イケメン従者とおぶた姫。
ファミリーの日、2日目。
変な夢を見たショウだったが
何だか見覚えのある様な気がしてちょっと気味が悪く感じ、思わず
「…サクラ…どこ?」
と、何とも言われようもない不安に襲われ、不安を掻き消したくて自然とサクラの名前びキョロキョロとサクラの姿を探してしまった。
でも、サクラの姿は見当たらなくて、ショウはベットから降りサクラの姿を探した。
そして、隣の部屋へ行くと大きなソファーに座り書類を広げているリュウキの後ろ姿があった。
そこで、ショウはようやくファミリーの日で、リュウキと親子水入らずで遊びに来てる事を思い出した。
ショウにとってリアリティのある夢を見て、何だか怖く感じたショウは
「…お父さん!」
と、リュウキの名を呼んだ。
リュウキは、持っていた書類をテーブルに置くと後ろを振り向き
「早いな。まだ、朝食まで時間があるぞ?」
と、ショウに声を掛けたのだが、何だか様子のおかしい娘を不審に思い
「…悪い夢でも見たか?」
そう問いかけると、ちょっと泣きそうな顔をしながら「…うん。」と、答えた娘に
「おいで。」
と、手招きし、横に大きな我が娘をギュッと抱きしめた。ショウは、それを嫌がる事なくリュウキにしがみつき甘えている。
大きな大きな赤ちゃんである。
怖い夢を見て、すっかり赤ちゃんがえりをしてしまった娘に、リュウキはヨシヨシと頭を撫でてやんわりと怖い夢の内容を聞いてみた。
ショウの夢内容を聞いて、正直リュウキは全身に寒気が走った。
何故なら、ショウの見た夢はサクラとロゼの過去の一部だと直感したからだ。
サクラとロゼ…そして、ダリアの繋がりが、うっすらとではあるが線と線で結びつきはじめた様に思えたからだ。
まず、オブシディアンから報告を受けたロゼについての内容と、ショウが話す夢でのロゼの内容が繋がっている。
ショウが感じとっているロゼの“素敵な人達7人”に関しても、ロゼはそれらを捨ててショウを選んだのだろう。
どういった経緯かは、まだ不明だが。
しかし、ショウの直感とやらと夢の様子を考えれば、ロゼが素敵な7人を一方的に振り切っただけで7人はそれに納得できていないのだろう。
と、なれば…面倒な事になりそうだ。
問題は、サクラだ。
それは、つまり…そういう事なのだろう。そうなれば厄介極まりない。
これが、何の意味も持たないショウの単なる夢であってほしいと願うばかりだ。
それから、ショウとリュウキは精いっぱい親子の時間を楽しみ、気がつけば3日間という短い日数はあっという間に過ぎてしまいお別れの時が来てしまった。
この時を待っていましたとばかりに、サクラとロゼは朝一番にショウを迎えに来たのだが
「…お父さん、もう行っちゃうの?」
ショウは、リュウキが国に帰る時間になると寂しさのあまりリュウキにくっ付き離れなくなっていた。
そんな娘にリュウキは
「ん?一緒に家に帰るか?俺は、その方が有り難い。」
そう言うと、ショウは渋々といった感じにリュウキを離しボロボロと泣いていた。
それを見てリュウキは、困ったように小さく笑った。
「いい子だ。だが、無理だけはするなよ?無理そうだったら、いつでも帰って来い。」
そう言って、力強くギュッとショウを抱きしめ、すぐに離した。
「そこの従者達も、ショウの事頼む。」
リュウキは、サクラとロゼを見てそう声を掛けると後ろ髪を引かれる思いでその場を去って行った。
しかし、リュウキが声を掛けた時の二人の反応の違いに苦笑いするしかない。
サクラは、“はあ?いちいち、お前なんかに言われなくても、しっかりやってるんだが!”と、いった感じに一瞬だけ苛ついた表情でリュウキを睨むと、直ぐに、いつも通りリュウキなんてガン無視でショウに構い倒している。
ロゼは、背筋をピーン!と、伸ばししっかりとリュウキを見て「ゴロニャーン!」と、鳴いた。まるで“任せて下さいニャン”と言っている様に聞こえる。
そして愛しい我が子は「お父さぁ〜ん、おどぉ〜〜ざぁぁ〜んっ!」と、わんわん泣いていた。
ショウの泣き声があまりに心苦しくて、チラリと後ろを振り返れば
サクラは大泣きするショウを抱きしめ耳元で何やら囁いている。さしづめ、“大丈夫ですよ、私が側にいます。”なんて言ってるに違いない。
ロゼは懸命にショウの頬に顔をグリグリと擦り付けたりショウの涙をチロチロ舐めたりして慰めていた。
…自分と離れただけでこんなにも泣かれるなんて、つい数ヶ月前の自分が見たら腰を抜かすほど驚くだろうなと感慨深い気持ちになっていた。
しかし、泣く我が子を置いて、その場を離れる事がこんなにも辛いとは…知らなかった。
永遠の別れなどではないし、旅が終われば帰って来るのは分かっている。それにリタイアだって、いつしてもいい。連れ帰ろうと思えば、いつだって連れ帰れる。時間さえ作る事ができれば、いつだって会える…はずなのだが…
いつもなら、どんな時も直ぐに気持ちを切り替える事のできるリュウキだが、今回なかなか気持ちが切り替われない事に驚くリュウキだ。
泣く我が子を、幼稚園に預ける親の気持ちが分かった気がしたリュウキであった。
…しかし、不安は尽きない。
ショウの事もそうだが、毎月のように行われる精霊王との極秘会議だ。
全くといっていい程になんの進展もなく平行線である。
ただ、あまりの進展の無さに精霊王は焦り“宝”を早く見つけ出せと更にうるさくなってきていて、最近では
“この役立たずどもが!”
“どれだけの歳月掛けているんだ!?やる気があるのか?いい加減、少しでも成果を見せたらどうなんだ!?”
などの暴言まで飛び出してきている。
この精霊王に関しては、何やら不審な点がいくつかあり調査中だ。
しかし、精霊王のいう“宝”とは一体何なのだろうかとも考えていたが、もしもの仮定だ。この精霊王が偽物だった場合、世界の秩序を整える力の代わりになる“何か”を探しているのかもしれない。
それが、“魔力”だったとしたら?
おそらくだが、精霊王の言う宝とは…もしかしたら今は亡きアクアの可能性のある。
しかし、アクアが亡くなっている事を知らずに探しているとしたら?
13年前、アクアと出会ってからずっと調べていた事だ。だが、精霊王は非常に用心深くなかなか尻尾を出さない。
13年経った今でも、進展がないままだったが…
前前世の記憶を取り戻した時からリュウキは確信した。未だ記憶は曖昧な所が多いが。
やはり、国際会議で定期的に自分達が会っている精霊王は偽物だとはっきり分かる。
何故なら、“全ての元素を司る天”である精霊王が存在するだけで世界の秩序が安定するはずなのだから。
それが出来ないのであれば、偽物に他ないだろうと考えたのだ。
なら、本物は何処だという話ではあるが…
大きな問題が山積みである。
ーーーーーーーー
ーーーーー
ついに、ファミリーの日の婚約者、恋人、親友と会える日がやってきた。
…が、ヨウコウは憂鬱だった。
…ハア…
今日から2日間も、あいつと過ごさなければならないなんて…
幼い頃は、可愛いと思ってたのに成長するにつれて劣化していくなんて詐欺じゃないか!
しかも、一度正式に婚約者の契約を結べば、よほどの事がない限り婚約破棄も認められないなんて最悪もいいところだ
決めたのは、状況をしっかり把握できてない子供だぞ?絶対、おかしいだろ!?
何度、余とアイツでは見合わない。婚約は取り消してくれと抗議した事か
そんなのは破棄の理由にならないなど…クソッ!!
と、ヨウコウは渋々、指定場所へ向かった。
そして、会いたくもない婚約者に会ったのだが…容姿が更に劣化していた。いくら、化粧をしてお洒落をしても、冴えない女は冴えなかった。
しかも、自分を見て頬を赤らめモジモジしている姿にも腹が立つ。
「お、お久しぶりでございます。ヨウコウ様。しばらく会わないうちに、ますます素敵に「去れ。」
婚約者が緊張の面持ちで声を掛けてきたのだが、声を聞くのさえ気色悪く思え彼女の声を遮りヨウコウは言った。
「…ハア。速攻で国に帰ってもらいたいけど、婚約者という肩書きがある為そうはいかないよね。だからさ、別行動しようよ。
もちろん、城で用意されたリゾートホテルは自由に使っていいからね。」
「……え?」
「その空っぽな頭じゃ分からないかな?
今まで、君を避けてきた理由分かる?」
「…それは、ヨウコウ様がとても忙しい為では?」
「そんな訳ないよね?旅に出る前まで、作ろうと思えば、余はいつでも君に会う事はできてたよ?」
「……え?では、何故…?」
「君の頭はお花畑かな?ここまで言っても分からないなんて終わってるよ。この際だから、ハッキリ言うね。
君、ブサイクだから一緒にいたくないんだ。年々、劣化していく君の容姿を見るたびに、こんなのと婚約者だなんて気持ち悪いだけだ。関わり合いたくないって思ってたんだよ。
けど、一度婚約してしまうと破棄するのは難しい。最悪極まりないよね。」
「…ブサイク…」
「だから、この2日間、余は君から離れて自由に過ごす。せっかく君もここまで来たんだ。好きに過ごせばいいよ。」
ヨウコウは、終始ニッコリした顔を貼り付け、婚約者をボロクソ言ってきた。
ヨウコウの婚約者は、その場で泣き崩れたが…ヨウコウは何ら気にする素振りも無くルンルンとその場を去って行ったのだった。
さて、自由になったヨウコウは、さっそく逆ナンパしてきた可愛いコとデートを楽しんでいた。里親ではあるが両親に、たっぷりとお小遣いを貰ったので有意義に過ごそうと考えていた。
だからこそ、城で用意されたリゾートホテルは婚約者に譲る事ができたのだ。自分は、お小遣いで好きなリゾートホテルに泊まれるからだ。
残念ながら、貰ったお小遣いでは高級リゾートホテルには泊まれないが、あの婚約者と一緒にいるくらいなら普通レベルのリゾートホテルの方が全然マシだ。
と、いう訳で婚約者がいる場所と真逆方向のリゾートホテルを予約し、その周辺で遊ぶ事にした。婚約者とは顔が会わないようにする為だ。
やっぱり、美女を落とすのは楽しい!
完全に落とすまでの攻略を考え実行する高揚感がたまらない
完全に自分の物になってしまえば冷めてしまうが、やはり目新しい美女に目がいくのは仕方ない
やっぱり、自分の価値に見合った素晴らしい女性を追い求めるのが男の性というものだ!
世界中には、色んな美女が存在する。たくさんいるんだから飽きたら捨てればいい
いくら捨てたって、女なんて数え切れない程いるんだから
まあ、自分程の男なら靡かない女なんていないと思うけどね
なんて、下衆な事を考えながら、可愛い系の美女とランチをしながらイベントを楽しんでいると、視界の中に何やら見覚えのある顔が見えた。
……ん?
あれは、確かレッカ殿のチームの…名前は確か…
ヨウコウが、名前を思い出そうと考えていると
「ユコ、悪くないもぉ〜ん。だってぇ、アイツ、浮気してたんだよ?
しかも、結婚してるとかさぁ。あり得ないよねぇ。マヂ、許さね〜し!
まあ、逮捕されたから関係ないけどねぇ〜。」
なんて、携帯で誰かと会話をしていた。話の様子から見て地元の友達っぽい。
ユコのテーブルには、ユコ以外のコップが置いてある。そこの椅子の腰かけには男性もののアウターが掛けられていた。
おそらく、ユコと同席している誰かが席を外している間に、友達から連絡でもきたんだろうと想像した。
「ギャハハ!そうそう!そん時のアイツ、顔面蒼白でさぁ、大人の癖に泣いてやんの。ウケるよねぇ!」
しかし、なんて下品な会話をしてるんだ。お前は本当にレディーなのかと疑いたくなる。
「ウチ、本命は別にいるしさぁ。あんなヤツ、どーでもいいんだけど。単なる暇つぶし?王族だから金持ってるしさ。イケメンだから、一緒にいると周りに自慢できるじゃん。
なんつーの?今は、いっぱい彼氏作って経験値あげるみたいな?ギャハハ!
それそれぇ〜、レベル上げ上げぇ〜!なんか、この言い方オタクっぽくね?ウケるぅ〜!」
…あれ?この子って、こんな子だっけか?と、ヨウコウは頭を捻っていた。
「だってさぁ。結婚するまで、自由に遊びたいじゃぁ〜ん!彼氏と、旦那は別物だよねぇ〜。
彼氏は、遊ぶ専門。男なんて、そこら辺にウジャウジャいるんだから色んな男と遊んどかないとさぁ。もったいないじゃん。
で、結婚適齢期になったら、旦那選びして結婚すりゃいいんだからさ。」
…なんて、野蛮な考えの女なんだ。最低だな!
男を何だって思ってるんだ。
「ギャハハ!旦那に飽きたら、家に金入れてもらって外に彼氏作ればいいだけだしぃ〜。
男なんて、ちょ〜っと優しくして持ち上げれば調子乗るからチョロいよね〜。」
あまりに男を馬鹿にするユコの発言の数々に、自分の事は棚上げでヨウコウは怒りではらわたが煮えくり返りそうになっていた。
「え〜、大丈夫だって。ちゃんと避妊してるしぃ。…あ、でもアレが遅れてた時は流石に焦ったわぁ〜。赤ちゃんできてたらヤベーって思ってさ、焦って、お腹バンバン叩いたよねぇ〜。
次の日にはアレきたからホッとしたぁ。マヂで焦ったっつーの。
…あ!彼氏、戻って来る!うん、うん!またねー!」
…ゲスの極みのような女だな。
こんな野蛮極まりない女には、いつか痛い目にあえばいいのだが!本当に、こんなクズのような女がいるとは!と、ヨウコウはユコの会話の内容に苛ついていた。
その内、ヨウコウと同い年くらいの少年がユコと同じテーブルに着いた。
「ユコちゃん、お待たせ!」
「たっくん、大丈夫だった?ここ広いから、トイレ探すのも大変だったよね?」
「そうなんだよ。迷子になるかと思っちゃったよ。」
なんて、初々しいカップルの様なやり取りで、さっきまでのクズっぷりが嘘の様に、ユコはとっても優しいいい子に早変わりしていた。
その変貌っぷりに、ヨウコウは呆気に取られていた。
おい、ユコの彼氏!お前、騙されてるぞ!
その女は、とんでもない性悪女だぞ!
と、心の中でユコの彼氏に訴えかけた。
そんな中、挨拶程度しか話した事はないが、ユコを知っている人物もそれを目撃していた。
「あんなに大きな声ですごい事言うなんて…。
彼氏が来た途端に、いい子ぶりっ子…切り替えが早すぎて逆に感心しちゃうかも。
でも、相当ヤバい子だね。」
「…あんまり、見ない方がいいよ。知り合いって思われたら最悪だよ。」
と、アーロラは、ドン引きしながらユコ達を見ていた。アーロラ達だけでない。
ユコの声が聞こえる範囲に居る人達のほとんどが、ユコの話を聞き不愉快な気持ちになっている。
だが、せっかくの楽しい場なのに嫌な気持ちになりたくなくて、無理矢理関係ない自分達の話をしている人達。
あからさまに嫌悪感丸出しで、最低なクズもいるもんだとユコの話題である意味盛り上がる人達と真っ二つに分かれていた。
そんな中、繰り広げられるユコの理想の彼女的会話。
「ウチ、子供が好きなの。早く、子供ほしいなぁ。」
彼氏は、ユコの話を聞いていて、ユコと結婚したら幸せな家庭になるんだろうなぁと妄想が広がっている。
そんな彼氏の様子を哀れな目で見ながらアーロラは、ユコの事を考えていた。
ユコは、アーロラのいるチームの一般参加者であるキウを虐めてる、いじめっ子だ。
旅の途中で変な輩にユコが絡まれていて、それをタイジュが助けたのがキッカケだった。
事あるごとに、ユコはタイジュに好意がありそうな様子で近づいてきては自分をアピールしアプローチしていた。
しかし、タイジュは婚約者がいるから誤解されたくないとハッキリ断っていたのだが。
すると、
“そ、そんなつもりじゃ…ご、ごめんなさい。”
とか
“…あ、タイジュ君はとても接しやすいから、つい…”
なんて、しおらしい事を言って素直に謝ってくるので、怒るに怒りきれない。
そんな姿を見ていると
キウの言う事を信じない訳ではないのだが、キウの勘違いなのでは?
キウの被害妄想が強いだけで、ユコはとてもいい子なのでは?
と、思う時がいくつもあった。
だが、さっきの電話の会話の内容や、彼氏が来た途端にコロリと態度が変わるその姿を実際に目の当たりにして…ああ、人を騙すタイプね、少し自分も騙されてた。…怖い怖いと身震いした。
一応、念のために、この事はタイジュとメイにも携帯でメールを動画付きで送信しておいた。
ないとは思うが、万が一にでもユコに騙されてタイジュが大事に巻き込まれるのを阻止する為だ。
補足だが、キウはユコの本性なんて知っていると思うし、ユコの話は聞きたくないと思うので敢えてキウにはメールを送らなかった。
メールと動画を送っている間にも、ユコから気になる話が飛び出していた。
「ウチね、色々あって新しいチームに入る事になったんだ。」
あ〜…最近、ニュースに取り上げられてたな。レッカが、気持ち悪い犯罪犯して逮捕されたって。と、アーロラはその事を思い出していた。
どういう経緯で、その犯罪が明るみに出たかは分からないが碌なものではない事だけは分かる。
「新しいチームはね、リーダーがサイウンってお姫様なんだって。そこで、ちょうど一般参加者の欠員が出たんだって。
だから、たまたまウチのチームが解散したばっかりってのもあって、そこのチームにウチが入る事になったんだよ。フフっ!楽しみ!」
「え〜?不安とかじゃなくて楽しみってなんだよぉ〜。」
「フフッ!いいチームだといいなぁ!楽しみしかない。ウチ、頑張っちゃう!エヘ。」
なんて、健気に前向きに突き進むユコの姿に彼氏はもの凄く好感を持ちデレていた。
それを聞いていた、ヨウコウとアーロラは
何が“フフッ”だ!電話では“ギャハハ”って、笑ってたじゃないか!…怖っ!
「…はぁ。男って、あんな女に引っ掛かりやすいのね。でも、あれじゃ同性の私ですら、いい子だって勘違いするかも。
敵に回すと怖い子よね。絶対に関わっちゃいけないタイプ。あの彼氏さん、可哀想。」
と、アーロラの彼女はそれ以降ユコの話はしなくなった。
あの子の話するだけ時間が無駄!それより、旅が終わるまで滅多に会えないんだから、今を楽しみましょ。
なんて、言われ
それもそうかと、アーロラは彼女と楽しむ事にした。
変な夢を見たショウだったが
何だか見覚えのある様な気がしてちょっと気味が悪く感じ、思わず
「…サクラ…どこ?」
と、何とも言われようもない不安に襲われ、不安を掻き消したくて自然とサクラの名前びキョロキョロとサクラの姿を探してしまった。
でも、サクラの姿は見当たらなくて、ショウはベットから降りサクラの姿を探した。
そして、隣の部屋へ行くと大きなソファーに座り書類を広げているリュウキの後ろ姿があった。
そこで、ショウはようやくファミリーの日で、リュウキと親子水入らずで遊びに来てる事を思い出した。
ショウにとってリアリティのある夢を見て、何だか怖く感じたショウは
「…お父さん!」
と、リュウキの名を呼んだ。
リュウキは、持っていた書類をテーブルに置くと後ろを振り向き
「早いな。まだ、朝食まで時間があるぞ?」
と、ショウに声を掛けたのだが、何だか様子のおかしい娘を不審に思い
「…悪い夢でも見たか?」
そう問いかけると、ちょっと泣きそうな顔をしながら「…うん。」と、答えた娘に
「おいで。」
と、手招きし、横に大きな我が娘をギュッと抱きしめた。ショウは、それを嫌がる事なくリュウキにしがみつき甘えている。
大きな大きな赤ちゃんである。
怖い夢を見て、すっかり赤ちゃんがえりをしてしまった娘に、リュウキはヨシヨシと頭を撫でてやんわりと怖い夢の内容を聞いてみた。
ショウの夢内容を聞いて、正直リュウキは全身に寒気が走った。
何故なら、ショウの見た夢はサクラとロゼの過去の一部だと直感したからだ。
サクラとロゼ…そして、ダリアの繋がりが、うっすらとではあるが線と線で結びつきはじめた様に思えたからだ。
まず、オブシディアンから報告を受けたロゼについての内容と、ショウが話す夢でのロゼの内容が繋がっている。
ショウが感じとっているロゼの“素敵な人達7人”に関しても、ロゼはそれらを捨ててショウを選んだのだろう。
どういった経緯かは、まだ不明だが。
しかし、ショウの直感とやらと夢の様子を考えれば、ロゼが素敵な7人を一方的に振り切っただけで7人はそれに納得できていないのだろう。
と、なれば…面倒な事になりそうだ。
問題は、サクラだ。
それは、つまり…そういう事なのだろう。そうなれば厄介極まりない。
これが、何の意味も持たないショウの単なる夢であってほしいと願うばかりだ。
それから、ショウとリュウキは精いっぱい親子の時間を楽しみ、気がつけば3日間という短い日数はあっという間に過ぎてしまいお別れの時が来てしまった。
この時を待っていましたとばかりに、サクラとロゼは朝一番にショウを迎えに来たのだが
「…お父さん、もう行っちゃうの?」
ショウは、リュウキが国に帰る時間になると寂しさのあまりリュウキにくっ付き離れなくなっていた。
そんな娘にリュウキは
「ん?一緒に家に帰るか?俺は、その方が有り難い。」
そう言うと、ショウは渋々といった感じにリュウキを離しボロボロと泣いていた。
それを見てリュウキは、困ったように小さく笑った。
「いい子だ。だが、無理だけはするなよ?無理そうだったら、いつでも帰って来い。」
そう言って、力強くギュッとショウを抱きしめ、すぐに離した。
「そこの従者達も、ショウの事頼む。」
リュウキは、サクラとロゼを見てそう声を掛けると後ろ髪を引かれる思いでその場を去って行った。
しかし、リュウキが声を掛けた時の二人の反応の違いに苦笑いするしかない。
サクラは、“はあ?いちいち、お前なんかに言われなくても、しっかりやってるんだが!”と、いった感じに一瞬だけ苛ついた表情でリュウキを睨むと、直ぐに、いつも通りリュウキなんてガン無視でショウに構い倒している。
ロゼは、背筋をピーン!と、伸ばししっかりとリュウキを見て「ゴロニャーン!」と、鳴いた。まるで“任せて下さいニャン”と言っている様に聞こえる。
そして愛しい我が子は「お父さぁ〜ん、おどぉ〜〜ざぁぁ〜んっ!」と、わんわん泣いていた。
ショウの泣き声があまりに心苦しくて、チラリと後ろを振り返れば
サクラは大泣きするショウを抱きしめ耳元で何やら囁いている。さしづめ、“大丈夫ですよ、私が側にいます。”なんて言ってるに違いない。
ロゼは懸命にショウの頬に顔をグリグリと擦り付けたりショウの涙をチロチロ舐めたりして慰めていた。
…自分と離れただけでこんなにも泣かれるなんて、つい数ヶ月前の自分が見たら腰を抜かすほど驚くだろうなと感慨深い気持ちになっていた。
しかし、泣く我が子を置いて、その場を離れる事がこんなにも辛いとは…知らなかった。
永遠の別れなどではないし、旅が終われば帰って来るのは分かっている。それにリタイアだって、いつしてもいい。連れ帰ろうと思えば、いつだって連れ帰れる。時間さえ作る事ができれば、いつだって会える…はずなのだが…
いつもなら、どんな時も直ぐに気持ちを切り替える事のできるリュウキだが、今回なかなか気持ちが切り替われない事に驚くリュウキだ。
泣く我が子を、幼稚園に預ける親の気持ちが分かった気がしたリュウキであった。
…しかし、不安は尽きない。
ショウの事もそうだが、毎月のように行われる精霊王との極秘会議だ。
全くといっていい程になんの進展もなく平行線である。
ただ、あまりの進展の無さに精霊王は焦り“宝”を早く見つけ出せと更にうるさくなってきていて、最近では
“この役立たずどもが!”
“どれだけの歳月掛けているんだ!?やる気があるのか?いい加減、少しでも成果を見せたらどうなんだ!?”
などの暴言まで飛び出してきている。
この精霊王に関しては、何やら不審な点がいくつかあり調査中だ。
しかし、精霊王のいう“宝”とは一体何なのだろうかとも考えていたが、もしもの仮定だ。この精霊王が偽物だった場合、世界の秩序を整える力の代わりになる“何か”を探しているのかもしれない。
それが、“魔力”だったとしたら?
おそらくだが、精霊王の言う宝とは…もしかしたら今は亡きアクアの可能性のある。
しかし、アクアが亡くなっている事を知らずに探しているとしたら?
13年前、アクアと出会ってからずっと調べていた事だ。だが、精霊王は非常に用心深くなかなか尻尾を出さない。
13年経った今でも、進展がないままだったが…
前前世の記憶を取り戻した時からリュウキは確信した。未だ記憶は曖昧な所が多いが。
やはり、国際会議で定期的に自分達が会っている精霊王は偽物だとはっきり分かる。
何故なら、“全ての元素を司る天”である精霊王が存在するだけで世界の秩序が安定するはずなのだから。
それが出来ないのであれば、偽物に他ないだろうと考えたのだ。
なら、本物は何処だという話ではあるが…
大きな問題が山積みである。
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ついに、ファミリーの日の婚約者、恋人、親友と会える日がやってきた。
…が、ヨウコウは憂鬱だった。
…ハア…
今日から2日間も、あいつと過ごさなければならないなんて…
幼い頃は、可愛いと思ってたのに成長するにつれて劣化していくなんて詐欺じゃないか!
しかも、一度正式に婚約者の契約を結べば、よほどの事がない限り婚約破棄も認められないなんて最悪もいいところだ
決めたのは、状況をしっかり把握できてない子供だぞ?絶対、おかしいだろ!?
何度、余とアイツでは見合わない。婚約は取り消してくれと抗議した事か
そんなのは破棄の理由にならないなど…クソッ!!
と、ヨウコウは渋々、指定場所へ向かった。
そして、会いたくもない婚約者に会ったのだが…容姿が更に劣化していた。いくら、化粧をしてお洒落をしても、冴えない女は冴えなかった。
しかも、自分を見て頬を赤らめモジモジしている姿にも腹が立つ。
「お、お久しぶりでございます。ヨウコウ様。しばらく会わないうちに、ますます素敵に「去れ。」
婚約者が緊張の面持ちで声を掛けてきたのだが、声を聞くのさえ気色悪く思え彼女の声を遮りヨウコウは言った。
「…ハア。速攻で国に帰ってもらいたいけど、婚約者という肩書きがある為そうはいかないよね。だからさ、別行動しようよ。
もちろん、城で用意されたリゾートホテルは自由に使っていいからね。」
「……え?」
「その空っぽな頭じゃ分からないかな?
今まで、君を避けてきた理由分かる?」
「…それは、ヨウコウ様がとても忙しい為では?」
「そんな訳ないよね?旅に出る前まで、作ろうと思えば、余はいつでも君に会う事はできてたよ?」
「……え?では、何故…?」
「君の頭はお花畑かな?ここまで言っても分からないなんて終わってるよ。この際だから、ハッキリ言うね。
君、ブサイクだから一緒にいたくないんだ。年々、劣化していく君の容姿を見るたびに、こんなのと婚約者だなんて気持ち悪いだけだ。関わり合いたくないって思ってたんだよ。
けど、一度婚約してしまうと破棄するのは難しい。最悪極まりないよね。」
「…ブサイク…」
「だから、この2日間、余は君から離れて自由に過ごす。せっかく君もここまで来たんだ。好きに過ごせばいいよ。」
ヨウコウは、終始ニッコリした顔を貼り付け、婚約者をボロクソ言ってきた。
ヨウコウの婚約者は、その場で泣き崩れたが…ヨウコウは何ら気にする素振りも無くルンルンとその場を去って行ったのだった。
さて、自由になったヨウコウは、さっそく逆ナンパしてきた可愛いコとデートを楽しんでいた。里親ではあるが両親に、たっぷりとお小遣いを貰ったので有意義に過ごそうと考えていた。
だからこそ、城で用意されたリゾートホテルは婚約者に譲る事ができたのだ。自分は、お小遣いで好きなリゾートホテルに泊まれるからだ。
残念ながら、貰ったお小遣いでは高級リゾートホテルには泊まれないが、あの婚約者と一緒にいるくらいなら普通レベルのリゾートホテルの方が全然マシだ。
と、いう訳で婚約者がいる場所と真逆方向のリゾートホテルを予約し、その周辺で遊ぶ事にした。婚約者とは顔が会わないようにする為だ。
やっぱり、美女を落とすのは楽しい!
完全に落とすまでの攻略を考え実行する高揚感がたまらない
完全に自分の物になってしまえば冷めてしまうが、やはり目新しい美女に目がいくのは仕方ない
やっぱり、自分の価値に見合った素晴らしい女性を追い求めるのが男の性というものだ!
世界中には、色んな美女が存在する。たくさんいるんだから飽きたら捨てればいい
いくら捨てたって、女なんて数え切れない程いるんだから
まあ、自分程の男なら靡かない女なんていないと思うけどね
なんて、下衆な事を考えながら、可愛い系の美女とランチをしながらイベントを楽しんでいると、視界の中に何やら見覚えのある顔が見えた。
……ん?
あれは、確かレッカ殿のチームの…名前は確か…
ヨウコウが、名前を思い出そうと考えていると
「ユコ、悪くないもぉ〜ん。だってぇ、アイツ、浮気してたんだよ?
しかも、結婚してるとかさぁ。あり得ないよねぇ。マヂ、許さね〜し!
まあ、逮捕されたから関係ないけどねぇ〜。」
なんて、携帯で誰かと会話をしていた。話の様子から見て地元の友達っぽい。
ユコのテーブルには、ユコ以外のコップが置いてある。そこの椅子の腰かけには男性もののアウターが掛けられていた。
おそらく、ユコと同席している誰かが席を外している間に、友達から連絡でもきたんだろうと想像した。
「ギャハハ!そうそう!そん時のアイツ、顔面蒼白でさぁ、大人の癖に泣いてやんの。ウケるよねぇ!」
しかし、なんて下品な会話をしてるんだ。お前は本当にレディーなのかと疑いたくなる。
「ウチ、本命は別にいるしさぁ。あんなヤツ、どーでもいいんだけど。単なる暇つぶし?王族だから金持ってるしさ。イケメンだから、一緒にいると周りに自慢できるじゃん。
なんつーの?今は、いっぱい彼氏作って経験値あげるみたいな?ギャハハ!
それそれぇ〜、レベル上げ上げぇ〜!なんか、この言い方オタクっぽくね?ウケるぅ〜!」
…あれ?この子って、こんな子だっけか?と、ヨウコウは頭を捻っていた。
「だってさぁ。結婚するまで、自由に遊びたいじゃぁ〜ん!彼氏と、旦那は別物だよねぇ〜。
彼氏は、遊ぶ専門。男なんて、そこら辺にウジャウジャいるんだから色んな男と遊んどかないとさぁ。もったいないじゃん。
で、結婚適齢期になったら、旦那選びして結婚すりゃいいんだからさ。」
…なんて、野蛮な考えの女なんだ。最低だな!
男を何だって思ってるんだ。
「ギャハハ!旦那に飽きたら、家に金入れてもらって外に彼氏作ればいいだけだしぃ〜。
男なんて、ちょ〜っと優しくして持ち上げれば調子乗るからチョロいよね〜。」
あまりに男を馬鹿にするユコの発言の数々に、自分の事は棚上げでヨウコウは怒りではらわたが煮えくり返りそうになっていた。
「え〜、大丈夫だって。ちゃんと避妊してるしぃ。…あ、でもアレが遅れてた時は流石に焦ったわぁ〜。赤ちゃんできてたらヤベーって思ってさ、焦って、お腹バンバン叩いたよねぇ〜。
次の日にはアレきたからホッとしたぁ。マヂで焦ったっつーの。
…あ!彼氏、戻って来る!うん、うん!またねー!」
…ゲスの極みのような女だな。
こんな野蛮極まりない女には、いつか痛い目にあえばいいのだが!本当に、こんなクズのような女がいるとは!と、ヨウコウはユコの会話の内容に苛ついていた。
その内、ヨウコウと同い年くらいの少年がユコと同じテーブルに着いた。
「ユコちゃん、お待たせ!」
「たっくん、大丈夫だった?ここ広いから、トイレ探すのも大変だったよね?」
「そうなんだよ。迷子になるかと思っちゃったよ。」
なんて、初々しいカップルの様なやり取りで、さっきまでのクズっぷりが嘘の様に、ユコはとっても優しいいい子に早変わりしていた。
その変貌っぷりに、ヨウコウは呆気に取られていた。
おい、ユコの彼氏!お前、騙されてるぞ!
その女は、とんでもない性悪女だぞ!
と、心の中でユコの彼氏に訴えかけた。
そんな中、挨拶程度しか話した事はないが、ユコを知っている人物もそれを目撃していた。
「あんなに大きな声ですごい事言うなんて…。
彼氏が来た途端に、いい子ぶりっ子…切り替えが早すぎて逆に感心しちゃうかも。
でも、相当ヤバい子だね。」
「…あんまり、見ない方がいいよ。知り合いって思われたら最悪だよ。」
と、アーロラは、ドン引きしながらユコ達を見ていた。アーロラ達だけでない。
ユコの声が聞こえる範囲に居る人達のほとんどが、ユコの話を聞き不愉快な気持ちになっている。
だが、せっかくの楽しい場なのに嫌な気持ちになりたくなくて、無理矢理関係ない自分達の話をしている人達。
あからさまに嫌悪感丸出しで、最低なクズもいるもんだとユコの話題である意味盛り上がる人達と真っ二つに分かれていた。
そんな中、繰り広げられるユコの理想の彼女的会話。
「ウチ、子供が好きなの。早く、子供ほしいなぁ。」
彼氏は、ユコの話を聞いていて、ユコと結婚したら幸せな家庭になるんだろうなぁと妄想が広がっている。
そんな彼氏の様子を哀れな目で見ながらアーロラは、ユコの事を考えていた。
ユコは、アーロラのいるチームの一般参加者であるキウを虐めてる、いじめっ子だ。
旅の途中で変な輩にユコが絡まれていて、それをタイジュが助けたのがキッカケだった。
事あるごとに、ユコはタイジュに好意がありそうな様子で近づいてきては自分をアピールしアプローチしていた。
しかし、タイジュは婚約者がいるから誤解されたくないとハッキリ断っていたのだが。
すると、
“そ、そんなつもりじゃ…ご、ごめんなさい。”
とか
“…あ、タイジュ君はとても接しやすいから、つい…”
なんて、しおらしい事を言って素直に謝ってくるので、怒るに怒りきれない。
そんな姿を見ていると
キウの言う事を信じない訳ではないのだが、キウの勘違いなのでは?
キウの被害妄想が強いだけで、ユコはとてもいい子なのでは?
と、思う時がいくつもあった。
だが、さっきの電話の会話の内容や、彼氏が来た途端にコロリと態度が変わるその姿を実際に目の当たりにして…ああ、人を騙すタイプね、少し自分も騙されてた。…怖い怖いと身震いした。
一応、念のために、この事はタイジュとメイにも携帯でメールを動画付きで送信しておいた。
ないとは思うが、万が一にでもユコに騙されてタイジュが大事に巻き込まれるのを阻止する為だ。
補足だが、キウはユコの本性なんて知っていると思うし、ユコの話は聞きたくないと思うので敢えてキウにはメールを送らなかった。
メールと動画を送っている間にも、ユコから気になる話が飛び出していた。
「ウチね、色々あって新しいチームに入る事になったんだ。」
あ〜…最近、ニュースに取り上げられてたな。レッカが、気持ち悪い犯罪犯して逮捕されたって。と、アーロラはその事を思い出していた。
どういう経緯で、その犯罪が明るみに出たかは分からないが碌なものではない事だけは分かる。
「新しいチームはね、リーダーがサイウンってお姫様なんだって。そこで、ちょうど一般参加者の欠員が出たんだって。
だから、たまたまウチのチームが解散したばっかりってのもあって、そこのチームにウチが入る事になったんだよ。フフっ!楽しみ!」
「え〜?不安とかじゃなくて楽しみってなんだよぉ〜。」
「フフッ!いいチームだといいなぁ!楽しみしかない。ウチ、頑張っちゃう!エヘ。」
なんて、健気に前向きに突き進むユコの姿に彼氏はもの凄く好感を持ちデレていた。
それを聞いていた、ヨウコウとアーロラは
何が“フフッ”だ!電話では“ギャハハ”って、笑ってたじゃないか!…怖っ!
「…はぁ。男って、あんな女に引っ掛かりやすいのね。でも、あれじゃ同性の私ですら、いい子だって勘違いするかも。
敵に回すと怖い子よね。絶対に関わっちゃいけないタイプ。あの彼氏さん、可哀想。」
と、アーロラの彼女はそれ以降ユコの話はしなくなった。
あの子の話するだけ時間が無駄!それより、旅が終わるまで滅多に会えないんだから、今を楽しみましょ。
なんて、言われ
それもそうかと、アーロラは彼女と楽しむ事にした。