オフィスとは違う彼の裏の顔
お店を出てから数分、表通りを南へと向かう。
月のない夜でも、街灯が明るく足元を照らしてくれる。
そういえば、私のマンションもこっちの方ね
いつもと違う道のりだから、よく分からなかったけど
「主任は今日楽しかったですか?」
少し前を歩く金木くんは、クルッと振り向き後ろ向きで歩くと。
危ないよ、と声をかけようかと思ったけど、表通りなのに車の往来は珍しく無く、直線であったため何も言わなかった。
「そうね、一日であれだけ話をしたのはいつぶりだったかしら」
月のない空を見上げると、無数の星が綺麗に見える。
「楽しかったなら良かったです。僕も主任の隣に入れて、楽しかったし」
彼の笑顔は太陽のように眩しく感じる
「そんなお世辞は要らないわ」
「本当ですよ」
金木くんは私の目の前で立ち止まる。
「ねぇ主任。朝のこと覚えてますか?」
朝?
「なんのこと?」
「僕のここ、見てたでしょ?嘘つかないでください」
同じように首筋を指差しながら、顔を傾ける。