怪盗ジャック〜月の輝く夜に〜
部屋で動き回っている鶏たちの中で、一羽がジャックの目の前で卵を産んだ。暗闇の中で光り輝くその卵にジャックの喉がゴクリと鳴る。

「あいつ、大人しそうだな。あいつにしよう」

盗んでいく鶏をジャックは品定めし、鶏の中でも比較的体が小さなものを選んだ。しかし、ジャックがその鶏を持ち上げた刹那、鶏が激しく暴れ、鳴き始める。

「ば、馬鹿!!暴れんなって!!」

ジャックは咄嗟に鶏の首を軽く絞め、気絶させた。しかし、遠くから数人の足音が聞こえてくる。

「……ッ!」

今このドアの向こうに出てしまえば、ジャックはきっと捕まってしまう。平民は犯罪を犯せば貴族とは比べものにならないほど厳重に罰せられる。ジャックの体が震えた。

その時、ジャックの手が誰かに掴まれた。ジャックが上を見れば女性にして背の高いドレスを着た夫人がいる。ジャックが声を出そうとすると、「静かに」と夫人はジャックを物陰へと隠した。

「奥様、今こちらから騒ぎが聞こえてきたのですが……」
< 4 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop