの鐘がある。
…何か、おかしい。
シープの話を聞き、オブシディアンは
『…ショウ様。ガラスの鐘が見えますか?』
と、聞いた。すると
「綺麗だよね!でも、どうして屋根の上に置いちゃったのかな?白い鐘と取り替えちゃうのかな?ダイヤモンドの鐘の方が綺麗で好きなんだけど。もったいないよね。」
なんて、答えてきた。
それを聞き、サクラ達はやはり何かあると警戒を強めショウをあの女神像に近づけないと強く思うのだった。
そして、ヨウコウ達一行はこの国でしか入手できない武器や魔導書など突如行われた大セールにより、普段なら買えないような貴重なアイテムなど手に入れる事ができホクホクしていた。
夜もふけ、それぞれみんな自分の部屋で自由に休んでいた。
その頃、聖女様が住む大聖堂の一番大きな建物ホーリードームでは。
聖女と大神官だけが入る事が許される礼拝堂で、祈りを捧げていた大聖女エマは白く輝く光に包まれた。
大聖女の後ろで祈りを捧げていた聖女達は、それに驚き慌てたようにエマに駆け寄った。
「…エマ様!何があったのですか?」
「大丈夫ですか!?」
そんな二人にエマは言った。
「“生まれます”聖なる全知全能の君主様」が!!」
その言葉に聖女様はおろか、祈りを見守っていた大神官までも驚き聞いた。
「それは、どういう事ですか?」
大神官の質問に、大聖女は言った。
「代々の大聖女達だけ伝わる“お告げ”。
かつて“大きな罪を犯した君主様が、“聖”が集中するこの地を見つけ穢れを落とす為にここに眠っておられます。」
「…な、なんですって!?この地に君主様が眠られていたというのですか?一体、この地のどこに…?」
と、ピンク髪の聖女ソフィアは驚き質問する。
「…はい。実は君主様がどこに眠られているのかは…私にも分かりません。ですが、この地の何処かにいらっしゃる事は間違いありません。」
「…そうなのね。」
眼鏡をかけた聖女のオリビアは、もしかしたら君主様のお姿を拝見できるかもしれないと心躍っていたが、エマでさえ何処にいるか分からないのであればそれは叶わないと思いガッカリしてしまった。
ガッカリするオリビアに、苦笑いしつつエマは話を続けた。
「君主様の穢れを消し去る為にこの国は作られました。聖女から民まで、祈りを捧げる事で君主様の穢れを落とし消してきたのです。」
この国ができて歴史は長いが、何千年もの間、“浄化”の力を持つ偉大な聖女とチリほどまでに微力ではあろうが祈りを捧げる多くの人々の真っ直ぐな純粋さで、長い時間をかけ“大きな罪”という汚れを落としてきたのだろう。
だが、疑問だ。
祈りの中には純粋な祈りもあるだろうが、邪な心、憎しみや怒りなど負の祈りもある筈だ。むしろ、そっちの祈りの方が断然に多い気がする。
そうなれば、穢れが落ちるどころか汚れが増す一方なのではないかと思うのだがと二人の聖女は思ったのだが。
「…なるほど。礼拝堂が3つに分かれているのは、そういう事だったのですね。」
と、納得したように大神官は言った。
そこで二人の聖女達も、そうかと思った。
この大聖堂には3つの礼拝堂がある。
一つは、聖女が住むここホーリードーム内。最上階にある聖女と大神官のみが入る事の許される祈り部屋、カタルシス礼拝堂。
ここは、“聖なる力”“浄化”が集まるパワースポットとして有名なサンクチュアリ大聖堂。その中でも特に強く集中している場所である。
ここでは、朝昼晩とほぼ毎日、聖女達は浄化の祈りを捧げている。
ここの一階では、一般の人達が幸せを願い、日々の感謝を伝える場所となっている。
二つ目の礼拝堂は、町の一番右端にある、デセーオ礼拝堂。ここでは、自分の願い事や願望を祈る場所である。
そして、三つ目の礼拝堂なのだが…。町の一番左にあり螺旋状の階段を降りた深い地下にあるコンフェッシオ礼拝堂。ここは、消えない蝋燭の火のみの灯りしかないので薄暗くなっている。ここでは、怒り、憎しみ、呪いなど負を懺悔する、吐き出す場所となっている。
そこは、聖域、パワースポットから外れた場所となっていた。
実は、ホーリードームは他と遮断されていて余計な邪念が入らない特別な場所になっている。更にカタルシス礼拝堂は他の場所と遮断されるよう厳重になっている。
なるほど。そんな理由があるのならば納得の仕組みだ。
「そして、あのダイヤモンドで作られた鐘は実は“聖杯”なのです。
鐘の音が鳴るという事は、完全に君主様の穢れの“浄化”が済んだ事を意味します。
次の段階に入ると、鐘がひっくり返り聖杯へと形を変えます。
外を見て下さい。
おそらく、今現在、祝福の雨が降っている事でしょう。」
と、いうエマの言葉で、聖女二人と大神官は慌てて窓を開けて外を見た。
すると、エマの言った通り雨が降っていたのだが
「…こ、これは…!!?」
「なんて事なんでしょう!?」
「…綺麗…」
澄みきった夜空に、まるで宝石箱をひっくり返り返したかのように色とりどりに輝く星。
そこに幾重にも重なったような金色のカーテンの様なオーロラが広がる。
虹色に輝くきめ細やかな雨が優しく降り注いでいて、雨の美しい音色が心地良い。
人々が住む建物は深い霧で覆われ雲海で隠れて、まるで雲の上の世界にいるような気持ちになる。
おそらく、人々はこの濃い霧で隠れ何が起こっているのか知らず過ごしているのだろう。
大聖堂の最上階でしか見られないであろう、この現象を拝むことができる自分達はなんと幸運な事か。
なんと、神秘的で幻想的な風景なのだろう。
夢でも見ている気分だ。
ホゥ…と、幻想的な風景を見ていると次に、
3方向にある薔薇から聖杯に向かい金色の橋ができ、そこから滑り台のように虹色の雨が聖杯に注がれていった。
みるみる間に満タンになった聖杯は、白い光に導かれる様に噴水の女神像の所まで浮かんで行き、女神像は聖杯を両手で掲げ
なんと、その聖杯の水を飲み干した。
すると、驚く事に真っ黒な女神像はみるみるうちに真っ白な色に変わり
そして、どんどんお腹が膨れていき女神像はそのお腹を大切に抱え、慈愛に満ちた聖母のような姿に変わった。
3方向に植えられたバラの色が全て青色に変わった。
それから
紫色に輝く無数の剣が女神像を取り囲むと強烈な光を放ち、エマ達はそのまま気を失ったのだった。
気がついた時には、先ほどまでの神秘的な現象はまるで夢幻のように、すっかり無くなって今までと変わらない風景に戻っていた。
だが、あまりに神秘的で幻想的な風景が忘れられず、現実になかなか戻ってこられず放心状態だったエマ達であったが
ガラガラ…と町中に何かが崩れ落ちる音が響き渡った事によりハッと我に返ったのだった。
「…な、なにっ!?何が起こったというの?」
4人は慌てて、大きな音のする場所を見下ろすと、なんと、噴水の女神像が音を立てて跡形もなく崩れ落ちるのが見えた。
「な、なんて事なの!?」
「…あら?女神像の近くに人がいますわ!安全確保しなければ!」
二人の聖女は、どうしたらいいのかとアワアワとそれを眺め大神官は呆然である。
ーーーーー
ーーー
女神像が崩れ落ちる少し前に遡る。
真夜中、ミミとレッカは大きな女神像の前で待ち合わせしイチャイチャしていた。
あいにく空は厚い雲に覆われ、空と大聖堂の上層部は雲で隠れてしまっているが、そんな事はこの二人には全く関係なかった。
むしろ、そんな妖しい雰囲気は二人の気持ちを昂らせる。
「この国は、本当に凄いな。この国には魔獣や妖魔達が一切いないんだからな。」
「そうですねぇ。
この神聖な場所でレッカ様と二人っきり。
目の前の女神様にも祝福されてるみたい。」
「ああ、そうだ。この女神は、愛し合う俺達を祝福してくれてる。
女神に誓おう!俺達の真実の愛を。永遠の誓いを!!」
「嬉しいですぅ!ミミもレッカ様を愛する事を永遠に誓いますぅ。女神様、私達の真実の愛を祝福してくださぁ〜い。」
なんて、本気なのか遊びなのか判断は難しいが二人が結婚式ごっこしてイチャついている時だった。
…ビキッ!!
と、いう音が聞こえたと思ったら
女神像のお腹に亀裂が入り、二人が…え?と、思う間に、ビキビキビキィッ!!!と女神像のお腹を中心に縦に割れていったかと思うと
そこから一気に
バラバラバラ……!!!!??
と、町中に響き渡るような大きな音を響かせ女神像は跡形もなく崩れ落ちてしまった。
二人は悲鳴をあげながら、助かりたいがあまり我先にと互いを押しのけあいながら逃げ、何とか瓦礫の下敷きにならずに済んだが…
何が起きたのかと理解に追いつかない二人がポカーンと、崩れ落ちた女神像を見ていると町中の家の明かりが次々とつきはじめ
「…な、なんだ!?今、物凄い音がしたぞっ!!」
「一体、何があったんだ?」
ゾロゾロと住人達が、慌てた様子で家の中から出てきた。
そして、崩れた女神像を見て大騒ぎし
レッカとミミが、女神像の所で何かしていたという複数人の証言から
二人が女神像を破壊した疑いがかけられ、レッカとミミは大慌てでその容疑を否定していた。