怪盗ジャック〜月の輝く夜に〜
それから数日、ジャックは巨人の屋敷から何も盗むことはなかった。あの時の夫人の言葉があったからだ。
しかし、鶏一匹だけでは貧しい人々はまだ救われない。
「今日盗むのはこの屋敷にあるダイヤモンド……」
そのダイヤモンドは手に入れた者を幸運に導くと言われているらしい。ジャックは広々とした美しい豪邸を睨みつけ、警備の目を潜り抜けて屋敷内に侵入した。
今日はこの屋敷ではパーティーなどは開かれていない。警備はパーティーの時より厳しくなっている。ジャックは小さな体を活かし、廊下を走っていた。
「あの部屋か……」
厳重なドアの前に二人の警備員が立っている部屋をジャックは見つめる。今までは警備員が宝を守っていることなどなかった。ジャックはこれまで使ったことがなかった道具を使うことにした。知り合いに作ってもらったものだ。
ジャックは白い小さなボールを警備員たちに向かって転がす。玉は警備員たちの足元で止まり、「何だこれ?」と言いながら警備員は玉を見つめる。