恋のリードは  彼女から!
温子は金曜の夜

部屋のミラーの前であれこれドタバタやっていた。

手持ちのワードローブをすべてベッドの上に投げ出して

あーでもないこーでもないとコーディネートに忙しかった。

「やれやれ、デートに着ていく服に悩む歳でもないか。」

あきらめて数少ない明るめのカラーブラウスを選んだ。

若草色に近いくすみがかったライトグリーンで

唯一裾周りのレースの縁取りが柔らかい印象になる。

「これしかないわね。あとはオフィス用だし。私ってつくづく女っ気がないわ。」

タイトスカートは年上であることがバレバレだと思いさらにがっかりした。

「そうだ。ママの白いシースルー地のプリーツスカートを借りよう。」

温子よりはエレガントな服を持っている母だ。

バタバタと2階からリビングへ降りた。

「ね、ママ、スカート貸して。」

母親はパジャマ姿でテレビを観ていた。

「はあ?今何時だと思ってるの?」

そう言われて壁の掛け時計を見たら夜中だった。

「ヤバい、お風呂入る。」

明日の朝は絶対に寝坊できないのよ

と温子は慌ててバスルームへ駆け込んだ。

「温子、ママは先に寝るわよ。」

背中に母の声を聞いた。

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