イケメン従者とおぶた姫。
恋人がいないゴウランは暇だった。

オブシディアンのトレーニングメニューを何とかこなし、それ以外の時間は暇過ぎて声を掛けられた可愛い女の子達と一緒に遊んでいた。

カッコいいだの、強そうだの、チヤホヤされて有頂天のゴウランは、調子に乗って女の子達にいい所を見せようとカッコつけていた。


色んなアトラクションや屋台、お土産屋さんなど女の子達とワイワイ楽しんでいると、タイジュの姿が見えた。

そりゃ、色々歩き回ってたら知り合いに出会すなんてあり得るだろう。むしろ、誰にも会わないという方が確率的に低いと思う。

タイジュは、少しふくよかな女子と手を繋いで仲良さそうに歩いている。

…恋人?

…う〜ん…

それよりも、幼い頃に婚約してしまって、ヨウコウ様の様に取り返しのつかない事になってしまったパターンな気がするな

…可哀想に…


と、ゴウランが想像してしまうくらいに
タイジュの婚約者らしき女子は、極々平凡な容姿な挙げ句、ちょっぴりぽっちゃりしていて大きな丸メガネを掛けていて正直…地味でダサい。

通りすがる女性達が、頬を染め二度見してしまうくらいに美形なタイジュとは、とても不釣り合いに見えた。


たまたま、同じアトラクションの列に並んでいて待ち時間もまだまだある為
女の子達とキャッキャお話ししながらも、タイジュカップルの様子を見ていた。

こんなの気にしない方がどうかしている…気がする。


「陽毬(ひまり)、来てくれてありがとう。今日と明日は、いっぱい楽しんで思い出を作ろうな!」

タイジュは、婚約者のヒマリに満面の笑顔を向けた。

「…ひぃぃ〜!ま、眩しっ…!イケメンの笑顔の破壊力は凄まじいであります!ワタクシ…残りの人生悔いなしでござりまする!」

すると、ヒマリは眩しいという大袈裟なアクションをしヨロヨロと後ずさっていた。

それを、慣れた手付きでタイジュは後ずさるヒマリの腰を抱き

「…危なっ!?そんな事してたら、転んじゃうぜ?」

と、ヒマリのおでこにチュッとキスを落とした。


「…あわわわ…!キュンキュンし過ぎて、ワタクシのハートが持ちませぬ…!!」

ヒマリは、顔を真っ赤になって目がハートになっている。そして、すかさずパシャパシャと携帯でタイジュの顔を撮りまくっていた。
それに慣れてるのかタイジュは、それを気にする事なく彼女の好きにさせてる様だった。

それを見てゴウランは、変わった婚約者だなぁ…。まるで、人気絶頂のアイドルとファンみたいな図だ。

タイジュはクール系イケメンでファッションもスタイリッシュだ。
なのに、飾り気のない気さくな性格に思え好感が持てる。

対して、タイジュの婚約者であろうヒマリは、ほんわかした顔立ちをしていて、ふくよかな体によく合った容姿だ。中身は、何だか…アイドルオタクっぽく感じる。

だが、二人共とても楽しそうで幸せいっぱいって感じがした。

…あれ?もしかして、ラブラブってやつ?


タイジュ様も、あんなコが好きだなんて相当な変わり者だな。

と、苦笑いするゴウランだ。


そして、女の子達と一緒にランチに行くと、とんでもない親子と遭遇してしまった。

その親子は


周りからも好奇の目で見られ注目を浴びていた。


「…お、おい、あの親子見てみろよ!すっげ〜っっ!父親、格闘家か?デケー!…い、いや?あれ、オッパイか!?男にオッパイついてんぞ!?お、オカマ?ニューハーフ!?」

「超絶カッコいい…あんな綺麗な男子見た事ないんだけど!…でも、怖そう…」

なんて、その親子らしき2人を見て騒ついていた。父親(?)らしき男には、大きな大きなオッパイがくっ付いていて性別判断に困る。

…いや、ムチムチの筋肉はしなやかで見る人が見たらいい筋肉をしていると分かる。見せる為の筋肉でない、戦う為の筋肉だって事。

髪は白金髪のボーズ頭。顔は優しそうな平凡な顔。2mはあるだろう身長でゴリマッチョ…そこに、あの爆乳。
そして、とても似合わないワンピースまで着ている。あまりに似合わな過ぎて罰ゲームをさせられた感が否めない格好だ。

…あの爆乳にワンピース…女?

…あれ?でも、何か見た事あるような…???


息子らしき男は、ゴウランと同い年くらいに見える。だから、高校生くらいであろう。サクラと同レベルの美形だと思う。

黒髪、黒目の色白東洋系美人。
とても色っぽくセクシーである。

あまりに綺麗過ぎて、女性陣も自分レベルが声を掛けるなんて烏滸がましいと気が引けて遠巻きに見ている事しかできないでいる。

まるで、手を出してはいけない憧れの人物状態である。

だが、無意識なのだろう。目をハートにしながら、思わず「…わぁ…!」「…カッコいい…」「…綺麗…」など声が漏れてしまっている人達もいる。

そして、彼に近づけない理由として、もう一つ。

おそらく、顔から脚にかけて半分くらいタトゥーで埋まってる。おそらくというのは、服で隠れていたりして見えない部分が多いからだ。

そして、たくさんのピアスやらゴツゴツしたアクセサリーをジャラジャラつけ、龍やら鳳凰やらついてる原色カラーの派手派手で独特な服を着ていて、ファッションセンスを疑いたくなるレベルだ。

だが、そんなひと昔(?)ふた昔(?)風のヤンキースタイルのファッションさえ着こなしカッコいいとさえ思わせてしまう、彼の美貌にただただ脱帽するしかない。

…まあ、つまる所、彼はとても怖そうなので、みんな彼の姿をまともに見る事ができないのだ。

彼がまともな格好をしていたら、あまりの美貌にキャーキャー騒がれた挙げ句、
腰を抜かしたり失神する人達が続出しそうなので…これで、良かったのかもしれない。


が、しかし!それは置いといて

直ぐに、この2人が親子でない事が分かった。

2人の見た目の圧倒的存在感で見落としていたが、この美貌男子は厳ついゴリラ女の腰に手を回しピットリとくっ付き寄り添っていた。

時折、美貌男子は愛おしそうに男女を見上げポ〜っと熱い視線で見つめている。
そして、ついに気持ちが溢れてしまったのだろう。グッとつま先立ちをして、ゴリラ女の唇にチュッと短いキスをし照れ臭そうに下を俯き真っ赤になっていた。

まるで、付き合いたての初々しいカップルのようである。…片方だけ。

そんな美貌男子の姿を怪訝そうな顔をしてゴリラ女は


「…おまえ、どうした?いつもと態度が全然違うぞ?具合でも悪いのか?」

腰を屈めて心配そうに、美貌男子の顔を覗き込んできた。顔を近づけられた美貌男子は、カ〜ッ!と顔を赤らめ堪らず顔を背けると


「あ、当たり前だろ!?いつも、着てくれないワンピースを着て、化粧までしておめかししてさ。そんなの可愛すぎるでしょ。…なんか、別人みたいで緊張するんだよ。」

なんて、何処ぞの少女漫画のイケメンが言いそうな事を言ってきた。


…え?

相手が可愛いヒロインなら、そんな台詞や仕草を見せても違和感ないけど…相手、ゴリラ女だぜ?

胸さえなきゃ、ゴリマッチョのオッサンだかんな

と、ゴウランは冷めた気持ちで見ていた。



「…いや、せっかくのデートだからって、顔に化粧塗りたくったのもワンピース着せたのもおまえだからな?結婚して2年も経ってるし、ほぼほぼ毎日ヤる事はヤってんだ。今さら、そんなに照れる事もないだろ?」

ゴリラ女は、参ったなぁと苦笑いしながらボリボリと頭をかいている。


…え??

この2人、結婚してんの?

う、嘘だろ?

しかも、2年だと…!?

ヤる事ヤってるって…そういう事だよな?
…ふ、夫婦だっていうなら、そういう事するよな…

でも、あの二人が…なんて…想像もできねーし、考えたくもねーよ…うわぁ…、まじかよぉ〜…うわぁ…


とんでもない情報が飛び出してきて、ゴウランは脳天に一発食らったかのような衝撃を受けていた。聞いた今でも、信じがたい話に内容が飲み込めずいる。


「…本当、ハナってデリカシーないよね。
それに、今さらって事はないよ。オレは、いつだってハナが可愛いと思ってるし愛してる。
そんな愛おしい女が、渋々とはいえデートでオシャレしてくれたらさ。嬉しくない訳ないでしょ?」

美貌男子は、ハナと呼ばれるゴリラ女の夢も希望もない言葉にちょっとご立腹のようで、ムスッとした表情をして
仕返しのつもりなのだろう棘のある言葉を含めつつ、素直な自分の気持ちを伝えていた。

こんな事、こんな超絶イケメンに言われたら悶絶ものであろう。

そして、ピトッとハナに体を預けると

「…好き。」

そう言って、甘えるようにコテンと頭を傾げると、むにゅんとハナの爆乳に美貌男子の顔の一部が埋まった。

思いがけない事態だったのだろう。美貌男子は、その瞬間大きく目を見開きほわんと一瞬気持ち良さそうな表情を浮かべると

バッと、ハナの爆乳から顔を離し


「…ご、ゴメン!」

なんて、ラッキースケベにあった嬉しいハプニングかのように、顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしていた。


「……本当に、どうした?いつも、無遠慮に触ったり顔も埋めてきてるだろ。それ以上の事も「…バッ、バカ!本当にハナはバカッ!!
そんな事、こんな公衆の場で言っちゃダメだろ!それに、それはそれ。今とは違うよ。」

と、美貌男子が言ってもハナはよく理解できないらしく、首を傾げて「…う〜ん?」と考えていた。

さっきまで、目を当てられないくらいにイチャついてたのに、今度は言い争いを始めたぞとゴウランは急にどうしたんだと更に注目して見ていた。

すると

「あ〜…、だよなぁ〜。ハナだもんな。」

と、美貌男子は諦めたように、呆れた様な深いため息をつくと


「つまり、今は2人でお洒落してさ。デートしてるわけ。今までは、仕事で忙しかったりして、まともなデートもした事なかっただろ?
だからさ。2人で、こうやってデートできるのが新鮮で楽しいし、新たなハナを発見できたりして嬉しいって事だよ。」

なんて、照れ臭そうに説明する美貌男子をジッと見ていたハナは、いきなり美貌男子の額にキスをしてきた。

それに驚いた美貌男子は、パッと額を両手で押さえると、ボンッと顔をタコの様に真っ赤にさせ、口をパクパクさせながら

「…え?な、なんで?」

困惑した表情で、ハナを見上げた。


「ああ。なんか、おまえが可愛かったから、ついな。」

と、ニッと笑いかけたハナに美貌男子はドキュンとハートを射抜かれたようで、美貌男子の周りにはたくさんのハートが飛び散ってるように見えた。


「…もう、もうっ!今日は、かっこよくハナをエスコートするつもりだったのに!
…今のハナ、カッコ良すぎだから…!」

と、こんな筈じゃなかったのに、と
ちょっとだけブスくれながら、ハナの丸太の様なぶっとい腕に腕を絡ませピトッとハナに体を預けた。

「そんな事言われてもなぁ。
普段から、おまえはカッコいいよ。それが、今日はこんなに可愛いんだ、キスくらいしたくもなるさ。
…ああ、確かに、こんな可愛いおまえを見れるなんて新鮮だな。おまえの言いたい事が分かった気がするよ。」

そう、言って男前に笑うハナに美貌男子は驚いた顔をし、少し俯くと


「…一日で、どれだけ惚れ直させるつもりだよ。…好き。」

ボソボソと呟いていた。多分、独り言なのだろう。イチャイチャしたかと思えば、急に喧嘩したり忙しいカップルだ。(美貌男子が一方的にではあるが)

けど、結局は超ラブラブである。そんな二人を見ていて、ゴウランは何だかもの凄く虚しい気持ちになっていた。

…確かに、自分はその場凌ぎで可愛い女の子達と面白おかしく楽しんでるが、自分はあんなにも思い思われる様な恋愛をした事がない。

ミミを好きになった事はあるし、他にも何人かに恋心を抱いた事だってある。

いい雰囲気になって彼女ができるかもしれないという時もあったが、ヨウコウ様より先に女性と結ばれるなんて許されないという周りの大人達の重圧。ヨウコウの余よりも先に、彼女を作るのかという無言の圧により、セフレやワンナイトでの肉体関係こそあっても彼女ができた事はない。

いやいや!ヨウコウ様には婚約者がいるじゃないか!?なのに、何故ヨウコウ様に彼女がいないからって自分は彼女を作ったらいけないのかと理不尽な暗黙のルールに苛立つ。

それは、さて置き

タイジュカップルやハナカップルを見ていて、今までしてきた自分の恋は、何てペラッペラに薄っぺらいものだったんだろうと感じてしまった。

…いや、恋に発展する前に、ヨウコウや周りの大人達によって壊されてきたのも事実。
その中に、あのカップル達のように自分もなれていたかもしれないと思うと複雑な気持ちになる。

…この先も、自分はこのままなのかな?
誰とでも薄っぺらい関係のまま生涯を終えるのかな?

仲間や友達って言っても、幼い頃からヨウコウのお友達役でヨウコウに付きっきりだったので浅い付き合いの友達しかいない。

ミミの件があってから、ヨウコウもゴウランを都合よく使ってるだけで、いざとなったら裏切って裏で笑ってると感じている。

両親だって、ゴウランの事をちゃんと見てくれてるわけではない。何かと世間体を気にしては、自分の考えや意見を押し付けてくるだけでゴウランの話をまともに聞いてくれた事もない。と、思ったら急にもの凄く孤独を感じてしまった。

…自分には誰もいない。

今、たくさんの可愛い女の子と絶賛、楽しく遊んでるにも関わらずそう感じこれからの事が急に怖く感じた。


あ〜あ、何だか面白そうなカップルだと思って好奇心で観察するんじゃなかった。と、ゴウランはハナカップルを見て後悔していた。

ただただ、二人のゲロ甘のラブラブっぷりを見せつけられた感が否めない。


虚しい、寂しい…そう感じながら、それを振り払うかのように女の子達と楽しむゴウラン。

そこに、ソウの姿が目に入ってきた。

…お、寂しい奴、発見!

ゴウランは、孤独なのは自分だけじゃない!
コイツなんて、ミミにこっ酷く振られた挙げ句。自業自得とはいえ、チヨというお友達役を捨てたが為に

ボッチの可哀想な奴に成り下がった奴じゃないか!と、悲しい同志を見つけほんの少しだけホッとした。

さてさて、コイツはどんな寂しい二日間を過ごすのかな?と、自分より寂しい奴を見つけて、自分自身を安心させたいが為にソウを気にして見ていた。


すると、ソウは数人の美女達を引き連れ遊んでいる様だった。

人目を憚らず美女達とイチャイチャしていて、美女に求められるがままディープなキスをしたり胸を触ったりなどスキンシップが過激だ。

そこが、自分達だけしかいないとか大人の遊び場だったら分かるし、自分だってやってる。

だが、場所を考えてほしい。

ここは多くの家族連れや小さな子供もいるというのに場所を考えろよと苛ついた。
周りを見ても、子供達の教育に悪い、悪影響だと顰めっ面をしている親御さん達が多いし家族連れでなくてもすこぶる不愉快に思っている人達がたくさんいる。

ソウが、やさぐれてしまったのか、これが本来の姿なのかは分からないが、これではあまりにも目に余る。


そう思っていると


「あーっ!いた、いた!」

と、ハスキーボイスが聞こえた。なんだか聞いた事がある声だなと、そこを見ると

…ギョッ!!?

王族のルナが、どこぞに向かって大きく手を振りながら走っている。
ルナの見た目は、可憐で儚さそうな超絶美少女に様に見えるがれっきとした男である。
しかも、年も13才くらいに見えるが、18才らしい。

…ぶっちゃけ、13才の美少女にしか見えない。

本人も美少女的容姿にコンプレックスがあるのか、自分の好みなのか分からないが、
男らしさを全面に出したファッションで似合ってない。

…しかしながら…

なんて高確率で見知った人を見つけてしまうんだろうかとゴウランは苦笑いした。

何故か分からないが、昔からゴウランは何かかしらの遭遇率が高い。いい事から嫌な事まで。

そういう星の元生まれたと言われたら、そうなのかもしれないという程の遭遇率である。


元気いっぱいに走るルナを見ると、誰かと手を繋いでいるみたいだ。ルナに手を引かれながら後をついていく女子が見える。誰だろうか?

18才の男子にしては背の低いルナだが、ルナが手を繋いでいる女子は更に背が低い。多分、140cmあるだろうか?本当に小さくて顔立ちもとても幼く見える。
ルナとその女子が一緒に歩いてると小学生の姉妹にしか見えない。


すると


「おー!来たか。」

と、ハナが、おおらかな笑みを浮かべ二人を迎えていた。どうやら、ルナとハナは待ち合わせをしていた様だ。


…は?

ルナ様とゴリラ女が知り合いだと?どういう関係なんだ?

それもそうと、あの小さな女の子は誰だ?ルナ様の妹…にしては、容姿もイマイチだし、肌や髪、目の色までも全然違う。こっちの関係性も気になるな

と、ゴウランは頭を捻りながらルナ達を見ていた。

ルナと合流したハナ達が近くのフードコートの席に着いたので、ゴウランも慌ててルナ達の近くに席を取り座った。

ちょうど、女の子達もお腹空いたと言ってきた所だったのでちょうど良かったし、女の子達も異色過ぎるグループが気になっていた様だった。
どうやら異色グループが気になる人達は、自分達だけではないらしく異色グループの話に聞き耳をしたりパンフレットやメニュー表で顔を隠しながらチラチラ見てる人達もいる。
きっと、ゴウランと同じ暇人か遊び疲れて休憩中の人達なのだろう。

すると、そこで異色グループの自己紹介が始まっていた。

ルナに手を引かれていた少女が緊張した面持ちで、急に席を立ち


「…ち、チヨと言います。お久しぶりです、団長様。そ、そそして、はじめまして!副団長様!!今日は、わざわざ時間を取ってもらいまして「あっはは!今さら、そんなにかしこまらなくていいよ。私とチヨの仲じゃないか。
それに、今、私達は団長でも副団長でもない。
ただの一般人だよ。」

と、緊張してカミカミになりながらも挨拶するチヨという少女の言葉をハナは遮って話してきた。それに対して、チヨはペコリと深く頭を下げて席に座った。
しかし、標準語で喋ろうとしているのは分かるが、イントネーションは変だし…かなり訛っている。

チヨが喋ると、周りの人達がプッと思わず笑ってしまっていた。かくいうゴウランもそうだし、一緒に遊んでいる女の子達も我慢できず笑ってるし「訛りすごいね、あの子!」「ヤッバー」「ど田舎丸出しじゃんね、ウケる!」と、ヒソヒソ話していた。

周りの反応に気づいたのだろう。チヨは、羞恥から顔を真っ赤にして俯いてしまった。

それを見てルナは、カッとなって立ち上がり何かを言おうと口を開いた。すると


「やめなさい、ルナッ!」

美貌男子は強めの口調でルナを制した。

次の瞬間、ゴウランは驚きの言葉を耳にする事になる。


「何で止めるんだよ!?父ちゃんっ!!!」

と、イラッとした様にルナは美貌男子に向かって声を荒げた。そんな、ルナの裾をチヨはクイクイっと引っ張り


「おらは、大丈夫だっぺよ!こんなの慣れてるし、都会じゃ聞き慣れない言葉だから笑ってもしょうがないっぺ。
それに、ここで怒っても、また別の所に行けばおんなじ反応されるっぺよ?その度に、怒ってもキリがないっぺ?」

そう言って、大丈夫だよってにっこり笑って見せた。


「…けどさ。けど、悔しいっ…!」

ルナは下を俯いて、握り拳を作るとフルフル肩を震わせていたのだが


「おらの為にありがとな。…でも、ルナはおらと一緒に居て恥ずかしいか?田舎者だって、笑われるのが嫌か?」

と、眉を下げて聞いてきたチヨを見て


「そ、そんなわけないだろ!!そんな事思った事も考えた事もねーよ。」

唇をキュッと噛みちょっぴり泣きそうな顔をしながらチヨを見下ろすと


「なら、おらは全然平気だ。こーんな些細な事ばいちいち気にするだけ時間がもったいないっぺな。切り替えが大事!ルナが、よく言う言葉だっぺ。」

チヨは笑顔を崩す事なくルナを説得し続けた。
それを、ハナ夫婦は黙って見ている。

すると


「わりー。せっかくの場なのにな。
ありがとな!チヨ。」

色々思う事はあったろう。だが、それを閉じ込めルナはとびっきりの笑顔をチヨに向けた。


「へぇ。いいんじゃない?
誰に似たんだか、すぐに感情的になって喧嘩っ早いルナをこんなに大人しくさせる事ができる人なんて、なかなか居ないよね。
いい子、見つけたね、ルナ。」

美貌男子は、父親の様な立ち位置でそう言っている。

そこで、ゴウランは色々疑問を感じてしまった。


…ん?

あの、あり得ないくらい綺麗な男は、マジでルナ様の父親なのか!?

父親っても、見た目は幼いがルナ様が実年齢は18才…超絶美人男子も見るからに高校生くらい。同じくらいの年齢で親子っておかしくないか?

…あっ!でも、国によって老いるスピードや寿命も全然違うから、あれか?見た目は高校生くらいだけど実年齢は結構年いってる?

…いや…、もしかしたら、あのゴリラ女の連れ子な可能性もデカいな!


それに、ルナ様は王族だよな?

って、事は、両親のうちどっちかが王族って事か!?

え〜〜!!?

いやいや!?ゴリラ女…あんな野生的な王族ってないだろ!歩く時もガニ股だし、喋り方も品がない。父親の方も、見た目がもうヤンキーだしな

マジで、あの二人がルナ様の両親なわけ!?
どうも、信じられねー

あと、あの平凡な田舎少女な

あの子、ルナ様の何なんだ?…いや、何となく分かるけど容姿が不釣り合いで認めたくないっていうか…

そういえば、何故か今日は妙に容姿が不釣り合いなカップルにばっかり遭遇するなぁ


と、ゴウランは考えていた。

ルナが男だって知ってるゴウランだからそう思う事ができるが、周りの大半はルナとチヨの二人を友達か血の繋がらない姉妹だと思っている事だろう。


「しっかしな!ルナは18才だろ。
コイツは17才。父親が息子より年下って、面白いな!」

なんて笑ってるハナに


「それな!ウケるよな、母ちゃん!」

それに便乗してルナも笑っていた。そんな二人の様子に美貌男子は頭を抱えてるらしく


「笑い事じゃないし、“父ちゃん、母ちゃん”ではなく“父上、母上”と呼びなさいと、いつも言ってるだろ?何で、お前は言動がガサツなんだ?…これで、勉学に問題がない事に驚くよ。」

と、米神を押さえて深いため息をついていた。


「あっはは!いいじゃないか。別に、素行も悪くないし勉強だって学年で上位の方なんだろ?
容姿だっておまえに似て、べっぴんさんだしさ。がさつなのは仕方ないさ。何たって、私の血も入ってんだからね!あっはは!」

なんて豪快に笑って、美貌男子の背中を叩くハナに「…い、痛っ!痛い…いや、ハナ!あんたの馬鹿力で叩かれたら本当に痛いからっ!」と、抗議しつつも…何故だろう?美貌男子は、凄く嬉しそうにしている。


…って、え?

二人の血が流れてるって事は、ルナは二人の息子って事になるよな?

けど、息子の方が年上って…んんっ!??

…なんじゃ、そりゃっ!!?

あり得ねーだろ!?無理があるだろ!!?

もう、訳分かんねぇ〜!!


と、異色グループの会話を盗み聞きして混乱していた。


「…いんやぁ〜…、御二方の話を聞いた時には、正直ぶったまげました。未だに信じられない気持ちでいっぱいです。」

チヨが、驚きの表情でハナ夫婦を見ていると


「…まあ、正直な話。私もビックリしたさ。
この事実が分かったのも、つい最近だしな。まさか、ルナの言ってる事が本当だとは思わなかったよ。この事を伝えた時の“アイツ”の顔ったらなかったよ。あっはは!」

と、その時の事を思い出したのだろう。ハナは、愉快そうに笑っている。


何が何だか、よく分からない話だが…

…けど、あの特徴的な訛り…どこかで聞いた事があるような…?と、ゴウランが考えていると、異色グループに近く男の姿が見えた。

と、思ったら


「…おい!…って…あれ?」

そう、異色グループの誰かに話しかける…ソウ王子の姿があった。

そして、自分から声を掛けたにも関わらず、何故か困惑しているようだった。

そんなソウの様子に、美貌男子が


「…何か?」

と、ソウに聞いてきた。
異色グループの会話を聞いていて思ったのだが、この美貌男子は見た目から想像がつかないくらいに言動や立ち振る舞いが気品に溢れていると、ゴウランは感じていた。


「…あ、いや。俺の知ってる人の声が聞こえて…勘違いだったようだ。すまない。」

異色グループのメンバーを見て、自分の勘違いに気づいたらしいソウは直ぐに謝ったが…何だか上から目線な気がしないでもない言葉だ。
まあ、王子様だからしょうがないか、ヨウコウ様もそんな感じだしな。と、ゴウランは思った。


「…しかし。まさか、こんな所で聖騎士団長様に会えるとは思いませんでした。お久しぶりです。」

ソウは、ハナに向かって頭を下げていた。ソウの言葉を聞いて


あーーーーーッッッ!!!!??

どっかで見た事あると思ったら、そうだ!!

あのゴリラ女っ!!

騎士団長様じゃん!!!

見た目こそ、そのまんまなんだけど…
似合わない変な格好してるし、男とイチャついてるからイメージとかけ離れ過ぎてて団長様だと気づかなかった!!?

と、ビックリ仰天した。


「おう、久しぶりだな。旅、頑張れよ。」

「…はい。」

ルナ様がいるのに、そこには触れないんだな。…まあ、気持ちは分かるけど。と、ゴウランは少しだけ遠い目をしながらソウの行動に注目していた。

そこまでは、まだ良かったのだが

ソウがその場を去ろうと歩き始めた時だった。
異色グループ…異色家族は、また楽しそうに談話を始めていてチヨが喋り始めた途端にソウはピクリと反応して足を止めた。

そして、異色家族を振り返り見たその視線はチヨに向けられ驚愕の表情でチヨを見ていた。かと思ったら、ソウは進行方向を変え早足で異色家族の方へと戻ってきた。


「…チヨッ!お前、チヨか?」

そして、チヨの肩を掴みそう聞いてきた。


何だか、波乱の予感がする。

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