イケメン従者とおぶた姫。
「…そうだな。ハナの言ってる事はあながち間違いではないかもしれない。」


いつの間にか立ち上がっていたリュウキは、少し一呼吸置きソファーに座り直した。

「いきなり、どうしたんですか?先程まで、否定的だったというのに。」

怪訝そうにリュウキを見るフウライに


「声じゃよ。お主様の母上様の声がしたんじゃ。」

と、ロゼは言ってきた。ロゼの言葉に、驚きの表情でみんながサクラの頭の上でダル〜ンとしているロゼに注目した。

ロゼは、それに対しお主様のお父上も見ておられる!と、自分の好感度を上げたくてサクラの頭の上でシャキッと姿勢正しく座った。


「…やはり、あの声は幻聴ではなかったのか。ロゼの他に我が妻、アクアの声を聞いた者はいるか?」

と、驚きを隠せないままリュウキは聞いた。
だが、残念ながらアクアの声はリュウキとロゼにしか聞こえなかったらしい。

それを聞き、ロゼは


「うむ。おそらくじゃが、お主様の母上は様々な弊害がある中、お主様の父上に向けて声を掛けたんじゃろ。しかし、色々と邪魔が入り不完全な状態でのテレパシー。
じゃから、とってもとぉ〜っても魔導が得意で強い我には、その声が漏れて聞こえたんじゃろ。その間、ここの時間も止められておったみたいじゃし。お父上様と我以外みな、停止しておった姿は…プス!プススッ!」

と、ロゼは自慢気にドヤ顔していた。
しかも、時間が止められている間のみんなの姿で何か面白い事でもあったのか、馬鹿にしているのか含み笑いしてる姿には、リュウキ以外みんなイラッとした。
そんな自慢気なロゼにサクラはムカつきロゼを掴んで床にぶん投げようとするも、最も簡単にスルリと避けられ挙げ句、また頭の上に乗られてしまった。


…ムカツク…!

本当に、ムカツクッ!!


般若の形相のサクラの頭の上で、シャンと姿勢正しく座り

「そこで、我が感じ取ったのは、生命の源である神聖なる女神の様な存在。そして、“我ら、3人”と、全くもって同じ魔力と細胞の“素”があった。おそらく、女神はお主様の母上。我ら、3人と同じ細胞を持った者が鬼の嫁であろう。
…じゃが…」

と、何か不可解な事があるのか、さっきまで饒舌に喋っていたロゼが深く考え込む様な素振りを見せ、言うか言うまいか悩み口を開いては閉じ、チラリと眠っているショウを見て、また口を開いては閉じを繰り返していた。

そんなロゼに対し


「クソッ!イライラする。言うか言わないか迷うくらいなら、さっさと言え。クソ猫。」

と、ただでさえイライラしているのに、ロゼのハッキリしない様子に更にイライラが加速されたサクラはブチ切れてロゼに強く言った。


「…ピャッ!サクラ…ソチは、ほんに沸点の低い男よのぉ。…まあ、今から言う事は定かではない故、自信を持って言える事ではないが…」

自信無さげで煮えくらないロゼに、サクラの額には青筋がピシリと浮かぶ。


「…定かではない故、間違いであってほしいと…じゃが…」

と、何とも煮えくらない感じで、言いづらそうなロゼに更に更に痺れを切らしたサクラは

「いい加減にしろ!これ以上、俺をイライラさせるな。さっさと言え。」

絶対零度の恐ろしいオーラを纏いロゼを睨みつけてきた。グシャっと眉間に深い皺を作りなら。

生まれたてのロゼにとって、先輩サクラは怒らせると怖い存在である。
例えるなら、先輩や兄弟の先輩、兄や姉に逆らえないような何かがある。実力や力では自分の方が絶対的に強いと分かっているのに滅多な事がない限り逆らえない。

サクラの不機嫌さに、カタカタ震えながら(気持ちだけ)ロゼは仕方なく重い口を開いた。


「おそらくじゃが“我ら、3人”は、鬼の嫁の細胞からできておっての。鬼の嫁の魔導能力や魔力がそれぞれ我らに、分け与えておるようじゃ。
そして、その魔力の源が…お主様にある。」

と、言ったところで


「…それは、ショウの中にも鬼の嫁に関連した何かがある。つまり、ショウも鬼の嫁と血の繋がりがある可能性のあるという事か?」

すぐさま、リュウキはそう聞いてきた。

「…は?つまり、まさかの可能性としてショウ姫とサクラ、ロゼ、ダリアは、兄妹って事?」

シープは、だいたいみんなが思ったであろう。だが、口に出せずいた言葉を思わずポロリと漏らしてしまった。言ってしまってから、ハッと自分の口を押さえたが、もう遅い。都合が悪くなったシープはすぐ俯いてしまった。

それを『大丈夫。遅かれ早かれ、その事については話さなければならなかった。むしろ、早く切り出してもらえて有難い。』と、オブシディアンは優しくシープの背中をポンポン叩いて慰めたし、本当に感謝していたのだ。

気まずく言いづらい話題を、誰かが切り出さなければ話は進まなかった。それを、アクシデントの様なものであれ、シープが口に出してくれたのだから。


「いや、鬼の話が本当だとすれば、鬼の嫁が分裂してできたのがサクラ達。加えて、ショウ姫という可能性も出てきたな。」

シープが口に出してしまったのを皮切りに、フウライが自分が考えを言ってきた。

「しかし、そうなれば矛盾した点も出てきます。鬼の嫁が自分の世界から出られない以上、自分を分裂させて異世界へと行けるのでしょうか?
宇宙の核というからには、それ相応の力を維持し続けなければならない筈。なのに、自分を三体も分裂させるという事は、本体の力も少なからず減った状態で宇宙を維持するのは不可能に思います。
なので、自分を分裂させるという話は無理があるのではないかと。」

そう、オブシディアンが意見すると


「…なるほど。確かに、その可能性は否定できない。」

フウライが、それに深くうなづいた。


「…そうなれば、可能性として考えられるのは、サクラ達は鬼の嫁の魔術によって生み出された子供か。」

リュウキは、深く考えた末にこの考えに至った。


「…しかし、男女で子が成されるもの。一人で、子供を作るなど不可能では?現に、魔導で人を作るなど…まして、自分の細胞を持つ人間なんて出来るわけがないです。」

と、フウライがそんな馬鹿なとばかりに魔道士として意見した。それには、ロゼも大きくうなづいている。


そこに、リュウキは


「…それさえも、できてしまう程の能力や力の持ち主だとしたら?
考えてもみろ。鬼の嫁は、我々のいるこの宇宙を創った創造主だ。
いいか?これは、我々の想像を遥かに超えた者達の話だ。我々を基準に考えてはならない。」

と、もっと視野を広げて考えなければならないと根幹に迫った。


「そもそもの話だ。この話は、本来ならば誰にも漏らしてはならない事だが、あの鬼の登場でそうも言っていられなくなった。

だから、ここだけの話だ。絶対に他には漏らしてはならない。」

そうリュウキが言った時、サクラとロゼはまさかと思い慌て焦った表情でリュウキを見


「…まさかっ!!?お前、コイツらに“あの事”を言うつもりか!?馬鹿な真似はよせっ!!!」

「いかんっ!それは、絶対に漏らしてはならぬ話!!我ら天守とお父上、お母上…そして、創造主しか知らない。絶対秘密厳守の話じゃ!」

と、焦った様子で一斉に抗議した。二人のあまりの必死さに、これは自分達は聞いてはいけない何か。もし、その秘密を知るとなれば自分達はとんでもない事に巻き込まれるのではないかとフウライ達は直感し、背中をザワつかせながら固唾を飲んで三人を見守る。

願わくば、“その秘密”を聞かされない方向に話が進めばいいと。

秘密となれば、知りたくなるのが人間。
だが、同時に知れば恐ろしい事に巻き込まれると分かっているなら話は別だ。知らないに越した事はない。

知らぬが仏。触らぬ神に祟りなし。見猿聞か猿言わ猿。で、ある。


「残念ながら、どうしてそうなってしまったか…もしかしたら、前々世にダリアの愛人の一人がショウに嫉妬して禁断の術を使い“本来ショウが居るべき所ではない、この世界に落とした”のが原因だとは思う。
ショウが居る所には、必ず天守と我ら親もある様になっている。そして、本来の力や能力、知識は失われ、そこに住まう種族になる様だ。」


「それが、どうした?それと、ショウ様の正体を明かすのは別だろ!」

リュウキがそこまで説明した時サクラは、何を言い出すのかと反論してきた。


「もしかしたら、この世界が滅びへと向かっているのは魔獣や妖魔達が自我を失い暴れているのは、精霊王や云々などではなく“そのせい”かもしれないと考えた。」


「“そのせい”とは…?」

と、聞くオブシディアンに


「だから、ショウの正体を明かさなければ話が進まないと言ってる。天守であるお前達の主張は正しい。だが、鬼がまた再来した時、遅かれ早かれショウの事はバレる。
ならば、今言ってしまっても構わないんじゃないか?

そして、そこで俺や天守達の記憶の欠落を補う事もできるだろう。そして、今現在出しゃばっている“精霊王”を名乗る者に対しての違和感の正体、世界の危機を回避できる可能性だってできくるだろう。」


と、リュウキはショウの天守であるサクラとロゼを説得するも、二人は断固として首を縦には振らなかった。

これには、少しリュウキは驚いた事があった。それは、サクラが納得しないのは長い付き合いから分かっていたが問題はロゼである。

ロゼは、ショウの父親である自分に気に入ってもらおうと健気にも自分を良く見せようと必死な姿を見せてくる。リュウキが何か言おうものなら背筋を伸ばし『はい!』と、いう品行良好な優等生ぶりを見せてくるだろう。悪く言えば、なんでも言う事を聞くイエスマンという所だろうか。

だから、サクラは無理でも状況が状況なだけにロゼなら、ショウの正体を明かすのもやも得ないと承諾すると思っていたのだ。

なのにだ。


「もしもじゃ。鬼が、お主様の正体に気付き口に出したとして、何か危害を加える可能性があったとしてもじゃ。それが可能性であり、決定的でない限りはお主様の正体を明かす事はできぬ。お父上様が望んだ事であっても、天守の剣である我は断固として反対じゃ。」

と、言い切ったのである。

ショウの正体については、本人ではなく天守の許しが無ければ他言できないようになっている。

つまり、いくらショウの正体を明かしたくても言葉を出せない、声にさせない。相手に伝えられない何かの術が掛けられているのだ。


と、そこで予想外な事が起きた。


“…エリーの正体だと?なんだ、それは?
アレは何の役にも立たない、ただの木偶の坊だろ?”

いつの間にか、ショウの胸の上に手の平サイズの美しい紫色の光の玉がいた。

声と内容を察するに


「…クソが!」

「…ソチは…!」

二人の天守は、驚きの表情でそれを見た。もちろん、リュウキ達も同様である。


「…な、何と美しい光…まるで、唯一無二の宝石の様だ。こ、これが…!
…いや、だが、しかし!魂は、何処か別の場所に封印されている筈では…?」

と、先祖代々にわたりダリア復活の為、自らの人生をダリアに尽くし犠牲にしてきたシープが驚きの表情でその光り輝く紫を凝視していた。

何故、こんな所にとでも言いたい様な顔である。もちろん、それはサクラ達も同様である。


「…ああ、何となくそんな気がしていたが。
やはり、そうだったか。ビーストキングダムではショウを二度も助けてくれたな。
他にも、ショウの危機には必ず守ってくれた。感謝する。」

リュウキは、紫の光…ダリアに向かいショウの父親として感謝を伝え頭を下げた。
いくら、前々世で自分を殺した相手、前世では娘のアイルを不幸にした最低最悪の娘婿であり腹の底から憎むべき相手であってもだ。

それでも、ショウのピンチには必ず現れ命を救ってくれたのだ。それだけは、感謝してもしきれないのも事実。


「…は?ビーストキングダム?どういう事だ?」

と、初めて聞いた内容に、サクラは素っ頓狂な声を出しリュウキを見た。

そこで初めて、リュウキはビーストキングダムで、ショウが川の氾濫に巻き込まれ溺れ行方不明になり、それが原因で食中毒や感染病にかかり入院していた事。ある宿屋に宿泊した際、何者かに命を狙われ暗殺されかけた事などを話した。

初めて知る酷い内容にサクラとロゼは絶句。
サクラは、「…そ、そんな恐ろしい事にショウ様が…」と、サー…と血の気が引くように青ざめ全身がカタカタと震えた。

そして、眠っているショウを見て、ショックのあまり力の入らない足でヨロヨロとショウに近づくと、力が抜けた様にショウの前にへたり込み布団に顔を押し付け声を押し殺して泣いた。

おそらく、ショウが眠っていなければその場にいなければ、狂ったように泣き叫んでいたであろう事が容易に想像される。

ロゼは自分が居ない間に、二度の壮絶な人生を歩み、今世でもそんな恐ろしい事に巻き込まれていたショウに対し、そんな時に何故、ショウの側に自分が居なかったのか。

これでは、我は全くの役立たずではないか!

何が、天守の剣じゃ!

と、自分を責め心の中で自分の無力さを恥じ、ショウの事を思えば思うほど胸が苦しくて辛くて…悲しくてショウのベットの前で天を仰ぎ放心状態になってしまっている。

あまりのショックに、ロゼは獣化が解け人の姿になってしまっている事にさえ本人は気がついていないだろう。

そこに


「申し訳ございません!ビーストキングダムでショウ様が命の危機にさらられた時、側に居ながらそれを防げなかった自分に全ての非があります。」

と、オブシディアンが床に頭をぶつける勢いで土下座してきた。


「その件については、もう話はついた筈だ。今、思い出しても胸糞なだけだ。お前の口から、その話は聞きたくない。
それ以上、お前はその件に際し何も触れるな。顔にも出すな。」

リュウキは、今にも人を殺しそうな目で冷たくオブシディアンを見下ろし

「…王の仰せのままに。」

と、オブシディアンが答えた所で、またショウの胸の上に浮遊しているダリアと思わしき紫の光に目を向けた。


ショウの危機に役に立たない天守共…

ショウと天守の能力を捨てた筈の憎き存在ダリアが、実質的にショウを守り続けている現状

なんと皮肉で残念極まりない話だ

と、思いたくなる所ではあるが、実際サクラとロゼに非はない

前々世と前世は、ダリアが俺やサクラとロゼを妨害していた事

そして、今世に関してはショウに危機を与えてしまっているのは、サクラのせいなどではなく…俺の責任だ

俺がサクラの意見を無視し、サクラを騙しショウを旅に出してしまったのが大きな要因だ


と、リュウキは複雑な気持ちに苛まれながら、ショウのベットに顔を押し付け声を押し殺し泣いているサクラと、ショウの前に呆然と立ち尽くしているロゼの姿を見て頭を痛くした。


しかしながら、天守二人が揃いも揃ってショウの事になると何故こうもポンコツになってしまうのか…

と、リュウキは呆れた気持ちで、天守二人とダリアに対し深いため息をはいた。

そして


「…ダリア、お前がショウ…その当時の名はエリスか。エリスの剣盾の天守であった時、エリスの司る能力を知らなかったのか?
天守ならば、その天守の能力を与えられた瞬間に知る筈の事だろう?」

リュウキは、ダリアに向かい疑問を投げかけた。

すると


“…………。…俺様は、まだ剣の天守も盾の天守も決まってない時に、その能力の秘宝を持っている試験管長を殺して奪った。”

そう、ダリアは言った。

それには、みんなギョッとしダリアを凝視した。


“天守の試験内容は、俺様が圧倒的だった。誰も彼もが、容姿や能力、力。様々において俺様の足元にも及ばなかった。
なのにだ。最終試験に、コイツが残って…!”

ダリアの悔しそうな声が、部屋に響くが光の玉なので“コイツ”と言われても誰の事を指しているのか分からなかった。


「コイツとは、サクラとロゼの事か?」

と、リュウキが、おそらく名前で言ってもダリアには分からないだろうとあえてサクラとロゼを指差し聞いた。


“…そうか。テメー、ロゼって言うのか?
しかも“正式な剣の天守”になってるとか、信じらんねー!”

そう、ダリアが答えた所で、ダリアの言う“コイツ”の正体は分かったが、そこは“コイツら”ではないのかと、そこにいる誰しもが疑問を感じた。


「…ソチが、“捨てた天守の能力”じゃろ。我が正式に剣の天守となって何が悪い?
そんな下らぬ話よりも、今までのお主様が不憫過ぎて…
そんな時に我はお主様の側にいる事すらできなかったなんて、悔しゅうて悔しゅうて!心が痛うくて仕方ない。
ちと、黙っててくれんか?」

と、ロゼは悔しさを滲ませショウを見つめていた。


“…あ"?おかしいだろ!?あの時、試験管達は俺様とお前には何か問題があって、天守の資格は保留となってた筈だ。
テメーは【運命の女、二人】と、決着がついたとでもいうのか?あんなに愛し合ってた女だった筈だろ?”

そう言ってきたダリアの言葉に衝撃がが走る。


「…天守の資格の保留?
我に愛し合う運命の女子が二人おるじゃと…?」

何より驚きを隠せずいるのがロゼで、信じられないものを見るかの様にダリアを見た。

それは、サクラも同様で信じられないとばかりに驚きの表情でダリアを見てきた。


リュウキは、そこで思い出した。

そういえば、ショウもダリアが言っていた事に近い事を言っていたなと。

【ロゼには、7人の恋で結ばれた運命の糸がある。恋じゃない友情や家族愛にも強く結ばれた運命の人がたくさんいる。
恋で結ばれた運命の人の中で、特にロゼと相思相愛の二人がいて心が強く結ばれている。】

こんな感じの事を言ってはなかっただろうか?

だが、ロゼがショウの天守である以上、愛や恋でないにしろ、何かかしらの運命人か、運命人に近い存在には違いない。

…しかし、ロゼを見る限りでは

ロゼは、ショウの事を恋愛対象として見ているし、そういった意味で猛烈アピールしてる。
隙あらば、そういう意味でショウの頭の天辺から爪の先まで喰らおうとしている獣だ。

報告でしか知らないが、そんなロゼにそんな相手が存在するとは到底思えないが。

それはサクラも同様であったらしく、ロゼに限ってあり得ないだろという雰囲気が伝わってくる。

なにせ、オープンスケベがロゼなら、サクラはむっつりスケベ。

同行を一緒にしているせいか、気が合うのか分からないが、正反対の性格の為か喧嘩ばかりの二人なのに根っこの部分が似ている所がある。

特に、ショウに関しては。

だが…


「…二人だと?俺が聞いたのは、ロゼには7人の運命人に近い恋人候補達がいる。
その内の2人は、運命人だと聞いたが?」

リュウキが、そう言葉に出すと


“……!!?お前、何でそこまで知ってやがんだ?この事は、俺様と試験管達しか知らねー筈だ!”

驚いたダリアに


「…ああ。ショウが言っていた。」

リュウキは、眠っているショウをチラリと見ながらダリアの質問に答えた。


“……は?何で、コレがそんな事知ってんだ?そんなデマ誰が信じるかよ!”

ダリアは、こんな無能の木偶の坊にそんな事が分かる訳がない。そんな嘘をついて、自分を馬鹿にしているのかとリュウキに怒りを覚えたが

そこで、ふと鬼の言葉が脳裏をよぎった。


【天は、天守の不貞や裏切りを見る事ができる。本人が望まなくても、勝手にその場に居るかのように見聞きできてしまう。】

その話を思い出し、ダリアはゾッとし言葉を失ってしまった。

ロゼはロゼで、自分の番はお主様しかおらんのに何故、そんなデタラメな話が出ているのかとはらわたが煮え繰り返る思いで


「我は、お主様一筋じゃ!他の者など目に入らんというに、なんじゃ!その7人とやらは!
しかも、その内2人とは運命人じゃと!!
お主様がおる前で、いい加減な話はせんでくれっ!お主様に勘違いされたら困る!!」

と、プンスコプンスコ怒って地団駄している。


「…残念だが、ロゼ。この話は、ショウ本人の口から聞いた話だ。ショウに何が見え、何を思ったかは分からないが、ダリアの話からも似たような話が出てきている以上、この話は事実に近い何かがあるのかもしれない。」

そう言ってきたリュウキに、ロゼの動きがピタリと止まり


「…お主様が…?お主様が、そう言うたのか?」

信じられない事を聞いたかのようにリュウキを見てきた。

「…ああ。」


「…う、嘘じゃ…嘘じゃぁぁーーーーーッッッ!!!」


と、叫び何処かへ消えてしまった。





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