怪盗ジャック〜月の輝く夜に〜
「ハハッ……。これが今の俺?」

鏡に映し出されたのは、男性の返り血を浴びた自分自身だ。薄汚れてしまっていた両手は、もう取り返しのつかないところまで来てしまった。

「兄さん?兄さんどこに行ってーーー」

誰かがまた部屋に入ってくる。ジャックも相手を見上げた。そして互いに言葉を失う。

「あなたは……」

ジャックの前に姿を見せたのは、あの時の夫人だった。夫人は返り血を浴びたジャックと息絶えた男性を見て泣き崩れる。

罪を知らない者は、罪を犯した時に初めてその罪の重さを知ることになるのだ。





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